21世紀の資本

制作 : 山形浩生  守岡桜  森本正史 
  • みすず書房
3.97
  • (63)
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  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 1896
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (728ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622078760

作品紹介・あらすじ

「21世紀の資本」はトマス・ピケティが執筆した経済書。
経済書としては異例の売り上げを記録したとしてテレビや雑誌などでも大々的に取り上げられています。日本経済の先行きやアベノミクスの今後と予言する書物として、サラリーマンや主婦、学生などにも広く読まれています。世の先行きへの不安を反映しての人気ということができます。

感想・レビュー・書評

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  • r > g
    資本の収益率 > 経済成長率

    20カ国以上の所得と富の分配をめぐる世界的な動学を研究し、過去15年にわたり30人以上と集めた歴史的データを活用。

    <以下引用>--------------------------

    資本収益率が長期的に成長率を大きく上回っていれば、富の分配で格差が増大するリスクは大いに高まる。

    この根本的な不等式を
               r>g
    と書こう。

    rは資本の平均年間収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの。
    gは、その経済の成長率、つまり所得や産出の年間増加量。    p.28

    <資本主義の第一基本法則>  α=r×β

    資本/所得比率βは、国民所得の中で資本からの所得の占める割合(αで表す)と単純な関係を持っており、以下の式で表される。

    α=r×β

    ここでrは資本収益率だ。  P.56


    <資本主義の第2基本法則>

    長期的には、資本/所得比率βは、貯蓄率s、成長率gと以下の方程式で示される単純明快な関係を持つ。

    β=s/g

    たとえばs=12%、g=2% なら β=s/g=600% となる。    
    p.173

    α=r×βという式を使うと、ある国全体、さらには全世界についてさえも資本の重要性を分析できる。
    また、個別企業の財務も研究できる。

    たとえば、500万ユーロの資本を使い、年に100万ユーロの財を生産し、うち60万ユーロが労働者の賃金、利潤が40万ユーロだとする。

    この会社の資本/所得比率は β=5
    (資本が産出5年分に相当)
    資本所得のシェア αは40% 
    資本収益率 r=8%         p.59


    インフレは事実上、有閑階級に対する税、もっと正確には、投資されていない財産に対する税と言える。 p.470

    だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。 p.473

    いったん通貨が貴金属への兌換性を失うと、中央銀行がお金を作る能力は潜在的に無限になってしまうので、厳格な規制が必要だ。これが中央銀行の独立性に関する論争の核心だし、無数の誤解の源にもなっている。
    p.576

    世界の金融資産の大部分がすでにさまざまなタックス・ヘイブンに隠されていて、世界的な富の地理的分布の分析に限界をもたらしているという点だ。  p.483

    課税における20世紀の大イノベーションは累進所得税の考案と発展だ。
    この制度は、20世紀における格差低減に重要な役割を果たしたが、今では、国際税制競争により深刻に脅かされている。      p.514

    累進課税は、格差削減のかなりリベラルな手法だと言える。自由競争と私有財産は尊重されつつ、私的なインセンティヴはかなり過激にもなりかねない形で改変されるが、それでも常に民主的論争で検討されたルールにしたがって行われるのだ。    p.528

    <以上引用>----------------------------------------

    ↓ ネットで公開されてる。どのピケティ本より参考になった。

    ピケティ『21世紀の資本』
    訳者解説 (v.1.1) 2015.1.23-2.1
    山形浩生
    hiyori13@alum.mit.edu

    ↑ 山形浩生が必要最小限の図式化で明快解説。必見。

    山形は、ピケティはインフレーションに対して、この本の中では賛成とも反対ともとれる書き方をしている、と述べている。
    しかし、オレは、ピケティはインフレに対しては否定的だとしか思えない。

    「だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。」 p.473

    ---------------------------------------------------

    最初、図書館で予約「7人待ち」だった。順番がきて読んでるんだけど、ネットで予約状況を確認すると「116人待ち」になっててビックリ。
    すげー人気だ。

    先に『東洋経済』『エコノミスト』その他の雑誌のピケティ特集が何冊も届き、そちらを先に読む。『21世紀の資本』入門系の本も先に読んで、最後に、この本が届いた。

    オレのイメージでは、ピケティの『21世紀の資本』は膨大なデータを集めて分析した本で、彼は、人口学者エマニュエル・トッドをエコノミストにしたような人だと思っていた。

    ピケティ自身が、雑誌のインタヴューなどで何度も口にしているように、彼はマルクスには何の興味もない。
    少なくとも『21世紀の資本』は『資本論』とは何の関係もない本だと思っていたんだけど、「第Ⅱ部資本/所得比率の動学」で、マルクスに言及していることに、逆に、びっくりした。
    オレもそうだけど、現代人は、いまさらマルクスの話など聞きたいとも思わないし、マルクス経済学は過去の話だと思ってる。

    ピケティは数学の大秀才なんだけど、現在の、数学モデルだけで構築される経済学からはみ出して、政治歴史経済学をやろうとしてる。
    これが正しいことなのか、間違ったことなのか、50年後や100年後に評価するしかない。

    ただ、彼の文章見てると、計量経済学の秀才とはいえ、なんだか経済学者じゃないみたいな気がしてくる。

    アメリカの経済学者が、純粋な科学者であろうとして数学やデータ分析を崇め奉るのに比べ、フランスの経済学者は、教養や哲学を有難がる風潮がある。
    どちらも、偏りすぎると、現実から乖離した架空の経済学になってしまう。

    純粋な経済学にとって、政治学や哲学は、できるだけ介在しないほうが、イデオロギーに左右されない科学的な結論が引き出せる、というのが現代の経済学であるのに対して、ピケティは経済学に自ら政治や歴史を導入しようとしてる。
    これは正しいことなのか?間違ったことなのか?


    私がボストンで教えていたときの夢は、パリの社会科学高等研究所で教えることだった。その教授陣には、リュシアン・フェーヴル、フェルナン・ブローデル、クロード・レヴィ=ストロース、ピエール・ブルデュー、フランソワ・エルティエ、モーリス・ゴドリエをはじめとする導きの光が多数存在していた。
    ・・・・
    私はたぶん、ロバート・ソローやサイモン・クズネッツと比べてすら、こうした学者のほうをもっと崇拝しているのだ。
    」 p.35

    この人の資本論は、格差が広がる21世紀に殺意を募らせている我々にとって、希望となるだろうか?

  • 正直途中の数値を羅列してあるような部分は速読に頼ったところもある。
    予めトマ・ピケティ解説本を数冊読んでいたので理解に役だったが、本書を最初に読んでいたら途中で飽きて飛ばしまくったろうと思う。
    要点は解説本がまとめてくれていることとほとんど同じだったが、具体的な事象については興味深いものも多々あった。
    ただ要点についてはやはり解説本を読んだほうがよくまとめられていていいと思う。
    より深い内容が学びたければ本書の数値を活用し、そして著者がいうように内容が議論の的となるように自分なりに調べていけばいい。
    ピケティの要点が知りたかったのであれば解説本を、資本主義について掘り下げたいのであれば本書を読んで色々なデータを参考にご自身の主張をされてみるのがいいと思います。
    このような学術書にもなりそうな良書を一般人が評価するのが非常に憚られるくらいの力作なのですが、経済の素人の読みやすさという意味では正直量の問題もあり星3が妥当かなと思います。
    格差の問題を世界中に広めたという意味では星なんかでは評価しきれない位の評価を得るべきでしょう。とある学者は経済学賞を受賞スべきという人もいます。

  • 本屋さんに行くと今でも何冊もの解説本が置かれているのが目につきますが、とうとう原作(翻訳本ですが)を読みました。その本の名前は、ピケティが書いた「21世紀の資本です。

    今まで何冊かの解説本を読んできたお蔭もあり、何を言いたい本なのかが分かっていたため、最後まで読み通すことができましたが、特に図表の少なくなる、第三部以降は読んでいて挫けそうになりました、解説本を書いた方々の努力に頭が下がりました。

    前半部分では、膨大なデータを処理してやっと完成した興味ある図表が出てきます。1700年以降の合計300年間以上のデータをグラフ化したものには中々出会うことができません。とても貴重な経験をすることができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基礎となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになる(p2、29)

    ・第一の結論:1910-50年にかけて殆どの先進国で生じた格差の低減は、何よりも戦争の結果であり、戦争のショックに対応するため政府が採用した結果である、課税と金融に関する部分が大きい(p23)

    ・第二の結論:富の分配の力学を見ると、収斂と拡大を交互に進めるような強力なメカニズムがわかる(p23)

    ・根本的な不等式(r>g、r;資本平均年間収益率で、利潤・配当・利子・賃料などの資本からの収入を資本総価値で割ったもの、g:経済成長率、所得・産出の年間増加率)(p28)

    ・富裕国で資本の重要性が高まったのは、人口増加と生産性成長がどちらも減速したせいが大きい。この変化を理解するには、資本と労働の分配率だけでなく、資本/所得比率(資本の総ストックと年間の所得フロー比率)の変化も分析することである(p45)

    ・国民所得を計算するには、GDPからその生産を可能にした資本の減価償却分を差し引く必要あり、これが「国内純生産」となる、GDPの9割程度(p46)

    ・国民所得=国内算出+外国からの純収入=資本所得+
    労働所得、資本から人的資本を除外するのは、人的資本は他人が所有したり市場取引できないものだから(p49)

    ・所得はフロー、ある期間(通常1年)の間に生産され分配された財の量、資本はストック、ある時点で所有されている富の総額(総資産)、資本はおおむね、住宅資本と企業・政府が使う物的資本に分かれる(p54)

    ・上場企業の株式市場における総市場価値は、通常はその企業の年間利潤12-15年分、つまり年間投資収益率:6-8%(税弾き前)である。500万ユーロの資本を使い、年間100万ユーロの財を生産、60万を労働者賃金、利潤を40万とする。この会社の資本/所得比率β=5(資本が産出5年分)、資本所得のシェア:αは40%、資本収益率r=8%となる、α=r×β(p59)

    ・欧米は産業革命で実現したリードにより、世界に占める人口比率の2-3倍の世界算出シェアを実現できた。これは一人当たりの算出が世界平均より2-3倍高かったからで、こんな時代は終わりつつある(p64)

    ・資本減価償却を1割として考えると、世界では1人当たり平均月額所得@2012は760ユーロとなる、日本は2250ユーロ、EUは2040、米国は3050、中国は520である。(p66)

    ・為替レートでなく購買力平価を使うのは、各国の市民は通常は所得を外国ではなく自国で使うから(p69)

    ・外国からの純所得は日本とドイツでGDPの2-3%であるが、数十年に渡り蓄積してきたので、それに対する今日の収益は大きい(p73)

    ・貧困国が富裕国に追いつくのは、同水準の技術ノウハウや技能・教育を実現するからであって、富裕国の持ち物になることで追いつくことではない。これは正当性のある効率よい政府が実現できるかに密接に関連している(p76)

    ・1700-2012年で世界の算出は年率平均1.6%で成長したが、そのうち0.8%は人口増加分、残りが一人当たり産出の増加からきている、1700年までは成長率0.1%(ローマ帝国時代も2億人はいたと推定)、1820年までは0.5%、1913年までは1.5%、それ以降が3.0%(p78、82)

    ・日本が過去30年で見せた一人当たり産出成長率は1-1.5%だが、人々の生活は大きく変化した。一人当たり産出が30年で35-50%増加するとは、今日生産されているもののかなりの部分が30年前には存在せず、仕事の4分の1から3分の1は当時は存在しなかった。つまり、今日の社会は、18世紀のような成長がゼロ、0.1%の社会とはかなり異なる(p101)

    ・年率3-4%以上の生長が起こった歴史的な事例は、他の国に追いつこうとしていた国で起こったもののみ、追いついた時点で終わるプロセス(p98)

    ・インフレ(あらゆる価格の一般的増加)は富の分配力学に根本的な役割を果たす、公的負債を富裕国が始末できたのはインフレのおかげ(p109)

    ・イギリス、フランスは第一次世界大戦直前には、外国に所有していた純資産は、国民所得1年分とかなり大きかったが、1915年に破たんした(p126)

    ・イギリスとフランスは1880-1914年に構造的な貿易赤字(1-2%)を出せた、外国資産による総収益は5%もあり全く問題なかった。貿易黒字を出していても利益は得られない、モノを所有する利点は、労働なしに消費を続けられること。これが植民地時代に行われていた(p127)

    ・19世紀に政府に貸し付けた人への報酬が非常に多かった、1815-1914年までインフレゼロに対して、4-5%の国債利率で、経済成長率よりもはるかに高い。とても良い投資である(p137)

    ・米国への奴隷輸入は1801年に止まったが奴隷の激増は止められなかった、自然増は奴隷購入よりも低コスト。1770年代に40万人だったが、1800年には100万人(総人口500万人)。1860年には400万人(総人口3000万人)。奴隷制廃止は南北戦争後の1865年。北部と西部では急速な人口成長があったが、南部では奴隷比率はずっと40%(白人600、奴隷400@1860)(p166)

    ・米国南部では、奴隷の総価値は国民所得の2.5-3年分、農地と合わせると4年分以上、奴隷のいなかった北部の富は少なかった、農地は1.5年分程度(p169)

    ・戦前の米国では、奴隷の市場価値は一般的に、自由労働者の賃金10-12年分に相当した。1860年、男性の奴隷平均価格は2000ドル、自由農園労働者の平均賃金は200ドル。(p171)

    ・資本/所得比率β=s/g、s:貯蓄率、s:成長率、毎年国民所得の12%を蓄え、国民所得の成長率が年2%の国では、長期的には資本/所得比率は600%になる。この国は、国民所得の6年分に相当する資本を蓄積することになる(p173)

    ・民間財産は、国民所得の4-7年分となっている、この構造的変化は、1)経済成長の鈍化(人口増加の低迷)、2)民営化と公共財産の民間移転、3)不動産と株式市場の価格に影響した長期的なキャッチアップ現象、で説明できる(p181)

    ・国民所得や国富については、最貧50%、中間層40%、最富裕10%に分割するべき(p279)

    ・非常に高い所得と給与の増加が何よりも「スーパー経営者」の出現によるもの(p313)

    ・長い目で見て賃金を上げて賃金格差を減らす最善の方法は、教育と技能への投資である(p325)

    ・人口の0.1%が国民所得の2%を占めるという事は、このグループの平均的個人が国平均の20倍の高所得を得ている事になる(p333)

    ・資本収益率が常に生産(所得)成長率の少なくとも10-20倍大きかったのは避けられない歴史的事実。ただし、1950-2012年までは、例外的にその差が1%程度(5%強と4%弱)にまで縮まった(p369)

    ・課税後の年間収益率と成長率の比較では、1913-2012年までは例外的に、成長率の方が高かった。富の集中が減ったのは、1914-1945年までの偶発的出来事(戦争)と、資本及び資本から所得への課税といった個別制度がもたらした(p371、391、412)

    ・どんな貯蓄行動の構造においても、資本収益率が上がり成長率が下がると、累積プロセスが速くなり不平等になる(p415、451)

    ・インフレの主な影響は、資本の平均収益を減らすことではなく、それを再分配すること。それは、裕福ではない人に不利益、裕福な人に利益になる(p472)

    ・果てしない格差スパイラルを避けて、蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な手法は、資本に対する世界的な累進課税である(p489)

    ・2008年の危機が大恐慌ほど深刻な崩壊を引き起こさなかったのは、富裕国の政府・中央銀行が、流動性を作り出すことに合意したから。これは大恐慌の「清算主義」とはかけ離れていた(p491)

    ・国民所得の4分の1から3分の1を消費していて、これらはほぼ二等分できる。片方は保険医療と教育、残りは代替所得(年金・失業保険)と、移転支払い(家族休符、公的扶助)にいく(p496)

    ・2010年に米国で可決された外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)で、2015年に順次導入される予定。あらゆる外国銀行は、米国財務省に対して、米国納税者の外国保有銀行口座、投資について報告する必要がある(p547)

    ・欧州ほど巨大な公的債務を大幅に減らす手法として、1)資本税、2)インフレ、3)緊縮財政であり、この組み合わせもできる。民間資本に対する課税が最も公正で効率的、それがだめならインフレ、最悪なのは緊縮財政を長引かすこと(p568)

    2016年2月26日作成

  • 簡潔かつ論理的に書かれているので面白く、一気に読み終えてしまった。

    資本を持つ者と持たない者の格差が広がっていくこと、そして格差是正への提案を、長期的データを基に論理的に展開する。

    こうしたテーマに興味がなくても、データを論理的に読み解くトレーニングとしてうってつけの一冊だと思う。

    この本を読んでから、成長率2パーセントとかいうと、ものすごく大きな努力なんだと感じるようになりましたw

    手元に置きたいが、値段が高いのがネック。

  • 話題の本、二ヶ月かけてようやく読み終えた。
    賛否両論、様々な意見が出ている本だが、読了後の感想としては、よくもこれだけ歴史上の数値を俯瞰して、大きな動きをまとめてみたなという感心が一番。
    日本には当てはまらないと言う人もいたが、基本的に著者の視線は欧州中心なのだから仕方ないでしょう。
    何はともあれ、経済学素人として幾つもの新たな気付きを得られたことが収穫だと感じた。

    ・当たり前のことだが、経済成長は多くが人口増加によるところが多く、純粋な経済成長が起きていた時期は歴史的にも各国でかなり限られているということ。
    ・日本でも戦後の高度成長のような時期は他に無く、そもそもがGDPの成長に多くを期待してはいけなく、せいぜい1-2%程度と考えておくこと。
    しかしその小さな成長率さえ、長い時間で捉えれば大きな成長に繋がる。
    ・歴史の中では、両大戦を挟む限られた期間以外の殆どで、その成長率を超える資本成長率を記録している。
    ・企業の成長に伴う労働所得の成長に留まらず、資本収益率の成長に大きくフォーカスが当たるようになったことは、本書の大きな意義。

    などなどか。

    最近の自分テーマでもある、曲がり角を迎えている資本主義と対策としての本の一環とも捉えることができ、その視点からも興味深い内容ではあった。
    最後に主張している解決策、即ち累進資本課税策は、本書の筋からは自然に合理的に導き出される解だと納得感はある。
    しかし、国際的な強調無くしては累進資本課税が成り立たないことを述べており、近々の現実性が感じられないことは本書も例外ではなく、他の本と同様だった。
    残念ではあるが、それだけ今の資本主義社会の課題解決は難しいと改めて納得した次第である。

    一つだけ分かり難かったことを上げると、頻繁に17-9世紀の欧州文学を題材にするケースが多いこと。
    ディケンズくらいなら少しは齧っているが、当時の資本優先社会を描き出す証拠に、小説中の暮らしぶりをこうもあげられては付いていけない。
    ここらも、やはり欧州人が書いた本というところなのだろう。

  • 600ページと大部だが読みやすく、わかりやすい。数式が2、3出てくるが具体例をあげて解説してあり、ゆっくり考えれば頭に入る。

    経済学というより社会学、政治学のテーマ「社会はどうあるのがよいか」について考察した内容である。

    格差について論じているが、イデオロギー的な結論ありきの展開ではなく、まず富の偏在について現状、時系列の推移、国別の比較、十分位・百分位・千分位...のデータを提示し、経済成長率(生産性向上+人口増加)のパラメータを調整したシミュレーションによる将来予測を語る。その上で、考えられる案をいくつか提示し、現実解を導く合意形成プロセスを語る...よくできた会社のプレゼン資料のようだ。

    著者の母国が右に左に揺れたフランス革命を経験したからなのか、主張は歴史的・長期的視点に立脚した経験主義にもとづいており、とても共感できる。

    提案されている資本税について「実現性が低い」との批判があるが、著者が真に提案しているのは解決案そのものではなく、解決案を民主主義的プロセスにもとづいて検討するための情報の共有、金融情報の「透明化」であり、それもいきなり世界的な情報データベースを構築するのではなく、「できるところから」始めようとしている。

    経済成長の鈍化、資本それ自体の自己増殖性、暴力的な金融グローバリズムの発展、新自由主義の隆盛等、将来について楽観できる要素はほとんどない。過去を振り返ると、格差を解消したのは二つの世界大戦だったという現実がある。
    それでも著者は民主主義への信頼を失っていない。何ももたない下位50%の人々に教育と福祉を提供することで、庇護ではなく社会に参加する道を閉ざさない方法を模索している。
    良書だと思う。

  • やっと読み終えました。とはいえ、内容はそんなに難しくないので、ベストセラーになったのでしょう。持つものはどんどん豊かになり、持たざるものはどんどん貧乏になるという、シンプルな原理を調査範囲をできるだけ多くの時代範囲とエリア範囲で取得し、分析することによって証明した画期的な著作。これに対してどうするか?この原理に対し、著者同様ネガティブな評価をする人たちにとっての解決策というのも、一応提示されてはいるが、現実性の観点から見るとハードルは高そうだ。

  • 注目を集めているトマ・ピケティ教授の経済学の本。ようやく読了。
    本文だけで約600ページあるのでかなり分厚い。
    前半は歴史経済学とでも言うべき内容で、約200年間にわたるフランスの税務データを中心にイギリス、ドイツなどのヨーロッパ諸国、アメリカ、日本などの先進国のデータを分析してr>g、つまり資本収益率は経済成長率を上回るということを示している。
    ただしこれは一般的な経済法則ではなく、歴史的事実だと言うことである。
    これが意味するところは金持ち(正確には資本を持っている者)にどんどん富が集中し貧富の格差が拡大すると言うことである。
    ところが、第1次、第2次大戦で大きく経済的な打撃があり資本収益率は低下し、復興のための経済成長で富の再配分が行われた。このため、戦後の一時期を見ての経済分析・経済理論は長期にわたっての視点には耐えないと言うことである。
    従って、ピケティ教授は15年かけて膨大な財務データを分析し議論している。
    経済学の常識があまりないこともあり所々よくわからないところもあったが概要は理解できる。
    テレビ番組「そこまで言って委員会」で、この本がブームになっていることで取り上げられ、金美麗さんが「(金持ちにどんどん金が集まることは)そんなこと昔からわかっているわよ!」といっていたが、ピケティ教授がデータを示して具体的に議論していることの意味は非常に大きいといえる。
    後半は穏やかな論調ではあるが言ってみれば「金持は民主主義の敵だ。金持ちの資本、不労所得に課税しろ。」と言っているように思える。
    また、労働所得についてもビル・ゲイツについて、彼がどうやって巨額な富を築いたのかは知らないがと断りつつ、パソコンにマウスをつけただけでどう考えても使い切れないほどの巨額の富を持つことについて疑問を呈している。
    結論としては課税による富の再配分機能が社会国家にとって必要であることを訴えているが、グローバル化した現代にとっていくつもの問題がある。それでも、累進課税は実施する必要があるだろう。
    高校の時に社会正義の面から言っても相続税は100%にするべきだと議論していたことを思い出す。
    分厚いだけに取り上げている内容は多く、面白く勉強になる。

  • 世界的に話題になっている本だが、前評判をあれこれ聞いているよりも、実際に読んでみる方がずっといい。容認し得る範囲を超える格差は民主主義の根本を破壊するという、ごく真っ当な問題意識に沿って、きわめて平明かつ説得的な議論を展開している。論旨の流れは明快で分厚さは気にならない。翻訳も読みやすく、これで6000円なら安いくらいだ。
    グローバルな累進資本課税を提唱する著者に対し、過激派だ夢想主義者だなどと批判する向きは多いが、ピケティの最大の功績は、経済の社会的側面を見失った主流のミクロ経済理論に対し、格差を正面からとりあげることによって、政治学や歴史学など他の社会科学と密接な関係にある公共哲学として、経済学をアダム・スミス以来の本道に押し戻したことにあるといえるだろう。公共哲学としての研究のアプローチはその手法や語り口にもはっきりと現れており、国際的な共同データを蓄積したり、専門注解をサイトに示すなど、たいへん刺激的だ。
    本書の議論の中核は、r>gの数式であらわされる資本収益率の長期的増大傾向にあるが、この不等式が資本主義のロジックの内部から理論的に導き出されたものではなく、歴史的データから経験的に導き出されたというのが重要なポイントである。経済学者による批判はこの点に向けられることが多いようだが、私は、これは彼の議論の弱みというより強みであると思う。結局のところ、われわれが分析する対象は歴史的システムとしての資本主義なのであるから(この前提自体を受け入れない学派もあるが)、経験にあわない理論こそが捨て去られるべきであって、理論にあわない経験が否定されるべきではないのだ。
    格差を絶対に政治問題にさせたくない人々のヒステリックな非難とは裏腹に、ピケティは少しもラディカルな理論を弄んだりはしていない。彼は成長も格差も否定しない。むしろオーソドクスな新古典派の理論から出発しながら、ラディカルなマルクス主義者たちよりもずっと明快に格差拡大の傾向を論証してみせたことの意義は強調していい。成長を言いわけに、「公平」を含むさまざまな社会的価値を犠牲にするような新自由主義は、もはや保守的な立場からさえ決定的に時代遅れになりつつあることを理解すべきだ。この意味で「日本はアメリカほど格差は大きくないのでピケティの批判はあたらない」といった反論は、議論にもならないレベルだ。アメリカの格差はこの数十年の政策の結果であり、日本はアメリカに倣う政策を急速に進めているのだから。
    本書が押し出しているような格差の問題が、これからの経済政策に関する議論のベースラインになっていくことを期待したいけれど、やはり本書の議論の立て方は、EUのような共通の社会的価値を基礎にもつ社会を背景にしたものだという感じも受ける。日本や中国などでこのような公共哲学がどれくらい受け入れられるのか、期待しつつも気になるところ。

  • 高成長なら格差は縮小、低成長のが格差は拡大(アベノミクスは成功しても低成長の範疇)。トリクルダウンはない(あったとしても微々たるもの)。経済成長と格差の関係についての現状では決定打なのだろう。あれだけの長期データについてどういった反論が出てくるか。議論が発展したら面白い。

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プロフィール

1971年5月7日、フランスのクリシー生まれ。パリ経済学校経済学教授。社会科学高等研究院経済学教授。多数の論文をQuarterly Journal of Economics, the Journal of Political Economy, the American Economic Review, the Review of Economic Studiesほかに発表、また多くの書籍を刊行している。経済成長と、所得および富の分配についての、重要な歴史的・理論的研究を行ってきた。特に、国民所得に占める所得上位層の割合の長期的推移に関する研究を先導している。これは現在、世界最高所得データベース(World Top Incomes Database)で入手可能。(以上、著者のホームページより)

「2018年 『世界不平等レポート 2018』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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