21世紀の資本

  • みすず書房 (2014年12月5日発売)
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  • 本 ・本 (728ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622078760

感想・レビュー・書評

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  • 持てる者と持たざる者が延々と続いてきた歴史と、これからも現代の低成長時代が続く限り、格差社会はどんどん拡大されるんだと思うと虚しさを感じる一方で、そんなに人類が好き放題に地球や自然は放って置かないんじゃないかと思う。

  • 19世紀から20世紀にかけての世界のお金の流れを、今までにない規模でのデータから集約、分析し、資本主義のなかで拡大する格差に歯止めが必要であると訴える書。

    ふとしたきっかけから手にした、ピケティ『21世紀の資本』。
    本文、およそ600ページ。
    経済の話、苦手だし……、読んでもわからないかもしれないし……。
    読まない理由はいくつもあったけれど、2010年代を代表するベストセラー、せっかくならどんな本か知りたい!と1ページ目から体当たりしていくことにしました。

    さいしょは「資本」とか「所得」の用語が出てくるたびに、意味が頭に定着していないから、いちいち立ち止まっていました。
    ノートにメモをとって、付箋をはって見返して。
    くりかえしていくごとに、少しずつ定着して、第2部あたりからは、わからないなりにもなんとなく本のリズムにのって目を動かせるように。
    基本的に、集約したデータの結果をグラフで示して、その内容を解説していく形式なので、経済に詳しくなくても案外(?)読めるな、というのが途中からの感想。

    けっきょく、議論の詳細や深みを追うことはできなかったけれど、世界を流れているお金の量や、階層ごとの格差の規模感は、なんとなく肌で感じることができました。
    とくに、上位1%の人々が所持している資産って、莫大だなあ。
    これだけ資産があったら、好きな本を値段を気にせずいくらでも買えるかしら。
    本書(5500円+税)をネットで注文したとき、クリックする手がふるえた本読みとしては、うらやましいかぎりです。

    「あらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思うのだ。お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなど、まずあり得ないのだ。」

    最後を締めくくるこの言葉が身に沁みる。
    とりあえず、私は経済のもう少し基礎的な部分を学べる本をまた探して読んでみよう。

  • 『21世紀の資本』。
    フランスの経済学者であるトマ・ピケティの著書で、2013年にフランス語で刊行され、その後各国で翻訳本が刊行されたそうである。
    経済本にしては珍しく、ベストセラーになったようである。
    が、私は、今日、知ったばかり。

    何やら、資本を持つ者と持たない者の格差が広がっていくこと、そして格差是正への提案を、長期的データを基に論理的に展開しているようだ。

    やはり、世の中の格差を実感している方が多いから、読まれたのかな。

  • 分厚いし難しい。
    r>g
    資本収益率は経済成長率を上回る。
    投資の重要性を再認識した。

    貧富の格差を是正するための方法が詳らかに書かれていたのが印象的。
    累進資本課税というのが出てきたが、現在の日本で施行されている累進課税ではだめなのか疑問。

  • r > g
    資本の収益率 > 経済成長率

    20カ国以上の所得と富の分配をめぐる世界的な動学を研究し、過去15年にわたり30人以上と集めた歴史的データを活用。

    <以下引用>--------------------------

    資本収益率が長期的に成長率を大きく上回っていれば、富の分配で格差が増大するリスクは大いに高まる。

    この根本的な不等式を
               r>g
    と書こう。

    rは資本の平均年間収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの。
    gは、その経済の成長率、つまり所得や産出の年間増加量。    p.28

    <資本主義の第一基本法則>  α=r×β

    資本/所得比率βは、国民所得の中で資本からの所得の占める割合(αで表す)と単純な関係を持っており、以下の式で表される。

    α=r×β

    ここでrは資本収益率だ。  P.56


    <資本主義の第2基本法則>

    長期的には、資本/所得比率βは、貯蓄率s、成長率gと以下の方程式で示される単純明快な関係を持つ。

    β=s/g

    たとえばs=12%、g=2% なら β=s/g=600% となる。    
    p.173

    α=r×βという式を使うと、ある国全体、さらには全世界についてさえも資本の重要性を分析できる。
    また、個別企業の財務も研究できる。

    たとえば、500万ユーロの資本を使い、年に100万ユーロの財を生産し、うち60万ユーロが労働者の賃金、利潤が40万ユーロだとする。

    この会社の資本/所得比率は β=5
    (資本が産出5年分に相当)
    資本所得のシェア αは40% 
    資本収益率 r=8%         p.59


    インフレは事実上、有閑階級に対する税、もっと正確には、投資されていない財産に対する税と言える。 p.470

    だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。 p.473

    いったん通貨が貴金属への兌換性を失うと、中央銀行がお金を作る能力は潜在的に無限になってしまうので、厳格な規制が必要だ。これが中央銀行の独立性に関する論争の核心だし、無数の誤解の源にもなっている。
    p.576

    世界の金融資産の大部分がすでにさまざまなタックス・ヘイブンに隠されていて、世界的な富の地理的分布の分析に限界をもたらしているという点だ。  p.483

    課税における20世紀の大イノベーションは累進所得税の考案と発展だ。
    この制度は、20世紀における格差低減に重要な役割を果たしたが、今では、国際税制競争により深刻に脅かされている。      p.514

    累進課税は、格差削減のかなりリベラルな手法だと言える。自由競争と私有財産は尊重されつつ、私的なインセンティヴはかなり過激にもなりかねない形で改変されるが、それでも常に民主的論争で検討されたルールにしたがって行われるのだ。    p.528

    <以上引用>----------------------------------------

    ↓ ネットで公開されてる。どのピケティ本より参考になった。

    ピケティ『21世紀の資本』
    訳者解説 (v.1.1) 2015.1.23-2.1
    山形浩生
    hiyori13@alum.mit.edu

    ↑ 山形浩生が必要最小限の図式化で明快解説。必見。

    山形は、ピケティはインフレーションに対して、この本の中では賛成とも反対ともとれる書き方をしている、と述べている。
    しかし、オレは、ピケティはインフレに対しては否定的だとしか思えない。

    「だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。」 p.473

    ---------------------------------------------------

    最初、図書館で予約「7人待ち」だった。順番がきて今、読んでるんだけど、ネットで予約状況を確認すると「116人待ち」になっててビックリ。
    すげー人気だ。

    先に『東洋経済』『エコノミスト』その他の雑誌のピケティ特集が何冊も届き、そちらを先に読んだ。『21世紀の資本』入門系の本も、アレコレ先に読んで、最後に、この本が届いた。

    オレのイメージでは、ピケティの『21世紀の資本』は膨大なデータを集めて分析した本で、彼は、人口学者エマニュエル・トッドをエコノミストにしたような人だと思っていた。

    ピケティ自身が、雑誌のインタヴューなどで何度も口にしているように、彼はマルクスには何の興味もない。
    少なくとも『21世紀の資本』は『資本論』とは何の関係もない本だと思っていたんだけど、「第Ⅱ部資本/所得比率の動学」で、マルクスに言及していることに、逆に、びっくりした。
    オレもそうだけど、現代人は、いまさらマルクスの話など聞きたいとも思わないし、マルクス経済学は過去の話だと思ってる。

    ピケティは数学の大秀才なんだけど、現在の、数学モデルだけで構築される経済学からはみ出して、政治歴史経済学をやろうとしてる。
    これが正しいことなのか、間違ったことなのか、50年後や100年後に評価するしかない。

    ただ、彼の文章見てると、計量経済学の秀才とはいえ、なんだか経済学者じゃないみたいな気がしてくる。

    アメリカの経済学者が、純粋な科学者であろうとして、数学やデータ分析を崇め奉るのに比べ、フランスの経済学者は、教養や哲学を有難がる風潮がある。
    どちらも、偏りすぎると、現実から乖離した架空の経済学になってしまう。

    純粋な経済学にとって、政治学や哲学は、できるだけ介在しないほうが、イデオロギーに左右されない科学的な結論が引き出せる、というのが現代の経済学であるのに対して、ピケティは経済学に自ら政治や歴史を導入しようとしてる。
    これは正しいことなのか?間違ったことなのか?

    「私がボストンで教えていたときの夢は、パリの社会科学高等研究所で教えることだった。その教授陣には、リュシアン・フェーヴル、フェルナン・ブローデル、クロード・レヴィ=ストロース、ピエール・ブルデュー、フランソワ・エルティエ、モーリス・ゴドリエをはじめとする導きの光が多数存在していた。
    ・・・・
    私はたぶん、ロバート・ソローやサイモン・クズネッツと比べてすら、こうした学者のほうをもっと崇拝しているのだ。
    」 p.35

    この人の資本論は、格差が広がる21世紀に殺意を募らせる我々にとって、希望となるだろうか?

  • トマ・ピケティ(1971年~)は、フランスの経済学者。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞を受賞。パリ経済学院設立の中心人物、教授。社会科学高等研究院の研究部門代表者。
    本書は、2013年にフランス語で発表され、2014年4月に英語版が発売されるやベストセラーとなり、同年12月には日本語版が出版されブームとなった。30ヶ国以上で翻訳され、経済学書では異例の300万部以上を売り上げている。また、2019年には、ピケティ本人が出演するドキュメンタリー映画が公開された。
    私は従前より、世界中で格差を広げる資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、広井良典(社会学者)らの本を読んできたが、近年の斎藤幸平のベストセラー『人新世の「資本論」』を読むに至り、あまりの大部であるがために敬遠していた本書を手に取ってみた。実際には、予めネットで本書のポイントを押さえ、その部分を中心に飛ばし読みをしたが、著者の言いたいことは極めて明確なので十分だったように思う。
    論旨は概ね以下である。
    ◆長期的なデータによると、資本収益率(r)は概ね4~5%、先進国の国民所得の成長率(g)は1.5%程度であり、r>gである。これは、資本(不動産や金融商品)の増加率は所得の増加率を上回っている、即ち、資本で稼ぐ人と所得で稼ぐ人の格差は広がっていることを示し、これが資本主義の根本的矛盾である。また、<資本主義の第1基本法則>資本分配率(α)=r×資本ストック(β)なので、先進国のβを概ね国民所得の6倍程度であり、r=5%とすると、α=30%となり、国民所得の分配は、労働による所得:資本による所得=70%:30%となる。
    ◆また、<資本主義の第2基本法則>β=貯蓄率(s)/gなので、国民所得の成長率(g)が低くなるほど資本ストック(β)は増え、資本分配率が上がり、格差が拡大する。
    ◆格差の拡大という矛盾を解消するためには、(ユートピア的提案ではあるが)保有資産の透明化や、巨額の資産への世界共通の累進資本課税が必要である。

    本書の特徴は、著者が15年をかけて収集した20ヶ国/300年分のビッグデータ(このデータだけでノーベル賞の価値があるという研究者すらいる)に基づく分析にある。理論的ではないとの批判もあるようだが、著者は、経済学者の多くが数理的な理論の研究に偏りがちであることに疑問を呈し、「(歴史的に)実際の数値はどうだったのか」を知ることに立ち戻るべきと語っており、まさにその点が本書の狙いだったのだ。
    また、『資本論』を想起させる題名にもかかわらず、マルクスの主張とは大きく異なる(資本主義には不平等が内在しているという点のみ共通している)ものであるし、資本主義システム自体を否定してもいない。しかし、格差の拡大という資本主義の抱える最大の問題のひとつをデータで明らかにしており、ジョセフ・スティグリッツ、ポール・クルーグマンらニューケインジアン左派の経済学者の主張に近く(実際に本書は彼らからも称賛されている)、延いては『人新世の「資本論」』とも親和性があると言えるだろう。
    資本主義の矛盾・限界と、修正のアプローチの一つとして、概要だけでも知っておく意味はある。

  • 5年以上、積読だった本。きっと一人じゃ読まないままだ、と思い友人を巻き込みたった二人の読書会を企てました。二週間に一部ずつ読んで、週末2時間zoomで語り合うという方式です。全4部構成を4回で読み終わりました。ものすごい達成感!ノートを取りながら読書したの学生以来か。夜、夕食後に自宅で集えるzoomという仕組みに感謝。いやいやこの試みに付き合ってくれる友人の存在することが最大の幸せ。大昔、パルコのコピーに「本読む馬鹿が、私は好きよ。」というのがありましたが、本を読む馬鹿仲間は宝物です。この読書会と同時に読んでいた「人新世の資本論」でピケティの新刊「資本とイデオロギー」が出ることを知り、次のテキストはそれにするか?その前に、もう一発、別の読むか?そんなやりとりも楽しいです。

  • 8年ぶり再読。2024年現在の状況は日経平均最高値更新、なかなか増えない名目賃金とまさにr>gの世界であり、ますます本書の指摘通りとなっている。

  • 時間が有り余っている学生時代に読めておけて本当に良かった。

    r > g の原則を知らずに社会人として社会に放り込まれていた可能性を考えると怖くなる。
    中々裕福になれないやるせなさを感じるも原因は分からない。なぜなら資産の大半は上位層がガッツリ確保しており、それを使って芋ずる式に不労所得を蓄えているのだから。

    歴史から得られる原則と、信用性の高い数字と向き合う大切さを学べた。
    様々な事象や通説が重なりあって経済は動いている。

    あとは読解力がかなり増した気がする。本書を読む前後では、他の本を読む時の理解力が断然に違う。

    本書に出会えたことに感謝を。

  • 本屋さんに行くと今でも何冊もの解説本が置かれているのが目につきますが、とうとう原作(翻訳本ですが)を読みました。その本の名前は、ピケティが書いた「21世紀の資本です。

    今まで何冊かの解説本を読んできたお蔭もあり、何を言いたい本なのかが分かっていたため、最後まで読み通すことができましたが、特に図表の少なくなる、第三部以降は読んでいて挫けそうになりました、解説本を書いた方々の努力に頭が下がりました。

    前半部分では、膨大なデータを処理してやっと完成した興味ある図表が出てきます。1700年以降の合計300年間以上のデータをグラフ化したものには中々出会うことができません。とても貴重な経験をすることができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基礎となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになる(p2、29)

    ・第一の結論:1910-50年にかけて殆どの先進国で生じた格差の低減は、何よりも戦争の結果であり、戦争のショックに対応するため政府が採用した結果である、課税と金融に関する部分が大きい(p23)

    ・第二の結論:富の分配の力学を見ると、収斂と拡大を交互に進めるような強力なメカニズムがわかる(p23)

    ・根本的な不等式(r>g、r;資本平均年間収益率で、利潤・配当・利子・賃料などの資本からの収入を資本総価値で割ったもの、g:経済成長率、所得・産出の年間増加率)(p28)

    ・富裕国で資本の重要性が高まったのは、人口増加と生産性成長がどちらも減速したせいが大きい。この変化を理解するには、資本と労働の分配率だけでなく、資本/所得比率(資本の総ストックと年間の所得フロー比率)の変化も分析することである(p45)

    ・国民所得を計算するには、GDPからその生産を可能にした資本の減価償却分を差し引く必要あり、これが「国内純生産」となる、GDPの9割程度(p46)

    ・国民所得=国内算出+外国からの純収入=資本所得+
    労働所得、資本から人的資本を除外するのは、人的資本は他人が所有したり市場取引できないものだから(p49)

    ・所得はフロー、ある期間(通常1年)の間に生産され分配された財の量、資本はストック、ある時点で所有されている富の総額(総資産)、資本はおおむね、住宅資本と企業・政府が使う物的資本に分かれる(p54)

    ・上場企業の株式市場における総市場価値は、通常はその企業の年間利潤12-15年分、つまり年間投資収益率:6-8%(税弾き前)である。500万ユーロの資本を使い、年間100万ユーロの財を生産、60万を労働者賃金、利潤を40万とする。この会社の資本/所得比率β=5(資本が産出5年分)、資本所得のシェア:αは40%、資本収益率r=8%となる、α=r×β(p59)

    ・欧米は産業革命で実現したリードにより、世界に占める人口比率の2-3倍の世界算出シェアを実現できた。これは一人当たりの算出が世界平均より2-3倍高かったからで、こんな時代は終わりつつある(p64)

    ・資本減価償却を1割として考えると、世界では1人当たり平均月額所得@2012は760ユーロとなる、日本は2250ユーロ、EUは2040、米国は3050、中国は520である。(p66)

    ・為替レートでなく購買力平価を使うのは、各国の市民は通常は所得を外国ではなく自国で使うから(p69)

    ・外国からの純所得は日本とドイツでGDPの2-3%であるが、数十年に渡り蓄積してきたので、それに対する今日の収益は大きい(p73)

    ・貧困国が富裕国に追いつくのは、同水準の技術ノウハウや技能・教育を実現するからであって、富裕国の持ち物になることで追いつくことではない。これは正当性のある効率よい政府が実現できるかに密接に関連している(p76)

    ・1700-2012年で世界の算出は年率平均1.6%で成長したが、そのうち0.8%は人口増加分、残りが一人当たり産出の増加からきている、1700年までは成長率0.1%(ローマ帝国時代も2億人はいたと推定)、1820年までは0.5%、1913年までは1.5%、それ以降が3.0%(p78、82)

    ・日本が過去30年で見せた一人当たり産出成長率は1-1.5%だが、人々の生活は大きく変化した。一人当たり産出が30年で35-50%増加するとは、今日生産されているもののかなりの部分が30年前には存在せず、仕事の4分の1から3分の1は当時は存在しなかった。つまり、今日の社会は、18世紀のような成長がゼロ、0.1%の社会とはかなり異なる(p101)

    ・年率3-4%以上の生長が起こった歴史的な事例は、他の国に追いつこうとしていた国で起こったもののみ、追いついた時点で終わるプロセス(p98)

    ・インフレ(あらゆる価格の一般的増加)は富の分配力学に根本的な役割を果たす、公的負債を富裕国が始末できたのはインフレのおかげ(p109)

    ・イギリス、フランスは第一次世界大戦直前には、外国に所有していた純資産は、国民所得1年分とかなり大きかったが、1915年に破たんした(p126)

    ・イギリスとフランスは1880-1914年に構造的な貿易赤字(1-2%)を出せた、外国資産による総収益は5%もあり全く問題なかった。貿易黒字を出していても利益は得られない、モノを所有する利点は、労働なしに消費を続けられること。これが植民地時代に行われていた(p127)

    ・19世紀に政府に貸し付けた人への報酬が非常に多かった、1815-1914年までインフレゼロに対して、4-5%の国債利率で、経済成長率よりもはるかに高い。とても良い投資である(p137)

    ・米国への奴隷輸入は1801年に止まったが奴隷の激増は止められなかった、自然増は奴隷購入よりも低コスト。1770年代に40万人だったが、1800年には100万人(総人口500万人)。1860年には400万人(総人口3000万人)。奴隷制廃止は南北戦争後の1865年。北部と西部では急速な人口成長があったが、南部では奴隷比率はずっと40%(白人600、奴隷400@1860)(p166)

    ・米国南部では、奴隷の総価値は国民所得の2.5-3年分、農地と合わせると4年分以上、奴隷のいなかった北部の富は少なかった、農地は1.5年分程度(p169)

    ・戦前の米国では、奴隷の市場価値は一般的に、自由労働者の賃金10-12年分に相当した。1860年、男性の奴隷平均価格は2000ドル、自由農園労働者の平均賃金は200ドル。(p171)

    ・資本/所得比率β=s/g、s:貯蓄率、s:成長率、毎年国民所得の12%を蓄え、国民所得の成長率が年2%の国では、長期的には資本/所得比率は600%になる。この国は、国民所得の6年分に相当する資本を蓄積することになる(p173)

    ・民間財産は、国民所得の4-7年分となっている、この構造的変化は、1)経済成長の鈍化(人口増加の低迷)、2)民営化と公共財産の民間移転、3)不動産と株式市場の価格に影響した長期的なキャッチアップ現象、で説明できる(p181)

    ・国民所得や国富については、最貧50%、中間層40%、最富裕10%に分割するべき(p279)

    ・非常に高い所得と給与の増加が何よりも「スーパー経営者」の出現によるもの(p313)

    ・長い目で見て賃金を上げて賃金格差を減らす最善の方法は、教育と技能への投資である(p325)

    ・人口の0.1%が国民所得の2%を占めるという事は、このグループの平均的個人が国平均の20倍の高所得を得ている事になる(p333)

    ・資本収益率が常に生産(所得)成長率の少なくとも10-20倍大きかったのは避けられない歴史的事実。ただし、1950-2012年までは、例外的にその差が1%程度(5%強と4%弱)にまで縮まった(p369)

    ・課税後の年間収益率と成長率の比較では、1913-2012年までは例外的に、成長率の方が高かった。富の集中が減ったのは、1914-1945年までの偶発的出来事(戦争)と、資本及び資本から所得への課税といった個別制度がもたらした(p371、391、412)

    ・どんな貯蓄行動の構造においても、資本収益率が上がり成長率が下がると、累積プロセスが速くなり不平等になる(p415、451)

    ・インフレの主な影響は、資本の平均収益を減らすことではなく、それを再分配すること。それは、裕福ではない人に不利益、裕福な人に利益になる(p472)

    ・果てしない格差スパイラルを避けて、蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な手法は、資本に対する世界的な累進課税である(p489)

    ・2008年の危機が大恐慌ほど深刻な崩壊を引き起こさなかったのは、富裕国の政府・中央銀行が、流動性を作り出すことに合意したから。これは大恐慌の「清算主義」とはかけ離れていた(p491)

    ・国民所得の4分の1から3分の1を消費していて、これらはほぼ二等分できる。片方は保険医療と教育、残りは代替所得(年金・失業保険)と、移転支払い(家族休符、公的扶助)にいく(p496)

    ・2010年に米国で可決された外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)で、2015年に順次導入される予定。あらゆる外国銀行は、米国財務省に対して、米国納税者の外国保有銀行口座、投資について報告する必要がある(p547)

    ・欧州ほど巨大な公的債務を大幅に減らす手法として、1)資本税、2)インフレ、3)緊縮財政であり、この組み合わせもできる。民間資本に対する課税が最も公正で効率的、それがだめならインフレ、最悪なのは緊縮財政を長引かすこと(p568)

    2016年2月26日作成

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著者プロフィール

フランス国立社会科学高等研究院の研究所長、パリ経済学校の教授、ならびにグローバル不平等研究所の共同主宰者。とくにLe capital au XXIe siècle (2013)(山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』みすず書房、2014年)、Capital et Idéologie (2019)、Une brève histoire de l’égalité (2021)の著者として知られる。

「2023年 『差別と資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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