活動的生

制作 : 森 一郎 
  • みすず書房
4.75
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本棚登録 : 60
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622078807

作品紹介・あらすじ

アーレントの主著『人間の条件』のドイツ語版からの新訳である。ドイツ語で思考していたアーレントが英語で発表した『人間の条件』にみられた一種のわかりにくさは、著者自ら手を加えたドイツ語版からの翻訳によって、鮮やかに生まれ変わった。アーレント思想のすべてが入り込んでいるこの現代の古典を、ハイデガー研究者でもある訳者の精密かつわかりやすい日本語で熟読していただきたい。

感想・レビュー・書評

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  • 哲学

  • 今年の前半は、「英雄の旅」のキャンベルと「集合的無意識」「アーキタイプ」関係のユングを中心に読んで、後半は、この「活動的生」を中心にアーレントを読んだ。

    およそ、半年の悪戦苦闘をへて、12月31日、ついに読了しました!やった〜!

    序論は、「まさに、これが知りたいことだ!」という感じで始まり、1章「人間の被制約性」〜2章「公的なものの空間と、私的なものの領域」くらいまでは、なんで今どきアリストテレスまでさかのぼって議論を始めるのかな?という疑問はあるものの、なんとか読める。

    で、3章「労働」から、前提が整理され、いよいよ本論という感じになると、急速になにを言っているのか分からなくなってくる。というわけで、仲正さんの「『人間の条件』入門講義」を参照しながら、4章「制作」まで読み進む。

    が、いよいよこの本の中核である5章「行為」に入ると、途端に歯が立たなくなってくる。ここまでで、本の約半分くらい。というわけで、しばし中断し、他のルートからの攻略を試みる。

    まずは、同時期に書かれた、より具体性の高い「革命について」を読んでみる。以前は、数十ページで止まっていたのが、半分くらいまで進む。これは、「活動的生」をまがりなりにも読んで概念が分かってきたからだが、半分を超えるとまた話しが分かりにくくなり、このルートも一旦中断。

    で、次に、雑誌に掲載されたレポートだからきっと読めるだろうと思い「イェルサレムのアイヒマン」を試して、こちらは、なんとか読めたし、アーレントの主張のコアなところが分かった気がした。

    という理解を踏まえ、アーレントの最初の主著「全体主義の起源」を読む必要性を感じつつ、牧野さんの「精読 アーレント『全体主義の起源』」で代用。さらに、アメリカ革命について、ちょっとおさえようと、トクヴィルの「アメリカの民主主義」を宇野さんの「トクヴィル 平等と不平等の理論家」で代用。

    さらに、矢野さんの評伝「ハンナ・アーレント」、仲正さんの「今こそ、アーレントを読み直す」を読む。

    という準備作業をおえて、「革命について」の後半部分に戻って、なんとか読了。

    その勢いにのって、「活動的生」の後半に再度挑戦。

    が、やはり第5章の「行為」は、なかなか手強い。

    なんとか、我慢しながら、第5章を半分くらいまで読んだところ(第5章は、長くて、100ページ以上ある)で、急に視界が拡がる。本書の基本概念である「活動的生」の3つの形態である「労働」「制作」「行為」の定義が完了したところで、それが組み合わさって、議論が前に進み始まる感じ。

    で、その議論は、だんだんスピードをあげて、前半、よく分からなかった点に関する疑問を解明しつつ、あるいは無意味化しつつ、怒濤のように最終章である第6章「活動的生と近代」に突入。

    序章で提示された「世界疎外」という概念に戻りつつ、自然科学の進歩とからめながら、近代史を「活動的生」の概念で読み解く。そして、さらに、ギリシャ/ローマ世界とキリスト教世界の断絶にまで戻りつつ、もう一度、現代社会(1960年くらい)に戻ってくる。

    現代を議論するときに、頭にあるのは、科学の進歩によって人類が手に入れた核兵器、あるいは宇宙衛星というものの存在(その先には、人工知能の発展も視野に入っている)。そして、言外には、当然、ナチス・ドイツやスターリンのソ連という全体主義を経験してしまった人間、人間がそこまでの悪をなし得る存在であったという認識がある。

    最後の150ページくらいは、書いてあることが分かろうが分かるまいが、どんどん前に進んで行く感じで、一気に読めた。

    こういう読書体験はとてもめずらしいな。

    読み終えたものの、どんな本なのかを説明するのは、現時点では不可能。

    というか、入門書などを読めば、この本の要約は書いてあるので、そっちを読めばいい、と思う。

    が、要約が自分なりに意味をなすためには、やはり実際に本を読む必要がある気がするな。

    自分が、一番ハマったところは、多分、「要約」されるときには、カットされるような部分だろうなと思う。が、自分はアーレントの「ポジティブ・コア」を見つけた感じで、うれしく思っている。

    悲観的だったり、シニカルだったりすることが多いアーレントで、しかも、「これが正しい」ということの危険性に極めて敏感な人なので、「これがアーレントのメッセージだ」とか、言われるのは、嫌いそうな感じがする。

    が、わたしは、結構、感動している。

    で、アーレントの「ポジティブ・コア」とは?

    という話しは、またの機会に。

    ちなみに、訳者によると「そう、われわれの目の前にあるのは、マルティン・ハイデガーの『存在と時間』と並び称されるべき20世紀の古典なのだ」そうだ。

    さらに、訳者は、本書の構成は、ハイデガー途中で中断した「存在と時間」のもともとの全体構想におおきく対応していて、そこでの議論をすべて批判的に検討・統合しつつ、ハイデガーが止まったところを乗り越え、さらに先に進めたとまで評価している。

    「存在と時間」との関係では、わたしが、どうしても読み進められなくなった「行為」に該当する箇所が、まさにハイデガーが「存在と時間」をかけなくなった地点と同じ場所みたい。

    あ〜、やはり、わたしが第5章「行為」がなかなか読めなかったのは、そういうことだったんだ〜、とあらためて感じ入ってしまった。

  • ドイツ語の„Vita activa“からの翻訳である本書からは、科学技術が原子核の分裂を引き起こし、人間の生を根幹から脅かすようになるという近代の帰結を見据えつつ、地上における人々の共生の見通しを人間の条件に根差した活動から切り開こうというアーレントの基本的な問題意識を、より強く感じることができると思った。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784622078807

  • 図書館入庫待ち。2015年9月2日図書館から借り出し。これを2週間で読み終えるのは無理。詳細な注、それに訳注まで付いているので、2週間では第3章労働を読み終わるのが精一杯。次の人が待っているので延長もできない。やはり買うべきかなぁ…
    2015/10/04再度借り出し。前の人の読み方が荒くて、本の痛みが激しい。愛書家ではなかった模様。

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著者プロフィール

1906-1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得、その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。

「2018年 『アーレント=ハイデガー往復書簡 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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