- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622079606
作品紹介・あらすじ
壮大なる食の歴史――そんな表現がふさわしい一冊。本書は、紀元前2万年の穀物料理から現代のハンバーガーまで、世界の食文化の興亡をたどった大著である。政治や経済、社会、宗教などに影響を受けて食が形づくられ、周期的に大きな変化を遂げて新たな食文化が生まれ、そのいくつかが世界中の国々を圧倒するようになった。そうした様相を明らかにしている。
全編を通して各時代の調理の習慣、儀礼の方法やその意味がこまやかに説明され、古今東西の料理の数々が紹介される。様々な穀物類、多種多様な野菜・果物、香辛料、水産物、食肉、乳製品、嗜好品……。古代ギリシャの食生活、オスマントルコの食文化、イギリスの上流食、フランス王朝の晩餐、カウンターキュイジーヌ……。商人や宣教師や軍隊が、海を越え山を越え、砂漠を渡り国境を越え、いかに食文化を普及させてきたか。そこにはどんな出来事があったのか。包括的な歴史を見事に描いている。
膨大な資料を駆使した丹念な研究であり、微に入り細にわたる書物だが、いったん読み始めるとページを繰る手が止まらない。食に興味がある人も、社会学、人類学、宗教史に興味のある人も。本書はその期待に応えるだろう。読書人も専門家も、料理に関わる人も食品業界の人も面白く読める本。図版68点、地図10点収録。索引を付す
感想・レビュー・書評
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食事をするのは、当たり前すぎて「なぜ調理するようになったのか」「なぜこの食材を食べるのか」を深く考えたことがある人は少ないでしょう。すぐに思い付く答えとしては、「食べやすく味をつけたり柔らかくしたりするため」「栄養があるから」が挙げられますが、そのような単純なことではなく、歴史・宗教・階級などなど、様々な要素の影響を受けてきたことに驚きます。
一部の例を紹介させていただくと、今では信じられませんが、紀元前の食文化は、身分階級や、生贄との関係で宗教の影響を受けるもので、人々は属性により口にできるものが限られていたり、食材に意味が付与されていたりしました。調理は、毒性を抜くなど安全に食べるための処理が大事な目的でした。近代国家誕生直後でも、国民の平等が広まるにつれて国民が同じ食事を食べる権利が唱えられ、食事の豪華さや取り方で支持する政治形態を表すなど、未だに食事が政治の流れに左右され、経済レベルによって口にできるものが大きく異なっていたのです。
過去と比べれば差は小さいですが、現在でも宗教による禁忌や経済格差による食事の質・量の違い・おせちなど意味を付与された食べ物が残っています。継承されてきた人々の食への姿勢と、食事の世の情勢や人々の暮らしを映す役割を実感する1冊です。
(文科三類・2年)(2)
【学内URL】
https://kinoden.kinokuniya.co.jp/u-tokyo/bookdetail/p/KP00009981
【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/65916 -
東2法経図・6F開架:383.8A/L36r//K
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原題:Cuisine and Empire: Cooking in World History
著者:Rachel Laudan
A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/528頁
定価 7,344円(本体6,800円)
ISBN 978-4-622-07960-6 C0022
2016年5月25日発行
壮大なる食の歴史――そんな表現がふさわしい一冊。本書は、紀元前2万年の穀物料理から現代のハンバーガーまで、世界の食文化の興亡をたどった大著である。政治や経済、社会、宗教などに影響を受けて食が形づくられ、周期的に大きな変化を遂げて新たな食文化が生まれ、そのいくつかが世界中の国々を圧倒するようになった。そうした様相を明らかにしている。
全編を通して各時代の調理の習慣、儀礼の方法やその意味がこまやかに説明され、古今東西の料理の数々が紹介される。様々な穀物類、多種多様な野菜・果物、香辛料、水産物、食肉、乳製品、嗜好品……。古代ギリシャの食生活、オスマントルコの食文化、イギリスの上流食、フランス王朝の晩餐、カウンターキュイジーヌ……。商人や宣教師や軍隊が、海を越え山を越え、砂漠を渡り国境を越え、いかに食文化を普及させてきたか。そこにはどんな出来事があったのか。包括的な歴史を見事に描いている。
膨大な資料を駆使した丹念な研究であり、微に入り細にわたる書物だが、いったん読み始めるとページを繰る手が止まらない。食に興味がある人も、社会学、人類学、宗教史に興味のある人も。本書はその期待に応えるだろう。読書人も専門家も、料理に関わる人も食品業界の人も面白く読める本。図版68点、地図10点収録。索引を付す。
<http://www.msz.co.jp/book/detail/07960.html>
【目次】
謝辞
はじめに
第一章 穀類料理の習得 紀元前2万年-紀元前300年
世界の食の地図 紀元前約1000年
穀物と都市、国家、軍
上流食と下流食、都市と農村、各「文明」の食文化と遊牧民食文化
古代の食事観
古代食文化についての考察
第二章 古代帝国の牲としての大麦・小麦食文化 紀元前500年-紀元400年
メソポタミア食文化からペルシャのアケメネス朝宮廷食文化まで
アケメネス朝食文化への反応としてのギリシャ食文化
マケドニア、ギリシャ、アケメネス朝食文化からヘレニズム食文化まで
アケメネス朝食文化からインド・マウリヤ朝食文化
王国の食文化の代わりとしての共和政ローマの食文化
共和政ローマ食文化から帝国的、ヘレニズム文化的なローマ食文化へ
キビ食文化から漢王朝の食文化へ
メソアメリカのトウモロコシ食文化
紀元200年の世界の食文化の地図
第三章 仏教が変えた南アジアと東アジアの食文化 紀元前260年-紀元800年
神政国の食文化──いけにえの儀式から世界宗教のルールへ
アショーカ王の勅命──仏教が変えたインド食文化 紀元前250年-紀元1200年
僧と僧院──南、東、北に広がった仏教食 紀元前250年-紀元1200年
僧と僧院──仏教が変えた中国の食文化 紀元200-850年
中国における儒教、道教、仏教食文化 850-1350年
仏教が変えた朝鮮と日本の食文化 550-1000年
第四章 イスラム文化が変えた中央アジアと西アジアの食文化 800-1650年
ワインの河、ハチミツの河──ペルシャ・イスラム食文化 700-1250年
ハンのスープ──トルコ・イスラム食文化とモンゴル食文化 1200-1350年
「生、煎る、焦がす」のトルコ・イスラム食文化 1450-1900年
オスマン帝国の食文化
ムガル帝国の食文化
第五章 キリスト教が変えたヨーロッパとアメリカ大陸の食文化 100-1650年
パンを分ける──キリスト教的食事観の形成 100-400年
東ローマ帝国からビザンティン帝国の食へ 350-1450年
ローマ帝国食文化からヨーロッパ諸国のカトリック食文化まで 1100-1500年
イベリア半島諸王国カトリック食文化の世界への広がり 1450-1650年
1650年前後の世界の食地図
第六章 近代食への序章 北ヨーロッパ 1650-1800年
近代西洋の食事観の根源
ヨーロッパ上流食としてのフランス料理の登場
オランダのブルジョア食──フランス上流食の代わりに登場した共和政食
お国料理としてのイギリスのジェントリ層食文化
ヨーロッパ帝国の下流食
1840年の世界の食地図
第七章 近代の食 中流食のひろがり 1810-1920年
都市部の給与所得者層の中流食
都市部の労働者階級の中流食
地方の貧困層の下流食
フランス上流食の国際化
食品工場
牛肉やパン、家事以外ならなんでも──カウンターキュイジーヌ
世界の食の地図、1910年前後
第八章 現代の食 中流食のグローバル化 1920-2000年
現代の食における西側諸国と社会主義の対立
「お国料理」の普及
小麦粉、包装肉、牛乳、果物、野菜のグローバル化、および料理の専門化
カウンターキュイジーヌ
食の世界地図2000年
終わりに
原注
訳者あとがき
参考文献
索引
著者プロフィール
ラッセル秀子の作品





