磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622080329

作品紹介・あらすじ

古代以来、もっぱら磁力によって例示されてきた"遠隔力"は、近代自然科学の誕生をしるしづける力概念の確立にどのように結びついていったのか。第2巻では、従来の力学史・電磁気学史でほとんど無視されてきたといっていいルネサンス期を探る。本書は技術者たちの技術にたいする実験的・合理的アプローチと、俗語による科学書執筆の意味を重視しつつ、思想の枠組としての魔術がはたした役割に最大の注目を払う。脱神秘化する魔術と理論化される技術。清新の気にみちた時代に、やがてふたつの流れは合流し、後期ルネサンスの魔術思想の変質-実験魔術-をへて、新しい科学の思想と方法を産み出すのである。

感想・レビュー・書評

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  • 第九章 ニコラウス・クザーヌスと磁力の量化
    1 ニコラウス・クザーヌスと『知ある無知』
    2 クザーヌスの宇宙論
    3 自然認識における数の重要性
    4 クザーヌスの磁力観

    第十章 古代の発見と前期ルネサンスの魔術
    1 ルネサンスにおける魔術の復活
    2 魔術思想普及の背景
    3 ピコとフィチーノの魔術思想
    4 魔力としての磁力
    5 アグリッパの魔術——象徴としての自然

    第十一章 大航海時代と偏角の発見
    1 「磁石の山」をめぐって
    2 磁気羅針儀と世界の発見
    3 偏角の発見とコロンブスをめぐって
    4 偏角の定量的測定
    5 地球上の磁極という概念の形成

    第十二章 ロバート・ノーマンと『新しい引力』
    1 伏角の発見
    2 磁力をめぐる考察
    3 科学の新しい担い手
    4 ロバート・レコードとジョン・ディー

    第十三章 鉱業の発展と磁力の特異性
    1 一六世紀文化革命
    2 ビリングッチョの『ピロテクニア』
    3 ゲオルギウス・アグリコラ
    4 錬金術に対する態度
    5 ビリングッチョとアグリコラの磁力認識

    第十四章 パラケルススと磁気治療
    1 パラケルスス
    2 パラケルススの医学と魔術
    3 パラケルススの磁力観
    4 死後の影響——武器軟膏をめぐって

    第十五章 後期ルネサンスの魔術思想とその変貌
    1 魔術思想の脱神秘化
    2 ピエトロ・ポンポナッツィとレジナルド・スコット
    3 魔術と実験的方法
    4 ジョン・ディーと魔術の数学化・技術化
    5 カルダーノの魔術と電磁気学研究
    6 ジョルダノ・ブルーノにおける電磁力の理解

    第十六章 デッラ・ポルタの磁力研究
    1 デッラ・ポルタの『自然魔術』とその背景
    2 文献魔術から実験魔術へ
    3 『自然魔術』と実験科学
    4 『自然魔術』における磁力研究の概要
    5 デッラ・ポルタによる磁石の実験
    6 デッラ・ポルタの理論的発見
    7 魔術と科学

  • ・ケプラーの観測事実から万有引力が数学的に導き出され、この公式で様々な運動が説明されれば、万有引力の正しさは証明される。
    第3巻 p.860

  • 2巻はニコラウス・クザーヌスから。
    近代科学技術的な思考へは一本道ではなく、実証的な精神が表れたと思ったら消えたり、魔術的なものが並存したり、現在から推し量るのは難しい。
    大航海時代に入ってついに偏角と伏角が発見され、天の北極に引かれているのでもないらしいことに気がつく。いろんな条件がそろってきたということだろうが、実用というのは大きなことだ。
    他、印刷技術の展開とラテン語以外の国語での書物の普及などのトピック。

  • 読みづらい。
    でも面白い。3巻目へ

  • 12世紀のアリストテレス再発見から、スコラ哲学を超えて、アリストテレスを否定していくための実験精神として、ルネサンスを準備したプラトニズム、ヘルメス主義、錬金術、を通した「自然魔術」があったこと、とても面白い。
    アリストテレスの凄さは、アリストテレス的精神によってアリストテレスを否定できたこと、と思ってたけど、訂正が必要だ。
    アリストテレス的精神は、スコラ哲学として固着してしまっていた。そこに自然魔術的な発想、自然を観察して真実を明かしていくことが加わっていく。
    また、出版によって、隠されてた知識が広く公開されたことでら職人達が数学などを学んだこと。
    そういったことが相まって、近代科学の萌芽となったこと。
    ちょっとまだ整理しきれてないけども、おおよそそんなあたりのこと。凄いよね。コーフンする!
    ルネサンスのうねりを感じる

  • 時代はルネサンスに移り、キリスト教の桎梏を脱した技術者や魔術師が、近代科学のお膳立てをしていく様子が描かれる。

  • ニュートンは誰の肩に乗っていたのか。
    確かにルネサンスにおいて見出されたのは、長い中世よりもはるか過去のギリシャ全盛期であったが、
    語られなかった時代に進歩が何もなかったというわけでは決してない。
    世界を支配していた『宗教』からある日突然『科学』が産まれるわけはなく、
    術式を用いて再現性のある現象を発生させる『魔術・錬金術』が間に挟まる。
    そう。これはファンタジー世界ではなく、現実世界における『魔術・錬金術』とは一体なんであったのかを解き明かす本とも言える。

    前巻で語られたのが、謎の力である"磁力"を当時の論理でこじつけて説明していた時代の話だとしたら、
    本巻は、わからないものはわからないとして、その効果を考える段階に至った話だろう。

    科学の前段における錬金術・自然魔術において、その一歩となったのは力の数値化であった。
    十五世紀にニコラウス・クザーヌスが磁力を重さとして計測したのと同じ頃、
    航海技術の進化によって、誤差に悩まされながらも各地における方位磁石の偏角と伏角が測定される。

    一方で、傷口ではなく傷つけた刃の方に薬を塗れば治療できるとした武器軟膏という怪しげな錬金術もあったが、
    その原理不明な遠隔作用を、天体の重力や磁石の偶力と比較して否定できる論理はなかった。

    占星術は観測技術の進化によって、天体が地上物体に影響を及ぼす力を考える天文学に繋がり、
    洞窟は金属を生育させるという錬金術的発想は、地球の自己運動、活性的存在である物質としての見方を生み出す。

    かように、生物学的な進化というものがそうであるように、科学の進化も決して直線的ではなく、
    その時代に適応した結果、次へつながるものと、そうでないものを産み出して行く。

    本書は、未だ科学に至らないデッラ・ポルタの自然魔術論で一旦幕引ける。
    数々の迷信が実験によって否定され、得た知見を広く公開することで脱神秘化・大衆化がなされ、
    定量的測定と力の作用圏の概念により、数学的関数で表される力という近代物理学への端緒は開かれた。

    科学に至るまでの道は整った。次巻に続く。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:423.02||Y||2
    資料ID:50301432

  • 山口先生がこの本についていて話していたことを思い出して購入。

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著者プロフィール

山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。科学史家、駿台予備学校物理科講師。元東大闘争全学共闘会議代表。

「2022年 『演習詳解 力学 [第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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