- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622080442
感想・レビュー・書評
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私は宿命的に放浪者である。
私は古里を持たない。
私の唯一の理想は、女成金になりたい事だった。
林芙美子の『放浪記』には、改造社版(昭和5年刊)と後に芙美子がかなり手を入れた決定版(新潮文庫版)があるそうです。
森まゆみさんの巻末エッセイを読むと、この2つの『放浪記』には、かなりの印象の違いがあることがわかります。原『放浪記』は一生に一度しか書けない進行形の「青春の書」。いま流布している『放浪記』は「成功者の自伝」と書かれていました。
わたしが読んだのは原『放浪記』改造社版です。とにかく芙美子の気迫に圧倒されました。身よりもなにもない東京で、職を転々としながら貧乏生活を送る芙美子。付き合う男は浮気男に暴力男と男運も全くない。お金もない。世知辛い世の中に泣きたくなっては、男にすがりつきたくなる数え切れないほどの夜。それでも芙美子は自分の力で生きていきます。
何でそんなに頑張れるの?何があなたを突き動かすの?その源にあるのは、何か書きたい、何か読みたい。という狂おしいほどの切実な想いなのだと思います。その芙美子の生き様が、この改造社版『放浪記』には記されているように思いました。
『放浪記』がベストセラーになったことにより、やっと『放浪記』の世界から脱出する事が出来た芙美子。『放浪記』は芙美子にとっては文学の原点であるはずなのに、その『放浪記』に何故、芙美子は思いっきり書き直し手を加えたのか。『放浪記』は芙美子にとって悪夢のような記憶が多々あったろうと森さんは書かれています。芙美子自身も「放浪記をみるのがつらくて、暫く絶版にしておきました」と話しているようです。
確かに、この改造社版『放浪記』を読めば、芙美子の叫びが聞こえてくるようでした。お金がほしい。男がほしい。酒に溺れる・・・なるほど品は良くないかもしれません。でもだからこそ生身の芙美子がここにいるようで、彼女が愛おしくて堪らなくなるのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
放浪記というタイトルから、様々な土地を流れ流れていくんだろうなと昔から思い込んでいたのだけど、割ととどまってるな…?と読みながら思っていたら、職と男を放浪しているといった文章があり、そういうことかー!と一気に納得。
ふるさとを持たない放浪者、という冒頭の文章がより染み入る。
内面の放浪なんだなぁ…。
解説で後年、林芙美子自身が書き直した文章と元々のものを比べてあったが、オリジナルの方が断然魅力的。
内容はしんどいところも多いが、リズムと若さがぴったり合って、跳ねるような文章が心地好かった。
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文庫はずいぶん整えてしまっているのだなあ!
とあとがきにて
手元に置くときはこちらの本と文庫版
両方読みたいなと思いました