海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚)

  • みすず書房
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本棚登録 : 95
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622080503

作品紹介・あらすじ

シュペルヴィエルの作品世界をどう位置づければよいのだろう。SF小説だろうか、童話だろうか、それとも妖精物語だろうか。そのどれでもあり、どれでもない。ここに収録された20の短い物語に共通しているのは、その入り口のところで、読者を現実からずれた架空の、ファンタジーの世界に引き込むということだ。最初の短篇集の表題作「海の上の少女」から、コンサートのアンコール用の技巧にとんだ小品のような最後期の短篇まで、戦後に出発した日本の詩人たちのアイドルでもあった詩人作家のベスト集。

感想・レビュー・書評

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  • 夏に小山清の短編を読んだときに、シュペルヴィエルを思い出したので。以前は文庫で読んだので、今回はこちらの単行本を。確か、似ていると思ったのだが、読んでみたらそっくりというほどではなかった。登場人物の孤独が多少のユーモアを交えて書かれているところ、文中や結末に抒情性が感じられるところが似ていると思ったのかもしれない。動物が出てくる短編で牧歌的な雰囲気の『秣桶の牛と驢馬』『あまさぎ』が好き。ただ前者は今回もホロリと…。

  • この短編選の中には、儚さと渋とさの両極面を兼ね備えたような“少女”や“娘”が数人出てきます。
    ある少女たちは、すでにこの世から旅立っているはずなのですが、彼女たちは今も思考をもちながら現世を漂っています。
    作者は、この冷たく美しい少女たちを醜い死人にしていません。今も生き生きとした少女の姿のままを表現しています。あるいは皆が裸でいる水底において、1人服を着たままでいる娘の優雅さを描いています。
    わたしにとっては、この2つの印象がとても強く、永遠に少女でいさせてあげることで彼女たちの美しさを留めておいてあげようとの作者の想いが溢れているような気がしました。
    その他、ヴァイオリンの声をなくした少女に家族は喜んだものの、それは彼女にとっては恋に破れた悲しみの表れで、1人この想いを乗り越えていかなければなりません。また、父親から信頼してもらったことで自信を取り戻した娘もいます。
    彼女たちは、少女から階段を一段上がって少し大人の女性に近づいたように思いました。
    他にも聖書やギリシャ神話などを題材にした話などあり、またがらりと印象が変わり面白く読めました。

  • シュペルヴィエルの4つある短篇集からの抄訳20篇を集めたもの。彼は南米ウルグアイの生まれだが、フランス人を両親に持ち、フランス語で詩や散文を書いている。あるいは詩人としての声望の方が高いかもしれない。実際に、ここに見られる小説作品も多分に詩的な要素を持っており、散文詩的な味わいのものも多い。逆に言えば、小説的な構築性には乏しく、一種の捉え難さをも併せもっている。その意味では、わかりやすいのは「また会えた妻」だろうが、篇中で作家を代表するのは、やはり独特の幻想世界を構成する表題作だろう。

  • 詩人シュペルヴィエル(1884~1960)が残した4冊の短篇集(「海の上の少女」「ノアの方舟」「善意爆弾」「世界の最初の歩み」)からの抄訳。20の短篇。『海の上の少女』って「海の上のピアニスト」みたい…、とは、まったく本題とは関係のない感想です(もちろん原題そのまま)。堀口大學訳『沖の小娘』とは、題名だけでもずいぶん印象が違うけれど。あらためて読み直して、思った。私は、堀口大學訳のほうが、好きだ。

  • 短編の一つ『秣桶の牛と驢馬』が好きで。この作品を読む度に宮沢賢治を思い浮かべてしまう。澄み切っていて息もできなくなるような。美しい作品です。

  • 宗教的な話からそうでないものまである
    不思議な感じの短編集です。
    私はこの中ではセーヌ川から来た名無し嬢が一番気に入りました。

  • 静かで冷たくて痛くて美しい

  • 2009/
    2009/

    読みたいです、海洋文学。

  • 幻想小説の名にふさわしい幻想小説(そのまんま)

  • 読みたい本を探すときはいつも、並んだ背表紙や、手にとって最初に開いたときに、何か自分に向かって放っているものを直感で選ぶのが常なのですが…。このピンク地にタイトルと作者名しか書いてないシンプルすぎる本も、明らかに何か放ってました。<br>
    そして案の定“当たり”ではあったのですが。<br>
    どこへ持っていったらいいのでしょう。この読後の寂寥感は。ごく短い話ばかりですが、1つ1つが痛い、重い…。しかしじっとりはしていない、あくまで簡明な語り口です。神話に題材を取っていたり、ファンタジー的な雰囲気だったりましますが、その入り口の広さにサクサクと入っていくと、辛い目にあいます…。

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著者プロフィール

1884年ウルグアイ生まれ、1960年没。詩集『荷揚げ場』『無実の囚人』『忘れっぽい記憶』など。小説『ひとさらい』『沖に住む少女』など。1955年アカデミー・フランセーズの文学大賞受賞。1960年レ・ヌーヴェル・リテレール協議委員会により「詩王」に選出される。

「2018年 『悲劇的肉体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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