猫の王国 (大人の本棚)

  • みすず書房 (2011年12月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784622080947

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • 猫を飼ったことがあっても、仔猫を保健所に持っていく(つまり、殺処分する)ことに抵抗なかったんだな、と新鮮な驚きがあった。

    時代背景もあるのだろうけれど、屋根裏で死なれても困るし、増えても困るし、野良猫に手を焼いていた、という理由があるにせよ、猫飼いにも色々な人がいるのだなと。

    同じ人が、自分の飼い猫には深い愛情を示すところが興味深い。年齢や状況にもよるだろうけれど、「うちの子」と「よその子」は、こんなに違うものなのか。

    私の周囲には、どちらにも優しい、親切な猫飼いさんが多く、猫エッセイを書く人も同様の印象があったが、皆さん、本音を書かないだけなのかも知れない。

    猫の話よりも、「ボストン再訪」という、若き日のアメリカ留学時代を回想しながら街を歩くエッセイの方が心に残った。著者が留学した時代は、女性研究者も少なかったし、今とは状況が全然違っていたようだ。

    猫エッセイの中に出てきた、かばん売りつけ詐欺の話は不思議だった。詐欺と気づいたなら、「止めます」と言えば良いのに。
    著者は大学教授なのだが、プライドが高く、賢い人ほど「(こんな賢い自分が)騙された」ことを認められないのかも知れない。

  • 「“キライ”と言う感情は“スキ”の前触れ」
    数多くある恋愛小説の定石である。
    簡潔に言ってしまうと猫嫌いが猫にメロメロになっていく本。ついには「お猫さま」にかしずき、猫のいない生活など考えられなくなっている。
    猫を飼う、ごくごく普通のことだが意外と人生に大きな変化をもたらすことなのかもしれない。

  • 文章に若さを感じる。
    それは、昨今の若者言葉を使って若ぶっているとか、若さに媚びているとかいうのではない。
    おそらく、ご自分の40年前の若さをもう一度追体験することに成功しているのだろう。

    そして、確かに歩まれてきた40年もまた同時に感じる。

    一見かけ離れているかのような、猫たちにまつわる3編と40年前留学したボストンを訪れる2編であるが、互いが互いの外伝のようとも言える。

    猫たちとの日常を綴るエッセーは、留学から帰って後の筆者の家庭や大学人としての苦闘を立体的に描くし、『小次郎がいい』で小次郎の喪失が描かれた後に読むから、『シーギー』が一層哀切を帯びる。

    ことばをもたない猫が世界を切り取り把握することができないように、40年前の自分と、その後ことばを(従って観念を)更に獲得してきた40年後の自分とでは、世界の切り取り方が違う。違っていなければ、40年の重さがなくなってしまう。

    「捨てたもの、失ったもの、行方の知れないもの、姿を消したもの」ーーそうだろう、友人も夫も猫も物も。そういうことの繰り返しだったろう。
    40年はそういうもので満ち満ち、失うことで、それらへの愛惜を懐かしさを得てもきただろう。

    昨今の日本の小説やエッセーのことばの軽さを、まざまざと思い知らされる。
    決して重いわけではないのに、ただきちんとした日本語であるというだけで、きちんと沁み入ってくる。こんなにも落ち着く。

    巷にあふれるキャッチーな設定、烈しいストーリー展開、軽い言葉の文章が、なにほどか虚しく感じられる。

  • 大人の本棚

  • 猫を題材にした小説、でも、エッセイでも、読むときはいつでもどきどきする。
    話の筋とは関係なく、突然道路へ飛び出して車に引かれちゃうんじゃないかとか、変な物を飲み込んで窒息死しちゃんじゃないかとか
    著者が「小次郎」をボストンに連れて行ったのにもどきどきした。
    でも別れは突然くる。こんなに身構えていたのに、やっぱりきてしまった、、、。
    著者は女性の英文学のまさにパイオニア。父と同い年なのにびっくり。この方の歩んできた道は、女性研究者の軌跡のようですね。
    その道のりにそっと猫たちの存在。
    やっぱり私たちは彼らに癒されているのです。

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著者プロフィール

北條文緒
1935年東京に生まれる。東京女子大学文学部英米文学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。東京女子大学名誉教授。イギリス小説、翻訳研究専攻。
英文学に関する著書・編著の他に、『ブルームズベリーふたたび』『猫の王国』(ともにエッセイ集、みすず書房)『翻訳と異文化』(みすず書房)。
訳書に、E.M.フォースター『眺めのいい部屋』『永遠の命』S.ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』A.ホワイト『五月の霜』A.ホフマン『ローカル・ガールズ』ケイト・フォックス『イングリッシュネス』『さらに不思議なイングリッシュネス』(いずれもみすず書房)アンデシュ・リデル『ナチ 本の略奪』(国書刊行会)など。

「2022年 『血の畑 宗教と暴力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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