統合失調症 1 (精神医学重要文献シリーズHeritage)

  • みすず書房 (2010年2月24日発売)
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本 ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784622082330

感想・レビュー・書評

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  • 70年代から80年代にかけて、統合失調症の、主に発病過程をめぐる論文を集めたもの。これは専門書である。読者の対象は研究者・医者・医学生であって一般人ではない。ときどき、よくわからない専門用語も出てくる。
    自分のことを言えば、すでに癌で死んだ姉が重度の統合失調症(分裂病)であった。この病気には興味があるのだが、共感的に理解することはすこぶる難しい。
    こういった専門書を読むと、幾多の臨床経験をもつ医者が、科学的な視点を中心に、経験をふまえた精緻な分析をおこなっているのが興味深い。しかし、こと精神疾患に関しては、「科学によって解明された」と言える段階にはほど遠い。
    この本の最初の論文「統合失調症の発病段階とその転導」がおもしろかった。
    発病時臨界期までの時期を、中井久夫さんは順に「余裕の時期」「無理の時期」「焦燥の時期」と区分する。その過程で「ゆとり」が失われ「きゅうくつ」な状態に患者が陥っていく感じは理解できる。ただし、健康な「余裕の時期」について、「親しい人びと、近しい事物は自己の延長であるように扱われ、・・・」と、あたかも生後間もない乳児の「自己と世界とが未分化な状態」であるかのように書いてあるのは疑問に感じた。
    素人の理解で言うと、統合失調症は自己と世界との関係が異様な「統合性」のなかに無理矢理組み込まれてしまう状態ではないか、と思うのだが、そうであれば、病前の時期は、世界と自己は健康的に分化している状態なのではないかという気がする。

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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