『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)

  • みすず書房 (2005年7月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784622083061

感想・レビュー・書評

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  • 【自由研究】『こころ』(1)
    先生はなぜ自殺したのか。これが自分が今までずっとモヤモヤしている謎です。
    この本は、自分で気付かなかった新たな視点をもたらしてくれました。
    高校の頃読んだときは、親友を死なせた罪悪感からかなとか、社会人になって読み返したときは先生のエゴかなとか。その時々で感想は変わりましたが、これといった答えは見いだせませんでした。
    大人になれなかった先生。
    そう言われると、確かに自分が感じていながら言葉にできていなかったモヤモヤを、ちょっと過激ですが著者が見事に言葉にしてくれた、というのが今回の感想です。(まだ完全にスッキリしていないところにこの小説の奥深さがあるのですが…)

    もちろん大人になれなかったから自殺したという単純なものでもないと思いますし、答えなど誰にも出せないのかもしれません。(そもそも答えなど必要ないのかもしれません)

    親を超えることが大人になること、というのは時代の違いかよくわかりませんでした。また、静は全部知っていたとか、先生の死後、静と青年が結婚した説とか同感できないところもありました(そもそも静って名前出てきたっけ??)

    自分の読みがまだ浅いせいかもしれません。
    まだまだ自由研究が必要と思われます。

  • 最近漱石の心理描写に惹かれているので、先生、K.青年、お嬢さんの内面について、わかりやすい内容で良かった。

  • こころ、こんなふうに読めるのか!

  • 外側の自分と内側の自分の一致を求めていることが、大人になれていないことを示しているという部分、Kの自殺の理由が自分にあると思っていたことが、Kの意思決定の存在を軽視していたことを示しているという部分が、自分自身の他人との関わり方に重なった。

  • 高校の授業でやったのと同時に読みたかった..!!
    こんな解釈が出来るのかと驚きっぱなしでどんどん読み進められた。
    文章は読みやすいし前半は後半の為に「こころ」の本文(全文でない)が載せてあるので久々に読んでもこれ一冊で多分理解出来るんじゃなかろうか。

  • 夏目漱石の『こころ』にかくされた意味を、ミステリの謎解きのように著者が明快に解き明かしている本です。

    漱石はもう読まれていないと著者はいい、本書の冒頭にも『こころ』の本文テキストが抄録されているので、『こころ』を読んだことがない読者でもおもしろく読むことができます。

    著者自身、「全体として、僕の読解にはややトリッキーな感じを受けるかもしれません」と述べていますが、テクストに内在的な読解を通じて、先生と奥さん、そして語り手の青年の三者のあいだにあった思いもかけない関係を大胆に推測しています。

  • 文学

  • そんな視点もあるか…❕
    書いている『私』の状況と、お嬢さんがどこまで知っていたのか。

  • 先生、青年、静の立場から「こころ」を読む

  • 高校2年の現代文の授業でやった『こころ』が好きだった。
    矛盾点とか、全然気付かなかった。
    こういう解説も面白い。
    国語が面白くないという人は、ぜひ、『こころ』を読んでから挑戦してほしい。

  • テクスト論というらしい。作者の意図よりも、その文章の書かれた時代や、文章上の表現から小説を読み解く方法論。刺激的でした。
    言葉を扱うということは面白いことだと思うと同時に、その難しさを感じる。言葉を大切に扱いたい。
    ネタバレになるけど、「なるべく」は「純白」にかかってるんじゃないかなぁ。なるべく公表しない。はちょっと飛躍しすぎの感。「もうすでに純白でないかもしれない」という留保としての「なるべく」な気がする。

  • 読み直す度に、解釈が変わる名著だと改めて思った。専門家の解釈を読むのも面白い。

  •  小説内のほころびや読んだときにちょっとだけ「あれっ!?」と違和感を感じるところなどを手掛かりに、隠された情報や真実を推測してゆく過程は、すぐれた謎解きを体験するようなワクワクした感覚に満たされます。
     そういう作業を可能にするためには、バックグラウンドとしてその小説の書かれた時代や人生の機微、心理学などいろいろな教養を要するということを痛感しました。
     当然のこととして何度も小説を分析的に読んでゆくという大変な作業が必要になるのでしょうが、素人はそこまでいかなくてもゆっくりと小説を味わい、考えながら、大いに空想を働かせながら読んでゆくことによって、ザッと読むのでは分からない事実に出会うことができるかもしれません。
     ただし、そういう作業に耐えうる小説であることが前提であり、そういうものが”古典”たりうるものなのかもしれません。
     

  • 漱石を長年研究してきた方が、高校生向けに書いているのでとてもわかりやすい。根拠も明確です。「こころ」をより深く知る手がかりになります。

  • [ 内容 ]
    大人になることは、かつては親を超えることでした。
    ところが、その機会を奪われたのが、ほかならぬ「先生」です。
    そこに不幸の始まりがありました。
    「先生」が果たせなかった“父親殺し”の問題を、詳細に追究します。
    さらに、「先生」「K」「私」をめぐって幾重にも仕掛けられた驚くべき謎を読み解きます。
    最高の漱石入門。

    [ 目次 ]
    第1回 なぜ見られることが怖いのか(長すぎた遺書;眼差しへのこだわり;眼差しが怖い ほか)
    第2回 いま青年はどこにいるのか(語る人間の物語;冒頭と末尾の矛盾;隠された感情 ほか)
    第3回 静は何を知っていたのか(「先生」と呼ぶ理由;エリートのための純粋培養システム;高等教育の中の出会い ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 結構ムリのある論展開のところもあるけれど、流石は「こころ」論にメスを入れた一人者といったところ。文章の書き方がすごく上手い。将来教師になったら、高校生にこれを読ませて、批判させてみたい。

  • レベルは下げないで研究内容を高校生に向けてわかりやすく書いたとあるとおり、小森陽一の『漱石を読みなおす』よりも読みやすかった。

    私が知りたかった「先生の死後の静と私」に言及した小森陽一の論の根拠が紹介してあってすっきりした。

    それにしても漱石は奥深い。


    作成日時 2008年03月20日 12:21

  •  すごーく読みやすく、かつ、新発見の喜びも味わえる「こころ」読解。北村薫の『六の宮の姫君』をひくまでもなく、読むという行為は謎解きの面白さを常に含んでいるのだ。  もともと薄い本だけれど、半分は「こころ」のテキストなので、実質量は100ページ足らず。もっと読みたい〜

  • 読みたい本。

  • ●噂のトリッキー漱石読解本。
    あまりにトリッキーつかアクロバティック。
    高校でこんな読解やったら、普通の教師はマルくれないんじゃないの? それもよし。かつては一面的、強制的にひとつの解しか提示しない国語のテスト問題には納得行かなかったものですが、テキストを裏読みするなら、まずはまっとうに表読み、基本の読解ができてないと話にならないと思うようになったので。 ●それはさておき、大変面白い読解でした。
    ほっほう、そんな細部を読み込んで「先生」や「私」の外面・内面を推理するのか!とひたすら感嘆。
    ですます口調で語られる文章もたいへん丁寧で端正。美しゅうございます。 ●十五年前の自分に読ませてやりたい一冊でした。で、奥さんの名前ってほんとに「静」って言うの?(←あっ底が割れた。)

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著者プロフィール

1955年生。早稲田大学教授。著書に『漱石入門』(河出文庫)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『夏目漱石『こころ』をどう読むか』(責任編集、河出書房新社)など。

「2016年 『漱石における〈文学の力〉とは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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