世界文学のなかの『舞姫』(理想の教室)

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 27
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622083290

作品紹介・あらすじ

明治のエリート豊太郎、故国喪失者となってエリスと暮らす?実在の南米移民の経験や「ディアスポラ」の世界文学がひもとかれるなか、主人公=作者・森鴎外のイメージは存分にゆすぶられ、未来はよりいっそう宙吊りに。ありうべき選択肢とともに読者に託される問いの数々。「あなたなら、どのような道を選んだと思いますか」。

感想・レビュー・書評

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  • 前半の豊太郎性欲解放推しがなあ。
    豊太郎にとって、そうなる状況が整っていた、というのは分かる。
    エリスと共に生きる道が当時なかったわけでない、というのも分かる。
    けど、男として責任取れないのに一線超えちゃダメ論は、道徳的すぎる。

    肯定してるわけではないのです。
    でも、テキストの読みにモラルを入れると、急に感想っぽくなってしまうように思うので。

    後半の、歩くという行為によってドイツの街を描き得たという部分は面白いし、舞姫論争も分かりやすく踏まえてくれているし、ドストエフスキー、多和田葉子にまでどんどん膨らんでいく視点も楽しい。
    まあタイトル『世界文学のなかの』だからね。

  • 面白いところもあったのだけど、
    「豊太郎はエリスを捨てた、としか読めないのは浅すぎる!ドイツに戻って南米に駆け落ちしたかも知れないじゃないか〜そういう人も実際いたし〜」
    というのは私にはあまりに無理矢理に感じられる…。

  • 近代日本人の海外進出はまず男性エリートの海外発展の形をとった。
    日本人はコリアンのような大規模なディアスポラを引き起こされることはなかった。日本人のグローバルな規模での活躍はディアスポラというよりもなおも海外進出というバラ色の響きを残す場合が多い。日本人はディアスポラの民となるよりは、むしろ周囲にディアスポラを引き起こし、そのとばっちりを被ることをどうやって回避しようかということに汲々としている、しょせんは大国民である。
    ドイツ帝国の急成長ぶりは近代化から取り残されたスラムの膨張も促した。

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著者プロフィール

東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化博士課程中退。立命館大学先端総合学術研究科名誉教授。
専攻は比較文学。ポーランド文学、イディッシュ文学、日本植民地時代のマイノリティ文学、戦後の在日文学、日系移民の文学など、人々の「移動」に伴って生み出された文学を幅広く考察している。
主な業績に『声の文学―出来事から人間の言葉へ』(新曜社、二〇二一年)、『外地巡礼―「越境的」日本語文学論』(みすず書房、二〇一八年)、『バイリンガルな夢と憂鬱』(人文書院、二〇一四年)、『ターミナルライフ 終末期の風景』(作品社、二〇一一年)『世界文学のなかの『舞姫』』(みすず書房、二〇〇九)年、『エクストラテリトリアル 移動文学論Ⅱ』(作品社、二〇〇八年)などがある。

「2022年 『旅する日本語 方法としての外地巡礼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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