カフカとの対話 手記と追想 (始まりの本)

  • みすず書房 (2012年11月1日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784622083597

感想・レビュー・書評

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  • 本書を読むかぎりでは、カフカはあまりに生に対して真面目な人だ。本書でも言われていたとおり、「聖人」のようでさえある。
    そんなカフカがあの滑稽でグロテスクな小説群を書いたかと思うと、なんだか胸が詰まる。
    カフカは眠れぬ夜に、あくまで大真面目で書いたにちがいない。
    それを読む俗人である私自身が、ただそれを滑稽と感じているだけだとしたらどうだろう。今まで考えたこともなかったけれど、そんなこともありうる、と思わされた。

  • 『カフカとの対話』
    グスタフ・ヤノーホ
    訳 吉田仙太郎

     少年期に実際にカフカと話したヤノーホが記した自伝とも読める本。
     いわずもがな、その特性から気をつけなければならないことがある。その発言の信憑性である。「偽書」とも呼ばれた時期もあったそうだ。
     どう読むかは人それぞれだが、「こんなことも言ってたのかな」くらいの軽い気持ちで読んだ。
     やはり、その作者のことを知りたければ全集を読むべきであろう。 

     「たぶん日光は、内部の暗黒から私たちをそらせてくれます。光が人間を圧倒するならば、それはすばらしい。この不眠と恐怖の夜がないとすれば、私はまず、書くなどということをしないでしょう。けれどもこんな具合に、絶えず私の独房生活が意識されるのです」(p21)

     ★不眠症はカフカの文学を作った要素の一つである。

     「……本は世界の代用となるものではない。それは無理なのです。……」(p39)

     ★忘れてはならないこと。

     「『変身』は恐ろしい夢です。恐ろしい観念です」(p52)

     ★『変身』について。正直にとるなら、夢の物語ということになるのだろう。だが観念とはなんだろうか。その後に「夢は現実をあばくけれども、その背後に観念は残るのです。……」とある。
     観念はイデアの訳だろうか。 もともと小説とはそういう力があるが 、『変身』は文字面だけでは見えてこないものを潜ませていることになる。

     「……魔術師というものは、それぞれ独自の儀式をもつものです。……書くということは、たしかに一種、精励招魂の儀式です」(p69)

     ★なるほど。

     「彼はあまりに想像力をもちすぎていました」カフカは言った。「だから、かれは戦争に耐えることができなかった。戦争は、とりわけ想像力の途方もない欠乏から起こったのです」(p163)

     ★この後、カフカは亡くなり第二次世界大戦へと向かう。予言とも読めるかもしれない。

     「これで、もういいのです」フランツ・カフカはゆっくりと言った。「私はすべてを肯定したのです。だから苦しみは魅惑となり、死は——、死は甘美な生の、ある一部にすぎないのです」

     ★カフカがサナトリウムへ向かう前に著者と合ったときの言葉。達見している。しかし本当にこの言葉を話したかは分からない。

  • 自分のように頭の悪い人間には理解が難しいです……。
    しかしこんな頭抱えそうな会話をしていたと思うと、当時は暗い世の中だったんだなあと思います。戦争って嫌だね。

  • 私にとって、カフカのイメージの核となった本。今回の版では三谷研爾の解説が愉しみ。。。

    筑摩書房のPRを借用
    「G.ヤノーホは、困難な青春の暗澹たる一時期―17歳という多感な年頃―にフランツ・カフカの知遇を得た。以後、並はずれた文学・音楽・美術青年としてしばしば晩年のカフカと接触した。その時の記録と追憶が本書である。20世紀の不安と絶望を鋭く形象化したカフカの文学世界への手引きであると共に、一人の役人として平凡な役所勤めをする生活者カフカの姿を生き生きととらえた感銘深い名著。」

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