本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784622086604
作品紹介・あらすじ
名乗りながら笑顔でイギリス人に手を差し出したとき、鼻に皺をよせてあいまいな笑みが返ってきても、肩すかしをくった気分になることはない。どんな仕事をしているのか、結婚はしているか……知りたくても、尋ねてはいけない。「推理ゲーム」「相互情報開示計画」に参加して外側からじわりじわりと正解にたどりつくのがルール。
パブで、いつ果てるともしれぬ客同士の応酬――自慢し合い、罵り合いを目の当たりにしても、はらはらするにはおよばない。カウンターに群がる客の中で、注文をとってもらおうと手をあげてウェイターを呼んだら顰蹙をかう。そこには「パブでの会話」の、「見えない列」の、「パントマイム」のルールが存在している。
晴れていようが吹雪こうが会えばまず天気の話。感情をあらわにすることを避け、ひとこと話すにも独特のユーモアとアイロニー。これを使ったが最後「下の階級」の烙印を押されてしまう7つの言葉とは…… 男性・女性を問わず、あらゆる年代、階級の英国人のふるまいと会話を人類学の手法によって観察し、隠れたコードを導き出すことで、イギリス文化をかろやかな筆致で描いた本書は、第一版刊行より10年来のベストセラー。本書はその前半を収める。
感想・レビュー・書評
-
英国ミステリーで会話の妙みたいなのをよく感じるので読んでみた。天気の話はグルーミングトークだという事、イーヨーの嘆きは英国人的な事、自己顕示・正論や悲しみを声高に訴えるよりもユーモアで伝えるというところが面白かった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イギリス人の態度やふるまいの特徴、すなわち、イギリス人の国民性やステレオタイプについてまとめたもの。例えば、礼儀正しさ・打ち解けにくさ・フェアプレイ・ユーモア・階級意識等があげられよう。本書の筆者、ケイト・フォックスは、イギリスの人類学者であり、本書も実際には彼女の学者としてのきちんとした調査がベースになっているようである。
随分前のことになるが、私は2003年から2004年にかけて、イギリスに留学していた経験がある。当初2週間程度をロンドンの語学学校で英語の勉強に費やし、それから地方の大学のビジネススクールの外国人マネジャー向けコースというものに通った。ビジネススクールのコースが外国人向けのものだったので、生徒は外国人(イギリス人以外)ばかりではあったが、ホームステイ先のご家族や学校の先生や、あるいは、日常生活を送ったり、あるいはイギリス国内を旅行する際にイギリス人と触れ合う機会はもちろん多かった。その時に感じた、イギリス人のユニークさ(上記したような礼儀正しさとか打ち解けにくさとか)は日々感じることが出来たし、それを、本書で実例付きで読むのは楽しい読書経験であった。
本書は訳書である。本書では、原書のうちの前半部分だけしか訳していないということであり、後半部分を訳したものも出版されている。それを読むのも楽しみにしている。 -
人気人類学者ケイト・フォックスが、フィールドワークをおこない、幅広い年代、階級のイギリス人の会話や行動を鋭く観察・分析している。それらの底にある〈イギリス国民性=イングリッシュネス〉が整理されている。外国人からすると興味深いイギリスの国民性が紹介されている。(H.K)
-
イギリス人の不文律について研究した本。 著者は社会人類学者。 イギリスの様々な場所でフィールドワークを行い、イギリス人とは何か、根底にある不文律について記述する。 面白かったのは競馬場の人たち。そこには他の場所とは違った風景が見られる。 言葉を交わす時は互いに謙遜し、礼儀正しく振る舞い、レースの後は相手を傷つけないように配慮して言葉を選ぶ。 お金の話は一切行われず、別の言葉でほのめかすだけ。 そういうマナーの下で楽しむ。ギャンブルなのに、お金の話を吹聴することはタブーなのだ。 競馬をすぐにお金の話に結びつけ、儲けた話を自慢しあう日本の競馬ファンを見たら、きっと下品で付き合いたくない人と思われるかも。 競馬文化、競馬人の品格の違いを感じた。
-
自分が所属するコミュニティを対象に研究するケースは珍しく思えるが、著者は可能な限り客観的な立場に基づくことに努めており、イギリス人の振る舞いが興味深く考察されていた。イギリス人の行動の原動力には、雑に言えば「茶番好き」な文化や伝統が潜んでいるようだ。自分が相対するとかなり厄介そうな生態だが、『傑出した業績は「まあまあ」、極悪残忍な行為は「優しくない」』と表現するようなスカしたユーモアはかなり好きだ。
-
斜め読み。「イギリス人らしさ」を種々の参与観察や調査から明らかにしている。国民性というのはしばしばジョークのネタにされたりもするのだけど、本書はそれをより細密にしたもの、だとすると、読み物として俄然面白くなってくる。(読み方として正しいのか分からないけれど(笑))
面白いと思ったのは、社会的不適応を軸に据えていること、そしてあらゆる場面で階級による違いがあること。イギリス人の「打ち解けなさ」とフーリガン的、反社会的行動という二面性。社会的不適応は面白くて、どこか日本人のことかと思うところも結構ある。ぶつかられても「ソーリー」を連発したり、行列の割り込みをとがめずにさりげなく阻止しようとしたり、裏で避難したり。電車内では他者との干渉を嫌って新聞でバリアを張る。語弊を恐れずに言えばほとんど人間嫌い、コミュ障だ。
このように共感するところがある一方で、階級意識は全く違うし、イギリス人の根底にある(と著者は見る)「社会的不適応」は相当に極まっていて、それは彼らのシニカルな世界観にも通じている。
階級意識について言えば、日本では(経済格差とは別に)階級的には平等意識が根付いているけれど、イギリスはどこまでも階級意識がついてくる。裏を返せば、階級意識があればこそ、上流には上流として社会に果たすべき役割がある、という考えが出るのではないか、とも思う。
著者によれば、イングリッシュネスは「マインドセット(ものの見方・考え方)、エトス、振る舞いの文法」だと言う。それは生まれや人種の問題ではなく、謎だらけの「ルール」なのだと。本書を読めば、私達でもイングリッシュネスをいくらかは理解することが出来るのかもしれない。 -
これで終わり....と思ったら原書の前半だけが訳出されているのだった。ここから、愉しそうな話題なのに。原書を読まねば、ならないか。でも、訳文から察するに、「イングリッシュ」な文体なんやろうなぁ。
-
間接的なわかりにくいイギリス人なるほどという内容も多々。これ読んでたらそんなものだと開き直れたかも。るーるがたくさんで、外国人には難しいのかも。
-
非常に面白かった。
自分がいかにイギリス人的か、認識した。
過去の論文をまとめ直したと思われる、パブや競馬に関する報告は秀逸。
惜しむらくは、翻訳。直訳過ぎて分かりにくい。