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Amazon.co.jp ・本 (648ページ) / ISBN・EAN: 9784622087786
作品紹介・あらすじ
〈今日「日本」イデオロギーと封建的反動との結合はほとんどアプリオリであるかにみえる。……日本主義の思想と運動も、大正から明治へと遡つてゆくと、最近の日本型ファシズムの実践と結びついた段階とはいちじるしくちがつた、むしろ社会的役割において対蹠的といいうるほどの進歩性と健康性をもつたものにゆき当たるのである。明治20年代の日本主義運動がそれであり、その最も輝けるイデオローグの一人がここに叙べようとする陸羯南である。〉
(「陸羯南――人と思想」)
大学時代に書いた懸賞論文「政治学に於ける国家の概念」(1936年)から、「E・ハーバート・ノーマンを悼む」(1957年)までの論稿集。日中戦争、第二次世界大戦、戦後占領下へと激動の時代に、政治思想家の視点から応答する。戦中に、福沢諭吉における個人と国家の関係を再考した「福沢諭吉の儒教批判」「福沢に於ける秩序と人間」、終戦直後に、徳川時代の思想史に近代化を探ろうとした「近代的思惟」、レッド・パージなど「逆コース」下の政治状況を描く「恐怖の時代」など、全61篇。誇大な○○イズム、○○主義を排し、ナショナリズムと民主主義を考え抜いた、珠玉の批評。
感想・レビュー・書評
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丸山真男が1936年から57年の間(戦中から戦後)如何なることを学び考え発表したか、投稿論文を主として講演や書評等々61遍の論稿を集め纏めたものである。
政治学・政治思想史・歴史学について、欧米や日本の学者の思想や論文の紹介・解説、いろいろな学術書の書評、さらには後輩や学生への学問に対するアドバイス等々、彼の思想や主張はもとより、学び・研究すること対する姿勢やその意味を如何なく教えてくれる。政治学・政治思想史さらに社会科学・歴史学等のエッセンスから、それらについて読むべき古典まで手解きしている。M・ウエーバーの「価値判断の諸問題」や「資本主義の精神」について、この本は「主食の中の主食で、よく咀嚼すれば全文悉く栄養分になります」と言う。
太平洋戦争から敗戦そして戦後の占領期、政治思想史の学者として、自身の出征や復職・戦後の肺結核による入院生活などの環境下、ブレずに淡々と思考し研究を継続する姿には驚嘆である。内容やテーマは当時の事象や軋轢も扱ってはいるが、その問題意識や論理は一貫して本質的で、極めて冷静である。学問に向かう姿勢と情熱がひしひしと伝わってくる。思想は時代環境を超える、基本がしっかりした芯のある深い研究や思考は今でもまったく古びない。丸山真男とはそんな思想家であったのだと今更ながらに痛感する。
従来、彼の代表的な著名論文はどれも難しくなかなか親しめず、突き放されるような冷たさすら感じていた。それは自分がそれを解るレベルに届いていなかっただけだ。それぞれの大作に昇華する前の思考のパーツを見せて貰った気がする。この論稿集を読み通して、初めて彼の豊かさ・深さそして真摯で圧倒的な学者の迫力を感じさせられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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