マーシャル・プラン――新世界秩序の誕生

  • みすず書房
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (696ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089063

作品紹介・あらすじ

これまでで最高の研究だ。
――ポール・ケネディ(イェール大学教授。『大国の興亡』)

外交、経済、大戦略を鋭敏に把握し、
冷戦とポスト冷戦時代を理解する新標準を打ち立てている。
――ジョン・ルイス・ギャディス(イェール大学教授。『大戦略論』)

70年後の今、経済的・軍事的にまったく異なった環境で…われわれのリーダーたちが、70年前の実際的な知恵とアイデアから恩恵を受けられんことを願う。
――ポール・ボルカー(第12代連邦準備制度理事会議長)

リーダーと識者たちは今も世界中で新たな「マーシャル・プラン」を求め続けているが、現実のそれがどのようなもので、どのように形成され、何を成し遂げたのかを真に理解している者はどれほどいるだろうか? 目と心を開かせてくれる一冊だ。
――アラン・グリーンスパン(第13代連邦準備制度理事会議長)

「本書は新たに始まった冷戦の中心にマーシャル・プランを大胆に位置づけ、ソ連が苦労のすえに勝ち取った中欧と東欧の緩衝地帯にこのプランが脅威をおよぼす可能性について、スターリンがいかに真剣に考えていたかに焦点を当てる…プラハでのクーデターやベルリンの封鎖など、冷戦初期の劇的なエピソードのほとんどは、マーシャル・プランを挫折させ、欧州全域におけるアメリカの影響力弱体化を狙うスターリンの強い決意が原動力だった」
「マーシャル・プランがアメリカ外交の最大の成果のひとつとして記憶されるのは、先見の明があったからだが、実際に効果を発揮したからでもある…政治的手腕が素晴らしい成果を発揮するためには、高い理想を掲げながらも現実に目を向けなければならない。私たちは、それを教訓として再び学ぶ必要がある」(本文より)
この巨額かつ野心的な欧州復興イニシアティブは、いかにして冷戦という世界秩序を形作り、アメリカの戦後の大戦略に資したのか。アメリカ、ロシア、ドイツ、チェコの新資料を駆使して、その全貌を描いた決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えて付箋だらけになってしまったが、とにかく素晴らしいの一言。
    12章までの、マーシャル・プランの成立過程を丹念に追ったパートだけでも、群像劇や駆け引きなど歴史読み物として満腹なのに、最後の2章でこのプランの意義や有効性が政治・経済的に精緻に分析され、それが昨今のロシア問題とどう関わってくるかを知り、鳥肌が立っちゃった。
    教科書の歴史的事項だろうと安易に考えていたら大間違いで、現在の我々の足元まで連続して繋がっていることに驚き、昼夜分かたず懸命に構想を練り、粘り強く交渉した関係者の努力に思いを馳せた。

    現在に至るまでアメリカが、ヨーロッパに軍事的プレゼンスを置き続けるなんて、マーシャル・プランが構想された当時、スターリンはもとより、トルーマンやマーシャル、構想の理論的支柱のケナンやクレイトン、推進役のクレイに至るまで、誰も想像していなかったことだろう。
    ドイツ再統一の過程でゴルバチョフが、ソ連のNATOへ加盟を希望して断られているけど、マーシャル・プランの時にはアメリカ側から、スターリンに参加の打診を行っているんだよな。もちろん、協力を拒むことを予め期待しての打診であるけど、皮肉な話だ。

    トルーマンやマーシャルにとって頭が痛いのは、前のルースベルトがソ連側に有利な約束をしていた経緯があり、欧州を2つの敵対する陣営に分断した犯人に仕立てられることを殊の外恐れていた。
    スターリンの立場にたてば、自らに有利な約束はあるは、敵対する政権内部にはスパイが入り込んでいて手の内は丸わかりで、フランスとイギリスも当初はソ連との合意に至る扉が閉ざされてしまう可能性を恐れているしで、欧州の混乱を長引かせて時を稼げばドイツはまるまる自分のものだと考えていたぐらいだから、分断のカーテンを下ろしたのはむしろアメリカ。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/535496

  • 東2法経図・6F開架:319.5A/St3m//K

  •  欧州の共産主義化や全体主義化、社会主義化を阻止するため、米国は主導しマーシャル・プランを通じて欧州に資本供与することで欧州内の商業的なつながりを復活させた。今ではピンとこないが、各国の国内で共産党が草の根的な活動していた時代である。そして、西ドイツと欧州各国の繋がりを強化し西ドイツの市場経済を発展させた。
     一方、市場経済の発展を背景に、ドイツをめぐる米国とソ連の綱引きはNATO同盟とワルシャワ条約機構の対立となるが、東西ドイツの統一に向かう時代の流れがつくられ、1989年のベルリンの壁の崩壊、そしてワルシャワ条約機構の解体、そしてソ連の崩壊へとつながった。
     冷戦時の緊張感がよく伝わってくる読み応えのある一冊だ。
     そして…
     米国とソ連(ロシア)の対立が、2001年9月11日のイスラーム過激派テロリスト集団アルカイダによる米国同時多発テロ事件につながり、経済では「新自由主義(ネオリベラリズム)」が貧富の格差を生む一方で、欧州経済の弱体化を招き、貧富の格差を背景に宗教や民族の対立による難民やテロの問題が生じている。
     そして、本書で中心的な役割を担っていた国が今では自国Firstと声高に叫び、次の覇権を狙う大国は、世界の各大陸で金を貸し首が回らなくなると利権を手に入れ、貪欲に自国の経済発展を進めている。
     まったくイヤな御時世だが、いつの時代も時世とはそんなものなのだろう。

  •  関係国間の交渉や米国内の政策決定過程が細かく書かれており、後の歴史を知っている現在の視点ではない、同時代的な視点を疑似体験できる。戦後欧州では、東西両陣営の対立に一直線に向かっていったわけではなかった。
     当初、マーシャル・プラン構想へのソ連の対応の迷い。弱い独から強い独政策への転換。独は占領下で外交交渉の当事者にはなり得なかったにもかかわらず、大国としての存在感。ポーランドとチェコの揺らぎ、後者の共産化強行。仏伊での共産党の一定の存在感と挫折。これらを経て、米英ソ+仏の体制から冷戦へと次第に変わっていく。トルーマン・ドクトリン、マーシャル・プランの構想と法制化、ベルリン封鎖開始の1947-48年が転換点だったように見える。そして49年の東西ドイツ成立とNATOで完成されたようだ。
     また、当時の米で、議会でも世論でもマーシャル・プランがかなりの支持を受けていたことは、「世界の警察官」から降りかけている現在の姿をつい前提にしているためか、意外に思えた。
     マーシャル・プランの効果については、仏伊の経済政策への効果は限定的だったなど著者は留保をつけ、章の表題を「成功?」とする。しかし総じて、冷戦を激化させたが、冷戦はどうせ避けられなかったのだから、封じ込めにより武力紛争を避け欧州の安定を促した、と評価しているようだ。また別の観点から、欧州への軍事的関与から米を解放することが目的だったが、最終的にはNATOを通じ深く長く関わる結果となった、ともしている。

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著者プロフィール

米外交問題評議会シニア・フェロー、国際経済学ディレクター。学術誌『International Finance』創刊者兼編集者。オックスフォード大学ナッフィールド・カレッジのロイズ保険組合300周年研究基金の特別研究員の後、1992年より英王立国際問題研究所国際経済プログラムのディレクターを務め、1999年から上記評議会で現職。邦訳『ブレトンウッズの闘い』(小坂恵理訳、日本経済新聞出版社、2014)『マーシャル・プラン』(小坂恵理訳、みすず書房、2020)。

「2020年 『マーシャル・プラン 新世界秩序の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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