文学は実学である

著者 :
  • みすず書房
4.18
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本棚登録 : 107
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089452

作品紹介・あらすじ

ことばと世間、文学と出版、人間と社会に、休みなく目を凝らし耳を澄ませてきた現代詩作家による28年間のベスト・エッセイズ。「本について書く日本語の使い手の中で、間違いなく最高のひとり」(高橋源一郎)「同時代に荒川洋治という書き手をもつのは、この上なく幸せなことなのだ」(池内紀)など、高い評価と数々の受賞、そして熱心な読者の要望に応えて、未刊エッセイを含む全86編を瀟洒な造本で刊行する。

感想・レビュー・書評

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  • 荒川さんの文は優しい。1997年から2019年までの雑誌、新聞のこのエッセイ集は何度でも読みたい。

  • 86のエッセイ。
    書評あり、雑記のようなもの、文章について、文学について、詩歌について。
    何気にない日常を綴ったものには、温かさとユーモア。
    作品や文学についてのものには、精緻な分析とシビアな批評。

  • 選書企画2020 「図書館に置いて欲しい本 書いて!貼って!」 で選書した図書
    【配架場所】 図・2F開架 
    【請求記号】 914.6||AR
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/450844

  • 《以下、長談義の心得をまとめてみよう。
     ①話すこと聞くこと以外は何もしない。時計も見ない。自然な流れにまかせるのが一番。
     ②いまこの時間に、この日本で、だれ一人その話をしていないような話題をまじえるようにする。みんながするような話は、ありきたりで、先が見えて、つまらない。実に退屈なものである。
     ③本でもなんでもいいからときどき「物」を出し、さわったり、めくったりすると、たしかなものになって、話が締まる。
     ④二人で話すこと。三人もいると、だれかが気をつかう。三人は他人のはじまりなのである。
     ⑤終わったら熟睡。めざめたら静かに、お茶をのむ。胸にひめたものをそのままに、新たな一日へと飛び立つのである。
    「また話そう」
    「そうしましょう」》(p.14-15)

    《料理は風の便りでなくてはならない。》(p.34)

    《五〇歳を過ぎた。するべきことはした。あとはできることをしたい。それも、またぼくはこうするなと、あらかじめわかるものがいい。こんなふうな習慣がひとつあって、光っていれば、急に変なものがやってこない感じがするのだ。》(p.141)

  • タイトルに惹かれて読んでみたのだが、「文学は実学である」は短いけど勇気づけられる力強い文章だった。
    「それくらいの激しい力が文学にはある。読む人の現実を、生活を一変させるのだ。文学は現実的なもの、強力な『実』の世界なのだ。文学を『虚』学とみるところに、大きなあやまりがある。」
    文学に対するこの人の確信が、この人の書く文章の世界をくまなく照らし、平明で芯の通ったものにしている。時には自分の書評に対する反論にまた反論したりしているけれど、ねちねちせずすぱっと切って捨てるような明快さがあって嫌な感じがしなかった。
    「すきまのある家」と「場所の歳月」が良かった。私は瀬戸内寂聴読んだことがないけれど、ここで書かれているような「実りのない文章」で終わる作品は好きだ。読者へ向かって話してくれていた著者がふとそっぽを向いて、人と向き合っているという意識が抜けて心をどこか遠くへ向けるような瞬間。こちらは置いていかれるように思いながら、無防備なその横顔に見入るという感じ。むしろそういうところでこそ著者が確かに私の向かいに座っているような感覚がするのは不思議なものだ。

  • いい読書の時間が過ごせた。1、2編意見が合わないものがあったが、それぞれ感じ入る文章ばかりで、抜き書きもたくさんしてしまった。そして読みたい本もたくさんできてしまった。

    "名前も知らないし、つながりもないのに、心が通い合い、いっときを過ごす。太い線でつながる、人との生活や触れ合い、出会いだけで一日が成り立つのではない。そんなことをあらためて、少しだが思い出すことになる。
     でも、試合は九回で終わってしまった。みんな球場から出て行く。気がつくと、おじさんもいない。春の夜だけが残っていた。" 19ページ
    2編目の「春の声」でグッと心を掴まれた。

    詩人の自作朗読に対する考えが興味深かった。今、割と普通に行われていると思うが、今もお考えに変わりはないのか。
    文学者の国際交流に関しても辛辣だ。こんなこと言う人、他にいるのだろうか。
    「陽気な文章」も面白かった。これが書かれた頃とは違い、今は作家や詩人がSNSで発信されることが非常に多い。自画自賛と言えば自画自賛も多い。今もお考えに変わりはないのか。


    「会わないこと」とても好き。

    茨木のり子「倚りかからず」についての「いつまでも『いい詩集』」は怖かった。改めて荒川さんのお顔をネットで確かめた(なぜ?)

    "はじめはともかく、最後は自分の頭で考え、考えただけではなく人々のために実行し、犠牲になった人たちの生き方にぼくは打たれるのだ。自分にはできないことなので、あこがれるのだ。いろんな理不尽なことが身のまわりに、社会にあるのに、ほとんどの場合、黙って眺めてぼくは生きている。何もしない。そんな自分であることを知っておくため、たしかめておくために蜂起した人たちのことを、その人たちの思いを心に残しておきたいのかもしれない。" 「秩父」127ページ

    "50歳を過ぎた。するべきことはした。あとはできることをしたい。それも、またぼくはこうするなと、あらかじめわかるものがいい。こんなふうな習慣がひとつあって、光っていれば、急に変なものがやってこない感じがするのだ。" 「クリームドーナツ」141ページ

    "人は「私」のように激しい破壊的な恋もできないし、出家もできない。その物語を明るく率直に人前で語ることもできない。誰もが「私」のような人にはなれない。なりたくてもなれない。だから「私」はおそらく多くの人にとって夢のような人物なのである。"
    158ページ
    瀬戸内寂聴「場所」読みたいと思っているのに全然読めてない。読みたい。

    「ドン・キホーテ」について書かれた「釘」
    "誰もが幻想をかかえて生きる。あの人のために生きよう、これがだいじと人はそれぞれれ何かを釘のように打ち付けて、生きる。だがそれらはすべてその人以外の人にとっては夢まぼろし。(略)
     セルバンテスは四〇〇年たっても、それ以上たっても人間を「とらえる」ものの正体をさきがけて書き切った。人の心を支配するものはすべてまぼろしであること。だがそうして生きていくしかないこと。幻想の谷間で生きる人間の姿はすみからすみまで、その光も影さえもほろにがい。" 230ページ

    「野菊の墓」について書かれた「おくれる涙」
    "人は何かが起こらないかぎり気づかない。生きているということは、とりかえしがつかないことをつづけているだけだということがあきらかになる。" 244ページ


    黒島伝治、恥ずかしながら名前も知らなかった。読んでみたい。


    「散文」
    "たとえば詩では「谷、三」と書く。あるいは、情景にはないのに「紫」と、突然書くこともある。これが詩である。個人が感じたものをそのまま表わす。他人には、なんのことかわからない。意味が通らないので、きもちわるい。だが詩は、ただ伝えるために書かれるものではない。個人の感じたものを、どこまでも保とうとする為に、そのような表現をとるのだ。詩は、標準的な表現をしないために、異様な、個人の匂いがそこにたちこめる。他人の存在や体臭をいとういまの人にはうっとうしい。詩のことばは異常なものとみなされ、敬遠される。では散文は、あやしくはないのか。「谷間の道を、三人の村人が通る」というように知覚しなかったのに、誰ひとりそう知覚しなかったのに、そのような文章が機械的に書かれてしまうということもありうる。それは不自然であり、こわいことだし、おそろしいことである。詩は、それがたとえ「異常」とみえるものでも、そう感じた人が確実にそこにいる。その一点では偽りはない。個人の事実に即したものである。" 287ページ

  • 詩人の目。

  • 八六編もあり楽しめる。
    『黙読の山』所収のものは既読。
    二〇二〇年のものも含まれていた。

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著者プロフィール

現代詩作家。1949年4月18日、福井県三国町生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業。1980年より著作に専念。1996年より肩書を、現代詩作家(みずからの造語)とする。詩集に『水駅』(書紀書林・第26回H氏賞)、『あたらしいぞわたしは』(気争社)、『渡世』(筑摩書房・第28回高見順賞)、『空中の茱萸』(思潮社・第51回読売文学賞)、『心理』(みすず書房・第13回萩原朔太郎賞)、『北山十八間戸』(気争社・第8回鮎川信夫賞)、評論・エッセイ集に『忘れられる過去』(みすず書房・第20回講談社エッセイ賞)、『文芸時評という感想』(四月社・第5回小林秀雄賞)、『詩とことば』(岩波現代文庫)、『文学のことば』(岩波書店)、『過去をもつ人』(みすず書房・第70回毎日出版文化賞書評賞)など。初のベスト・エッセイ集『文学は実学である』(みすず書房)2020年刊。2019年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員。

「2020年 『文学は実学である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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