文学は実学である

  • みすず書房 (2020年10月5日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089452

作品紹介・あらすじ

1992年から2020年まで28年間に発表されたエッセイより86編を精選。『夜のある町で』『忘れられる過去』『世に出ないことば』『黙読の山』からの諸編に加え、同時期の名編と単行本未収録の追悼「加藤典洋さんの文章」など近作8編を収める。ことばと世間、文学と社会、出版と時世に、目を凝らし耳を澄ませてきた荒川洋治。その文章世界がこの一冊に凝縮している。
「いま本を読み、本について書く日本語の使い手の中で、間違いなく最高のひとり」(高橋源一郎)、「同時代に荒川洋治という書き手をもつのは、この上なく幸せなことなのだ」(池内紀)など評価はじつに高い。
困難な時代であればあるほど、文学の実力は認められる。「これまで「実学」と思われていたものが、実学として「あやしげな」ものになっていること、人間をくるわせるものになってきたことを思えば、文学の立場は見えてくるはずだ。」(本書「文学は実学である」より)。初のベスト・エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • よかった。
    タイトルは小難しそうな雰囲気ですがエッセイ本です。

    そのエッセイのリズムが小気味よく、内容も楽しい。

    そこで、そうか、作者が詩人だからかと納得。

    書籍の紹介と批評も多くあり。
    それがすこし難しいこと言ってましたが読書欲を刺激する内容でして、読みたい本が増えました。

    これ一冊あれば次に手に取る本に当分は困らない。

    ただ少し。詩人に手厳しい、現代詩に厳しいように思いました(^^;

    図書館で借りた本だったのだけれど、読み返したい内容が多かったので購入しました。

  • 『文学は実学である』というインパクトの強い表紙に惹かれて手に取ったらエッセイでした。こんなに純度の高い文学を読めて、とても幸せな時間だったと感じます☺︎
    人生を豊かに広く深く生きていくために、それを文才に恵まれた夏目漱石や三島由紀夫などの有名文学作家たちが、本にして記してくれているのですね。
    これを読んで知った人生と、知らないで生きた人生だとおそらく生きていく中で、見える景色も違うと思います。

    虚学ではなく、文学は実学として捉えるエッセイに心を震わされました。

    他にも『メール』というエッセイも好きでした。
    言葉、文章は表れ、そして消えていく。静かな文章のイメージがとっても素敵でした。

    読書が好きで、言葉や文学が大好きな人はこの本を読むと多幸感に溢れると思います。
    笑ったり日々の疲れを癒すようなエッセイとかではなく、これは本当の文学を感じられるエッセイだと思いました。読み終えたあと、もっと文学に触れたくなる、本を読みたくなります。

  • 骨のある本。ということは私にとっては難解、読むのに時間が掛かる本ということである。エッセイ風の身近に感じることはくだけて書いておられるのだが、いざ文学となれば力が入って硬く熱っぽく語られる。

    本の題にもなっている「文学は実学である」では、文学は、経済学、法律学、医学、工学などと同じように「実学」なのである。社会生活に実際に役立つものである。特に社会問題が、もっぱら人間の精神に起因する現在、文学は読む人の現実を、生活を一変させるもので、文学は現実的なもの、強力な「実学
    の世界であると。

    どうです、この肩に力が入った言い回し。私は今や、文学の文と学は離れたものとなり、学問と言った時点で乖離しているような気がしています。

    気軽に、そしてゆたかに生きるための一つのヒントぐらいの働きで、「本」や「読書」ましてや「文学」なんて、所詮受け手の私たち自身のこころもちが大事なんではと思いますな。

  • あるきたくなる

    現実で嫌なことがあった時にこの世界に逃げたい

    この本を読んでると、本を読むことって、驕り高ぶらずに、日々の中にある小さな嬉しいことを発見しやすくなる行為の思えてくる

    お休みの日にこの本を選んで読むと、次の週楽しくなるような

  • こんなに印象深いタイトルは、『打ちのめされるようなすごい本』以来だ。表題のエッセイにとても共感した。読んでよかった。「ペンギン旅館」も忘れられない。



  • みすず書房 荒川洋治 「 文学は実学である 」

    タイトルから受ける印象と異なり、軽い感じで読めるエッセイ選集


    あとがき「エッセイは虚構ではない。事実を大切にする〜でもわずかな余地がある。そこに楽しさと夢がひろがる」は なるほどと思う。エッセイの面白さは エピソードそのものより「わずかな余地」の言葉選びなのかもしれない




    表題「文学は実学である」は名文
    *この世をふかく、ゆたかに生きたい。そんな望みをもつ人になりかわって〜才覚に恵まれた人が鮮やかな文や鋭いことばを駆使して、ほんとうの現実を開示してみせる。それが文学のはたらきである

    *こうした作品を知ることと、知らないことでは人生がまるきりちがったものになる〜読む人の現実を、生活を一変させるのだ


    「五十歳を過ぎた。することはした。あとはできることをしたい」
    「自分というものをもって生きることよりも、それをもたないで、生きることのほうに しあわせがある」
    あたりは共感する


    「陽気な文章」
    どういう立場に立てばいいのか。何を書き、何をはぶいたら一般性のある話になるのか〜いろんな角度から自分の文章を見直す。単調にならないようにする


    「会わないこと」
    会わない状態のなかで、耐えているということは、相手もこちらも〜生きていることのしるしなのだ









  • 1992年から2020年までに発表されたエッセイより86篇が掲載されている。(背表紙より)
    新聞に紹介されていたので読んでみた。
    読了するのに約4か月くらいかかった。
    荒川洋治さんの他の作品は読んだことがない。
    このエッセイを読むと、荒川さんが短文、散文にとてもこだわっていることがよくわかる。詩人だから当たり前か。
    秀逸な短文がたくさん紹介されている。
    日本語を駆使して、短くてもよく伝わるような言葉で書かなければならない。
    ダイソー文学シリーズの紹介で掲載されていた、登場人物の紹介文とコラムはとても面白かった。

  • 人の物語と自分の物語が触れるとき感動する。著者はただ地名からさえも感動を拾おうとしている。
    経済や医学、科学、法律学が怪しげなものになってきた世の中だからこそ、文学の立ち位置が見えてくるはず。

  • 文章が簡潔で読みやすく、美しい。
    山谷の銀行の様子の表現に、街の雰囲気と優しさが見えた。

  • 荒川さんの文は優しい。1997年から2019年までの雑誌、新聞のこのエッセイ集は何度でも読みたい。

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著者プロフィール

荒川洋治
一九四九 (昭和二四) 年、福井県生まれ。現代詩作家。早稲田大学第一文学部文芸科を卒業。七五年の詩集『水駅』でH氏賞を受賞。『渡世』で高見順賞、『空中の茱萸』で読売文学賞、『心理』で萩原朔太郎賞、『北山十八間戸』で鮎川信夫賞、評論集『文芸時評という感想』で小林秀雄賞、『過去をもつ人』で毎日出版文化賞書評賞を受賞。エッセイ集に『文学は実学である』など。二〇〇五年、新潮創刊一〇〇周年記念『名短篇』の編集長をつとめた。一七年より、川端康成文学賞選考委員。一九年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員。

「2023年 『文庫の読書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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