患者の話は医師にどう聞こえるのか

  • みすず書房
3.90
  • (3)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 125
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089513

作品紹介・あらすじ

現代医学はハイテク機器に夢中だが、最大にして最良の診断ツールは医師と患者の会話だ。有史以来、会話がもっとも病気を発見してきたのだ。だが、患者が「しゃべった」ことと医師が「聞いた」ことは、どんなときでも、いともたやすく別のストーリーになりうる――。アメリカの内科医が心揺さぶるヒューマンストーリーを通じて、避けて通れぬ医師と患者のコミュニケーションの問題を検証する。

■著者略歴 ダニエル・オーフリ(Danielle Ofri, 1965-) ニューヨーク在住の内科医。アメリカ最古の公立病院・ベルビュー病院勤務。ニューヨーク大学医学部准教授。著書にIntensive Care: A Doctor’s Journey (2013)、Medicine in Translation: Journeys with My Patients (2010)、When Doctors Feel: How Emotions Affect the Practice of Medicine (2013 ; 『医師の感情――「平静の心」がゆれるとき』医学書院 2016)がある。New York Times紙やSlate Magazine誌で医療や医師と患者の関係について執筆を行うほか、医療機関初の文芸誌Bellevue Literary Reviewの編集長も務める。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NY在住の内科医による、医師と患者の間のコミュニケーションの問題を分析した1冊です。
    最近ではAIが活用された事例なんかも聞きますが、今の医療診断の中心に位置しているのは、依然として「医師と患者の会話」です。
    ただ、この会話というツールの難しさを実感させられたのが本著でした。こんなに簡単に使えるツールはないのに、なぜこうも難しいのか!

    自身の医療経験や取材を踏まえた16章は、比較的読みやすいトーンではあるのですが、医療という人命がかかった現場における余裕のなさや、その状況下で少しでも良いやり方を求める医師の職業倫理の高さ(と、その患者向かいでの理解されなさ)を感じ、ままならない重いテーマだとも感じました。

    本著によると、「患者には喋るだけ喋らせた方が良い、そんなに長くならないし、コミュニケーションミスも減る」ということで、基本的には医師は患者の話に傾聴すべきというスタンスなのですが、同時に日々の実務の中でそれを実現していくのがいかに難しいかというのも描かれています。
    個人的な印象としては、医師というと「ゴッドハンド」的な職人芸を連想して、傾聴してくれる存在とはなかなか思えないですが、治療効果を出すためには医師のコミュニケーション力は非常に重要なのだとか。
    本著ではそれを音楽に例えていて、「優れた音楽家たるために必要な技術的スキル」も大事だが、「即興で演奏する時に必要な(コミュニケーション)スキル」も、良い演奏を作るには重要、という表現はとても腑に落ちました。

    本著を読んでいて思い至ったこととして、医療とは全く関係のない業界で仕事をしている私ですが、バタバタしている時に、主題になかなか辿り着かない(と自分が感じるだけなのですが)話をされると、つい「つまりこういうコトですか?」と割って入ったりしているなぁと。。
    血の通ったコミュニケーションができる人間でありたいものです。

    ちなみに、本著の中に「おおざっぱにいえば、私の性格はB型なんです。教師に向いた性格ね。でも、糖尿病の場合はA型でないとだめなんです。」という記述があったんですが、アメリカでもB型って几帳面さに欠ける存在だと思われてるんでしょうかね。。
    翻訳については、訳者も医師と医療翻訳者のタッグということで読みやすかったです。

  • 本書は医師と患者のコミュニケーションの重要性を訴える本。著者の主張を一言で表せば「コミュニケーションは医療に役立つ」。その主張には3つの側面がある。①「医師が話を聞いてくれない」という患者にとって最大の不満が消えて医療について患者の満足度が高まる。②患者をよりよく理解することで誤った治療や不要な治療をせずに済む。その結果、医師にとって時間の節約になる。③訴訟が減る。

    薬の知識や手術の腕前などと比べてコミュニケーションが医療に果たす役割は過小評価されてきたと著者は言う。医学部でコミュニケーションスキルを専門的に学ぶことがないため、医師はコミュニケーションスキルを医療技術とは見ない。コミュニケーションが(たとえプラセボの一種だったとしても)効果的な医学的介入であることを示す研究は多いが、医師は「このような祖父とな研究結果を受け入れがたいと思っている」(106ページ)。

    著者によれば実際のところ、現状では医師と患者の間でコミュニケーションがうまくとれていない。その理由は色々だが、例えば①医師が患者の人種・性別・体型などに対して潜在的な偏見を抱いているため、コミュニケーションが阻害される。②診察時間の制約があって(時間の無駄と思える)コミュニケーションを医師がためらう。そもそも③医師も患者もコミュニケーションにギャップがあることに気づいていない。③についてレビュアーの頭に思い浮かんだのは蒟蒻問答という言葉だった。

    ではよりよりコミュニケーションを実現するために何が必要か。本書が重要性を強調するのが「傾聴」である。自分自身は口をつぐみ相手の話を聞く。「熱心に話を聞いてもらう」のは「驚くほど力のわいてくる経験」で、そんな相手とは「かかわりをもちつづけたいという気持ちになる」と著者は自身の経験から断言する。ただしこれは簡単なことではない。聞き手には聞く努力が求められる。実際、患者の話を「上手に」聞くことは「困難きわまりない技術の1つ」なのだ。

    本書の中で最も印象的だったのが、オランダでは(終末期にいる患者のみが対象であるものの)患者の話を聞くことが医療として認められているという事実である。傾聴の重要性が医療現場で広く認められていくことを願う。

    著者は現役の医師で、本書は医療現場でのコミュニケーションの重要性を論じている。多くの人は患者の立場で医師と接するだろうが、良き患者であるためにも本書の内容は有益だ。また一般的に言って良い人間関係を築くたえにコミュニケーションは欠かせない。その意味で本書は誰にとっても役に立つアドバイスに満ちている。幸いな事にコミュニケーションは改善が可能だ。「コミュニケーションは習得が可能な個別の技術に分解できる」(241ページ)と主張する研究を著者は引く。受け答えのなかで言葉遣いや言葉のえらび方を工夫したり、心の持ちようを変えたりすることも大切だ。本書から得られるものは多い。

  • たしか中野徹さんだったと思うけど、どこかの書評で取り上げていたのを見かけて、気になっていたもの。図書館で試しに借りてみた。最初のうち、医師・患者間の感じ方の違いを、いくつか実例を挙げて解説している部分はそれなりに興味深く読めた。そのあと、具体的な研究に入ってからがちょっとしんどくて…ギブアップしちゃいました。あらためて手に取ることは、よほどないかな。

  • (背表紙より引用)
    患者が「しゃべった」ことと医師が「聞いた」ことは、どんなときも、いともたやすく別のストーリーになる可能性を秘めている。さらには医師と患者双方の固定観念や無意識の偏見、共有していない問題なども加わり、コミュニケーションのミスはすぐに医療ミスへとつながっていくこともありうるのだ。
    アメリカの内科医が心を揺さぶるヒューマンストーリーを通して、避けては通れぬ医師と患者のコミュニケーションの問題を徹底分析する。

  • 2月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    http://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003540459

  • 2階書架 : W 062/OFR : 3410165679
    https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/webopac/BB50291875

  • RIAS

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1965-。ニューヨーク在住の内科医。アメリカ最古の公立病院・ベルビュー病院勤務。ニューヨーク大学医学部准教授。著書にMedicine in Translation: Journeys with My Patients (2010)、Intensive Care: A Doctor's Journey (2013)、 When Doctors Feel: How Emotions Affect the Practice of Medicine (2013 ; 『医師の感情』医学書院 2016)、What Patients Say, What Doctors Hear (2017 ; 『患者の話は医師にどう聞こえるのか』みすず書房 2020)、When We Do Harm: A Doctor Confronts Medical Error (2020) がある。New York Times紙やSlate Magazine誌で医療や医師と患者の関係について執筆を行うほか、医療機関初の文芸誌Bellevue Literary Reviewの編集長も務める。

「2020年 『患者の話は医師にどう聞こえるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダニエル・オーフリの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
トマ・ピケティ
ヴィクトール・E...
伊藤 亜紗
J・モーティマー...
劉 慈欣
カルロ・ロヴェッ...
有効な右矢印 無効な右矢印

患者の話は医師にどう聞こえるのかを本棚に登録しているひと

ツイートする
×