感情史の始まり

  • みすず書房
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本棚登録 : 199
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089537

作品紹介・あらすじ

最近目にすることの多い「感情史」。そのすべてを論じた最も定評ある基本書である。感情は生命科学で言われるように普遍的なものか、それとも人類学者たちが示してきたように、時代と地域と文化でそれぞれ異なるものなのか。著者はその二つの見方を架橋しながら、感情のグランドセオリーを展開し、歴史学における感情の扱い方の手法と重要性を説く。分野を超えて新しい人文学の可能性を開く書。

感想・レビュー・書評

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  • 近年注目される感情史。辞書のようなぶ厚さと細かい文字に少し怯むが、読み通す価値は十分にある。

    著者プランパーは、感情史のターニングポイントが9.11同時多発テロであることを強調する。そして、感情の研究には大きく分けて、社会構築主義と普遍主義、2つの解釈があると指摘する。感情は文化、社会により規定されるとする社会構築主義的解釈は、人類学のフィールドワークにより主導されてきた。他方、感情は人類に共通のものだとする普遍主義的解釈は、心理学、認知科学に基づく。

    歴史家であるプランパーは、社会構築主義にやや偏りがちながら、普遍主義の価値も認め、両者を統合した先から新たな感情史の展開を試みる。

    人文科学が神経科学の知見を取り入れる傾向は今後も続くことは明らかだろう。ただしプランパーは、日本でも知られるポール・エクマンやアントニオ・ダマシオを痛烈に批判しつつ、人文科学者が流行りにのせられて、玉石混交の一般向け概説書を1〜2冊読んだだけで、胡散臭い「科学的根拠」を引用する危険性を述べる。これは耳の痛い研究者もいそうな気もする。

    本書は感情史の新たな展望を示す待望の書である。これまでの流れも整理できる、ありがたい一冊。

  • 歴史を研究するときには、感情を考えなきゃならんらしい。少なくとも取り扱うことで得られる洞察は増える。
    言われてみればその通りで、歴史上の人物にも私たちと同じように、感情があったはず。
    資料には残らない感情をどうやって汲み上げようかって話として、一般に使われている2種類の方法が分析されてる。現代に生きる自分達と同じ思考回路を持つと考える普遍主義に偏るのは、さすがに傲慢。単純化された神経科学を軽々しく多用することも問題。一方で、感情は文化によって作られると考えて、当時の思考回路を組み立て分析する社会構築主義だけでも、問題は解決しない。
    難しかったけど、こんなところでしょうか。特に今後の展開の部分は分かりませんでした。
    どちらが良いって訳ではなく、結局はバランスです。世の中の大抵の問題に、単純な最適解はありません。

  • 【内容紹介】感情とは、感情史とは何か。近年、「感情」にアクセントを置いて学問のあり方を見直す動向が高まっている。「感情心理学」「感情の社会学」「感情の政治学」云々。歴史学の分野では、かつてリュシアン・フェーヴルが感情研究を提唱していたが、21世紀に入ってようやくさまざまな事件の理解や歴史文書の読み方に「感情」という新たな視点が導入されるようになった。動物やヒューマノイド機械にも感情はあるのか、感情は私たちの身体の外側に由来するのか内側に存在するのか、そして、感情は歴史を有するのか、そうだとしたらどのような史料から読み取れるのか。
    このような基本的な問いを軸に、本書は感情史研究の過去・現在・未来を概観する。なかでも本書の特徴は、感情をめぐる社会構築主義と普遍主義という二つの考え方に正面から立ち向かう点だ。人間の感情は、人類学者たちが示してきたように、時代と地域と文化でそれぞれ異なる社会構築主義的なものなのか、それとも、脳科学者はじめ生命科学の領域で言われるように人類共通の普遍的なものなのか。著者はその二つの見方を架橋しながら、感情のあり方のグランドセオリーを展開し、歴史学における感情の扱い方の手法とその重要性を説く。哲学から図像分析まで、ジャンルを超えて縦横に論じる著者の叙述はじつに刺激的だ。
    日本でもようやく注目されてきた感情史についての最も定評ある基本書であり、新しい人文学の可能性をひらく書でもある。

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000947435

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00611741

    感情とは、感情史とは何か。近年、「感情」にアクセントを置いて学問のあり方を見直す動向が高まっている。「感情心理学」「感情の社会学」「感情の政治学」云々。歴史学の分野では、かつてリュシアン・フェーヴルが感情研究を提唱していたが、21世紀に入ってようやくさまざまな事件の理解や歴史文書の読み方に「感情」という新たな視点が導入されるようになった。動物やヒューマノイド機械にも感情はあるのか、感情は私たちの身体の外側に由来するのか内側に存在するのか、そして、感情は歴史を有するのか、そうだとしたらどのような史料から読み取れるのか。

    このような基本的な問いを軸に、本書は感情史研究の過去・現在・未来を概観する。なかでも本書の特徴は、感情をめぐる社会構築主義と普遍主義という二つの考え方に正面から立ち向かう点だ。人間の感情は、人類学者たちが示してきたように、時代と地域と文化でそれぞれ異なる社会構築主義的なものなのか、それとも、脳科学者はじめ生命科学の領域で言われるように人類共通の普遍的なものなのか。著者はその二つの見方を架橋しながら、感情のあり方のグランドセオリーを展開し、歴史学における感情の扱い方の手法とその重要性を説く。哲学から図像分析まで、ジャンルを超えて縦横に論じる著者の叙述はじつに刺激的だ。

    日本でもようやく注目されてきた感情史についての最も定評ある基本書であり、新しい人文学の可能性をひらく書でもある。(出版社HPより)

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001179190

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著者プロフィール

1970年生まれのドイツの歴史家。ギムナジウム卒業後に渡米し、1992年にブランダイス大学卒業、2001年にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。その後ドイツに戻り、テュービンゲン大学やベルリンのマックス・プランク人間形成研究所で教育や研究に従事。2012年からロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの歴史学教授、2018年からはケンブリッジ大学出版会の初歩叢書(エレメンツ・シリーズ)「感情と感覚の歴史」の編集主幹も務める。単著には、『感情史の始まり』(2012、森田直子監訳、みすず書房 2020年)のほか、博士論文をもとにした英語の『スターリン崇拝─―権力の魔力についての考察』(2012)、ドイツ語の新著『新しい私たち─―なぜ移民はその一部なのか ドイツ人のもう一つの歴史』(2019)、編著書には、英語による『恐怖─―学問分野を超えて』(2012)ほか、ドイツ語、ロシア語によるものなど。既存の邦訳に「恐怖─―20世紀初頭のロシア軍事心理学における兵士と感情」(西山暁義訳『思想』1132号、2018年)。

「2020年 『感情史の始まり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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