- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622089704
作品紹介・あらすじ
日本ではアーカイブが必須の社会基盤とみなされていないのではないか。西洋社会と比較しつつ、これからの図書館が向かうべき道を照らす。
感想・レビュー・書評
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人間が「知」という形のないものを、いかに蓄積してきたか。
こんな問いを立てたとき、わかりやすい答え方は、そのための「ソフトウェア」、つまり組織や機関の歴史を探っていくことだろう。言い換えれば、図書館や文書館の歴史を辿っていくことである。
しかし、本書はそこを本質とみずに、組織や機関を支える「ハードウェア」、つまり「アーカイブの思想」の歴史に注目する。具体的には、西洋における「ロゴス」と「パイデイア」の脈絡である。数多くの研究成果に裏付けられた著者の広汎な知見に裏付けられて、導き出される「アーカイブの思想」は、ある種の迫力をもって読み手に迫ってきたように思う。 -
西欧において「知」と併走してきた図書館やアーカイブにまつわる思想を分析したのち、それと比較するかたちで日本における「知」の在り方について検討した書物。
前半部は西欧の知性史として、古代から現代にいたるまでの知の伝統について「ロゴス」と「パイデイア」をキーとしながらその基盤および変遷を駆け足ながらも幅広く辿る。そこに見いだされたアーカイブをめぐる思想をもとに、後半部では日本に場を移し、西欧と対照的に知的インフラを重視しなかった近代以降のこの列島における「知」の歪みについて厳しく言及していく。
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図書館情報学のお話
レガシーとしての記録
読書メモもこの考え方で蓄積するといいのかもしれない。
“ここでアーカイブというのは、後から振り返るために知を蓄積して利用できるようにする仕組みないしそうしてできた利用可能な知の蓄積のこと
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4月から休日を使って読み始め、GWで一気に読んだ。
抜群に面白かった。
この著作によれば、図書館の初発はやはり学術図書館、ということになるだろう。
それが「知」というものが、社会構成員に共有されるため(あるいは「されることになって」)公共図書館というものが生まれるという系譜をたどるのだろうと思う。第6講「知の公共性と協同性」はそこへ向かうパートだったと思うのだが、本著作ではそこまでの展開はなかったと思う。もともと本著作ではそこまでは意識されていなかったのかもしれない。
にしても、この内容が大学生を相手にした授業向けに書かれたということだが、20歳前後の若者は、これを咀嚼することができたのだろうか? 読む(享受する)側にも、相当の教養が求められると思う。
が、この著者でなければ書けない著作だと思うし、構成としても索引がしっかりしていること、参考文献が豊富に示されていることがありがたかった。
西洋の知的系譜に疎い私は、最初の「パイデイア」とは何なのか?というレベルであったが、読み進めるうちに、わからないところは索引からそれが書かれている場所へ誘導され、大変救われた。