アーカイブの思想――言葉を知に変える仕組み

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  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089704

作品紹介・あらすじ

日本ではアーカイブが必須の社会基盤とみなされていないのではないか。西洋社会と比較しつつ、これからの図書館が向かうべき道を照らす。

感想・レビュー・書評

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  • 「これからの図書館が向かうべき道を照らす。」ですって、、、

    アーカイブの思想 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08970/

  • アーカイブ 知を蓄積して活かす  図書館の役割
    arch- 権力の源泉
    アメリカ国立公文書館 独立宣言、合衆国憲法、権利章典
    大統領図書館 歴代大統領の執務記録や公文書
     日本で外国から入る知を流通させるには出版市場の活性化、図書館ではない
     日本古来=ひらがな +中国文化=漢字 +欧米文化=カタカナ、アルファベット

    ロゴス=秩序や法則  プラトン:著書無き 師ソクラテスとの問答を記録
    パイディア=よき人生を全うするための知≒教養  アリストテレスが展開 

    11世紀の十字軍遠征 
     より優れたイスラムアラビア文化に対比 アラビア数字 10進法
     古代ギリシアの哲学科学が復興 ルネサンスもアラブへ移入されたものの再翻訳
    17世紀 デカルト 新しい知の方法
    19世紀 資本主義経済

     書くという行為 平らなものに印をつける 人為的歴史的につくられたもの
     音声と文字が対応しやすい西洋語
     変換とういう間接的なひと手間ある中国語や日本語に違い

    活版印刷 統治言語ラテン語から俗語で読む聖書が配布 ルターの宗教改革へ
     17世紀中ごろ 各国語へ カトリックの国は19世紀後半に識字率が急上昇
     カトリックの修道院で学術活動としての図書室
     18世紀後半から図書館は国家の研究機関として教会と別に発足

    12世紀 黙読への転換 声を出して読むことは はなしことばの再現
     ユーグ「学習論」 記憶の道具へ 段落、ページの概念導入
     16世紀16世紀 書誌 書物の目録 アルファベット順、体系的  
    12世紀 大学や図書館設立 公衆へ
    1751年「百科全書」 ダランベール 体系知とディドロ 編集知 クロスレファレンス 
    18世紀 産業革命 知が産業資本へ
    19世紀後半 アメリカの大学 教育と研究の組み合わせ
     講義の拡張としての文献購読 そのための図書館
     言論表現の自由 広場での演説、劇、音楽

    欧米    構成主義 探求的教育 知は外部にあり リテラシーを駆使する力=能力
    中国~日本 系統主義 官僚採用試験の影響

    FRBR 国際図書館連盟IFLA 書誌レコードの機能要件 1997年 書誌の過程を記述
    IFLA LRM あらゆる知的コンテンツのメタデータ化 西洋近代主義の伝統
    NDC 日本十進分類法 1928年 

    明治維新 制度化された科学技術の導入 実利主義
     天皇制による祭政一致の体制  徳より出世
     西洋は近代国家の前に大学存在し 学問の自由
     
     知の在り方を欧米に求め、国内に配布
     知の基盤の人文主義的なロゴスとパイディアは移転せず
     欧米の倫理と宗教を天皇制で方法化
     書物に書かれていることを著者の意図通りに読みとる受動的な読者
     カノン(正典)としての万葉集 明治中期に近代教育の手段として使用 
     アーカイブを参照しながら自らの考え方を形成するタイプの知は形成されない

    日本独自のロゴス 
     相互主義、マルチメディア性、書き言葉と話しことばのギャップ

    未解決なデータ利用
     個人や組織のデータを機関や研究者が個別管理集計し外部公開、論文化
     →いつの間にか収集、蓄積され活用されるビッグデータになる時代へ
      知の連動 ネット社会では柔軟なものを要求される

  • 人間が「知」という形のないものを、いかに蓄積してきたか。

    こんな問いを立てたとき、わかりやすい答え方は、そのための「ソフトウェア」、つまり組織や機関の歴史を探っていくことだろう。言い換えれば、図書館や文書館の歴史を辿っていくことである。

    しかし、本書はそこを本質とみずに、組織や機関を支える「ハードウェア」、つまり「アーカイブの思想」の歴史に注目する。具体的には、西洋における「ロゴス」と「パイデイア」の脈絡である。数多くの研究成果に裏付けられた著者の広汎な知見に裏付けられて、導き出される「アーカイブの思想」は、ある種の迫力をもって読み手に迫ってきたように思う。

  •  西欧において「知」と併走してきた図書館やアーカイブにまつわる思想を分析したのち、それと比較するかたちで日本における「知」の在り方について検討した書物。
     前半部は西欧の知性史として、古代から現代にいたるまでの知の伝統について「ロゴス」と「パイデイア」をキーとしながらその基盤および変遷を駆け足ながらも幅広く辿る。そこに見いだされたアーカイブをめぐる思想をもとに、後半部では日本に場を移し、西欧と対照的に知的インフラを重視しなかった近代以降のこの列島における「知」の歪みについて厳しく言及していく。
     

  • 図書館情報学のお話

    レガシーとしての記録
    読書メモもこの考え方で蓄積するといいのかもしれない。

    “ここでアーカイブというのは、後から振り返るために知を蓄積して利用できるようにする仕組みないしそうしてできた利用可能な知の蓄積のこと
    9

  • ふむ

  • 4月から休日を使って読み始め、GWで一気に読んだ。
    抜群に面白かった。
    この著作によれば、図書館の初発はやはり学術図書館、ということになるだろう。
    それが「知」というものが、社会構成員に共有されるため(あるいは「されることになって」)公共図書館というものが生まれるという系譜をたどるのだろうと思う。第6講「知の公共性と協同性」はそこへ向かうパートだったと思うのだが、本著作ではそこまでの展開はなかったと思う。もともと本著作ではそこまでは意識されていなかったのかもしれない。

    にしても、この内容が大学生を相手にした授業向けに書かれたということだが、20歳前後の若者は、これを咀嚼することができたのだろうか? 読む(享受する)側にも、相当の教養が求められると思う。
    が、この著者でなければ書けない著作だと思うし、構成としても索引がしっかりしていること、参考文献が豊富に示されていることがありがたかった。
    西洋の知的系譜に疎い私は、最初の「パイデイア」とは何なのか?というレベルであったが、読み進めるうちに、わからないところは索引からそれが書かれている場所へ誘導され、大変救われた。

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授/東京大学名誉教授

「2019年 『教育改革のための学校図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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