数学に魅せられて、科学を見失う

  • みすず書房
3.50
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本棚登録 : 120
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089810

作品紹介・あらすじ

◆物理学の基盤的領域では30年以上も、既存の理論を超えようとして失敗し続けてきたと著者は言う。実験で検証されないまま理論が乱立する時代が、すでに長きに渡っている。それら理論の正当性の拠り所とされてきたのは、数学的な「美しさ」や「自然さ」だが、なぜ多くの物理学者がこうした基準を信奉するのか? 革新的な理論の美が、前世紀に成功をもたらした美の延長上にあると考える根拠はどこにあるのか? そして、超対称性、余剰次元の物理、暗黒物質の粒子、多宇宙……等々も、その信念がはらむ錯覚の産物だとしたら?
◆研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿である。「誰もバラ色の人生なんて約束しませんでしたよ。これはリスクのある仕事なのです」(ニマ・アルカニ=ハメド)、「気がかりになりはじめましたよ、確かに。たやすいことだろうなんて思ったことは一度もありませんが」(フランク・ウィルチェック)
◆著者の提案する処方箋は、前提となっている部分を見つめ直すこと、あくまで観測事実に導かれること、それに、狭く閉じた産業の体になりつつあるこの分野の風通しをよくすることだ。しかし、争点はいまだその手前にある。物理学は「数学の美しさのなかで道を見失って」いるのだろうか? 本書が探針を投じる。

感想・レビュー・書評

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  • 美という基準の在り方について、懊悩している様子を読まされる。厳格さのイメージがあった物理学だけど、実情はそういうわけでもないみたい。

  • 読了。科学者による現在の科学的手法への批判、特にバイアスについて語られていた。自分のような部外者の科学解説書好きではなく、科学者に向けて書かれているのだろう。

  • 現状の物理学のコミュニティは、ある意味では不健全な状態にあると言える。検証不可能なスケールの理論は指導原理を美しさに求め、パラメータの精密な調整を嫌うかと思えば人間原理によって目を逸らし、流行りに飛びつき目先の同僚の評価を気にする。それぞれの選択は大局的に見れば本当にベストな科学的進歩の方法であるとは言い切れない。物理学者は、それぞれがもう少し広い視野で学問に臨むべきである――大まかな中身はこんなところでしょうか。
    主張をつぶさに理解するのは非常に難しいと感じました。ともすれば物理学者が視野狭窄に陥った的外れな行動ばかりの人種だと勘違いされかねません。この本は単なる物理学者批判の本ではないように思えます。筆者のホッセンフェルダーも物理学者ですから、彼らに選択肢がほとんどないことを分かっています。筆者は物理学者が盲信に陥らないよう警告すべくこの本を書いたわけですが、その立場は非常に中立的です。

  • ・社会的バイアス、認知バイアスについて知り、予防する。

  • タイトルは科学となっているが、物理学、それもほとんど素粒子物理学についての記述である。原題はちゃんとPHYSICSとなっている。物理学の一ファンとしての感想。とくに素粒子を研究している物理学者たちはあせっているようだ。多額の税金をつぎ込んで、大型のプロジェクトで実験を進めているが、思わしい結果は出てこない。理論通りに行かない。もっとエネルギーを大きくしないといけない。もっとお金をつぎ込まないといけない。ここまで進めてきたのだ。ここで引き下がるわけにはいかない。どこかの国のスポーツの祭典と同じ構造だ。人間が抱えるさまざまなバイアス。それが必ずしも悪いとは思はないが、気をつけないといけない。「物理学は数学ではない。物理学は、自然を記述すべき数学を正しく選択する学問なのである。」本当だろうか。すでにある数学から選択するというのではなく、自然を記述するために適切な数学を作っているとは考えられないだろうか。どうして、自然は数学で記述できるのか。それは、数学をそういうふうに作り上げてきたからなのではないのか。というか、物理学と数学はそれぞれ影響し合いながら進展してきたと考えればいいのか。ところで、著者は女性のようだ。どうも私にも強いジェンダー・バイアスがはたらいているみたいだ。ずっと著者は男性と思い込んでいたので、会話文の語尾でときどき女っぽい表現があり、違和感があった(ここにもバイアスがある)。私が所属した物理学科は40名中女性3名。数学科や化学科、生物学科は3割近く女性だったと思う。うらやましかった。もっとも地質鉱物学科(略してチコウ、なんと嫌なネーミング)は0名。そんなところで勝った負けたではないのだけれど。そういえば理学部の教官に女性はいたのだろうか。一般教養の哲学と心理学とフランス語くらいは女性だったと思うが。それから、どうでもいいことだが、インタビューの記述に当たって「」が使われているが、始めの「はあるのに、終わりの」がないところが多く、なんか気になった。こういう書き方がるのだろうか。それともう一つ、ワインバーグはまだ健在だったのか(88歳のようだなあ)。久々のみすず、図書館に購入してもらいました。その後、亡くなったという新聞報道があった。残念です。

  • 請求記号 421.5/H 95

  • 随分昔に「ストリング理論は科学か」という本を読みました。本書のテーマはこれと同じです。実験で検証できない物理学は科学ではないということです。一般相対性理論を構築したアインシュタイン、相対論的な量子力学を記述する方程式を考案したディラックは、物理学における数学的な美の重要性を強調しました。物理学は自然法則を解明する学問です。ある理論が正しいのか間違っているのかを判断するには実験するしかありません。しかし、現在の素粒子論で主流となっている超弦理論は実験による検証ができない学問です。実験による検証の代わりに使われているのが、数学的に美しいか否かという基準です。アインシュタインやディラックの時代はそれで成功したけれど、これからもそれで成功する根拠はありません。自然は「数学的な美」を選択するという考えは研究者の願望に過ぎません。というお話です。現在の一流の超弦理論研究者はこの本を読んでどんな感想を持つんだろうか。まあ読まないよね。これから理論物理を志すひとは物性や量子コンピュータのような実験で検証できる分野をおすすめします。

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著者プロフィール

フランクフルト高等研究所(FIAS、ドイツ)研究フェロー。重イオン研究所(GSI、ドイツ)でポストドク、アリゾナ大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(いずれもアメリカ)、ペリメーター理論物理学研究所(カナダ)にて研究フェロー、北欧理論物理学研究所(NORDITA、スウェーデン)助教授などを経て、2018年より現職。ブログ"BackReaction"http://backreaction.blogspot.com/が人気を集め、The New York Times、Scientific American、New Scientist、The Guardianをはじめとする雑誌にも寄稿している。Lost in Math: How Beauty Leads Physics Astray (2018)〔『数学に魅せられて、科学を見失う』吉田三知世訳、みすず書房〕が初の単著。

「2021年 『数学に魅せられて、科学を見失う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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