貿易戦争は階級闘争である――格差と対立の隠された構造

  • みすず書房
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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089995

作品紹介・あらすじ

2021年ライオネル・ゲルバー賞受賞

「貿易戦争は国家間の対立として表現されることが多いが、そうではない。これは主に、銀行や金融資産の所有者と一般世帯の対立、すなわち超富裕層とその他大勢の対立である」(まとめ)
今日の米中2国間に見られるような対立は、じつは各国の労働者・退職者を犠牲にした数十年来の富裕層優遇策に起因している――。貿易黒字国である中国やドイツの国内所得の不均衡がアメリカの巨額な貿易赤字を生み、衝突へと至る構造をあざやかに解明、解決のための道筋を示す。国内の格差が民主主義を毀損し、グローバル経済の繁栄や国際平和をも脅かすメカニズムは、日本にも重大な問いを突きつけている。
中国経済に精通した北京大学ビジネススクール教授と投資金融専門紙「バロンズ」経済論説員が贈る、「グローバル経済にかかわるすべての人が読むべき本」(ダニ・ロドリック)。
解説・青山直篤

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  • ●中国政府が労働組合のオルグを迫害し、不動産デベロッパーに、低金利の銀行ローンを提供すれば、アメリカの製造業で労働者が職を失う。ドイツ政府が福祉関連支出を削減し、その影響でドイツ企業が賃金を大幅にカットすれば、スペインで住宅バブルが発生する。 
    ●中国では一握りのエリートに国家の富が集中し、労働者は本来ならば得られるはずの収入を奪われた。そのため購買力が抑制され、生産に補助金が提供されても消費が増えず、経済に歪みが生じた。するとその影響で、製造品の過剰在庫が生じる一方、エリート層が株や債券や不動産の価格を釣り上げた結果、今度はグローバル経済に歪みが生じた。中国の過少消費が他の国で職を奪い、資産価値の高騰がにわか好景気から不景気、債務危機へと至る破壊的なサイクルを発生させている。
    ●貿易戦争は国家間の対立として表現されることが多いがそうではない。これは主に、銀行や金融資産の所有者と一般世帯の対立、すなわち超富裕層とその他大勢の対立である。
    ●不平等が拡大すると、在庫がだぶつき、職が失われ、借金が膨らむ。最大の犠牲者はアメリカ。なぜならアメリカの金融・消費市場は開放的なので、欧州諸国や中国などの黒字大国の富裕層はいつでも製品を売りつけ、利益を確保し、安全な資産にそれを貯蓄できると確信し、労働者や退職者から思い切り搾取している。
    ●関税によって貿易不均衡の解消に取り組んでもあまり期待はできない。アメリカ以外の英語圏の国を中心に、資本規制が支持を広げ始めている。住宅購入に制限など。
    ●現代では、黒字国は余剰な生産を吸収してくれる植民地を必要としない。なぜなら、赤字国の銀行が喜んで協力してくれるからだ。
    ●世界各地の企業は国際競争を口実にして、賃金の削減、環境や安全面の緩和、優遇税制、逆進的な移転を推し進めている。生産性の向上やインフラへの投資と比べれば、一般世帯から搾取する方が明らかに簡単だからだ。でもこれは持続不可能だ。
    ●ドイツの黒字は優れた生産技術に対する報酬だと主張するが、これは全くのナンセンスだ。本当なら輸入の増加という形になるはず。
    ●中国がドル建てででは世界第二~三の経常黒字国。はやく所得をエリート層から一般労働者に移転させて家計の支出を増加させるべき。また政府は元高を誘導するための努力を継続しなければならない。中国はやる気があれば簡単に出来る。
    ●誰かが貯蓄をすれば、だれかが貯蓄を取り崩さなければ経済は回らない。その「最後の消費者」の役割を担ってきたのが米国である。それは基軸通貨国の「途方もない負担」だったと本書は論じる。

  • 東2法経図・6F開架:333.6A/KL4b//K

  • 【書誌情報】
    貿易戦争は階級闘争である 格差と対立の隠された構造
    原題:TRADE WARS ARE CLASS WARS: How Rising Inequality Distorts the Global Economy and Threatens International Peace
    著者 マシュー・C・クレイン
    著者 マイケル・ペティス
    訳者:小坂恵理
    解説:青山直篤
    判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
    頁数 320頁
    定価 3,960円 (本体:3,600円)
    ISBN 978-4-622-08999-5
    Cコード C0033
    発行日 2021年5月17日
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08999/

    【簡易目次】
    謝辞
    はじめに
    第1章 アダム・スミスからティム・クックへ――グローバル貿易の変容
    第2章 国際金融の発達
    第3章 貯蓄、投資、不均衡
    第4章 天安門から一帯一路へ――中国の黒字を理解する
    第5章 壁の崩壊と黒いゼロ(シュバルツェ・ヌル)――ドイツの黒字を理解する
    第6章 アメリカ例外主義――法外な負担と執拗な赤字
    まとめ――貿易戦争の終わり、階級闘争の終わり

    解説 「貿易戦争」の核心  青山直篤
    原注
    人名索引

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著者プロフィール

アメリカの週刊投資金融専門紙『バロンズ』の経済論説担当。『ニューヨーク・タイムズ』『ナショナル・インタレスト』などにも寄稿。イェール大学(歴史学専攻)卒業後、外交問題評議会勤務をへてジャーナリズムの世界に入り、『フィナンシャル・タイムズ』アルファビル・ブログの経済・金融担当などをへて現職。著書『貿易戦争は階級闘争である』(共著、小坂恵理訳、みすず書房、2021)。

「2021年 『貿易戦争は階級闘争である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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