コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち

  • みすず書房 (2021年7月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (504ページ) / ISBN・EAN: 9784622090199

作品紹介・あらすじ

日本軍の真珠湾攻撃が迫る1941年11月、アメリカ海軍から東部の名門女子大に宛てて「秘密の手紙」が送られはじめた。そこには、敵国の暗号解読に当たれる優秀な学生がほしいと記されていた――。
第二次世界大戦中、米陸・海軍に雇われ、日本やドイツなど枢軸国の暗号解読を担ったアメリカ人女性たちがいた。外国語や数学をはじめとする高等教育を受けた新卒者や元教師らが全米各地から首都ワシントンに集い、大戦末期には男性をしのぐ1万人以上の女性が解読作業に従事した。
その働きにより、日本の外交暗号(通称パープル)や陸軍の船舶輸送暗号が破られ、枢軸国側に壊滅的な打撃を与えた。ミッドウェー海戦での米軍の勝利、山本五十六連合艦隊司令長官の殺害作戦の陰にも彼女らがいた。一方、大西洋戦域においてはドイツのエニグマ暗号を解明してUボートの脅威を排除し、ノルマンディー上陸時の欺瞞作戦でも活躍した。こうした功績がきっかけとなり、それまで女性には閉ざされていた政府高官や大学教授など高いキャリアへの道が切り拓かれることになる。
戦後も守秘義務を守り、口を閉ざしてきた当事者らへのインタビュー、当時の手紙、機密解除された史料などをもとに、情報戦の一翼を担った女性たちに光をあて、ベストセラーとなったノンフィクション。口絵写真33点を収録。解説・小谷賢。

感想・レビュー・書評

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  • 日経新聞の記事の中で紹介されていたので、興味を持った本です。

    本の冒頭に、暗号解読者の女性達の貴重な写真が掲載されていました。美しい方ばかりで、悲惨な戦争をしていた事とのギャップを感じます。

    暗号解読について、二進法の原理(2文字暗号)/非算術加算/コードと乱数など、わかりやすく説明されています。
    ちなみにサイモン・シン著の「フェルマーの最終定理」の中で、「第一次世界大戦は化学者の戦争、第二次世界大戦は物理学者の戦争、第三次があるとしたら数学者の果たす役割が大きくなるだろう。(p.252)」と記載がありましたが、本書を読むと第二次世界大戦の時点で、既に数学で勝敗を分けたのだと思いました。

    また、本書では戦時中の人種差別・女性差別の記載があり、エピソードを2つ紹介します。

    ①ある白人女性の暗号解読者は、ワシントン州へ赴任します。赴任先で、荷物を運ぶ際に彼女がトラックの助手席に座ると、運転手の黒人男性が驚いたそうです。
    その男性は「白人のお嬢さんを隣に乗せて走ったら怒られてしまう」と言い、困惑しました。(別の車で移動すると思っていた?)
    彼女の出身地だったペンシルベニア州フィラデルフィアは、人種差別がない地域でした。そのため、特段気にしなかったそうですが、人種によって同じ空間・車に乗ることが許されない地域があることが印象的な話しでした。

    ②当時の陸軍は、南部女性について固定概念あったそうです。南部女性は、男性に夢中になりやすく(騙されやすく)、結婚願望が強いというイメージを持っていました。
    そこで、容姿に優れた士官を採用担当に選び、面接に来た娘たちが「こんな素敵な結婚相手が見つかるかも」と期待させようと目論んだそうです。
    そのような背景から、北部出身の職員たちは、南部からきた女性新人を少々見下して接していたそうです。

  • 『コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち』を読む - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/46075

    コード・ガールズ | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/09019/

  • 第二次世界大戦中に日独の暗号解読を行なった、アメリカの女性たちの話。ノンフィクション。

    そもそも当時のアメリカ軍は男性が従事するもの。女性が軍に入るなんて有り得ない家にいろ。けれども戦況が思わしくないからもっと多くの男性を戦地に送りたい。仕方ないから国内での事務処理は女性にさせよう、あれ?女って結構仕事出来るじゃん寧ろ女の方が向いてる?もっと集めて仕事させようという始まり。次第に女性の人数は増え、仕事内容も専門的になっていく。
    そして男性視点からの募集なので、若くて優秀なだけじゃなく容姿が条件に入ってたりするセクハラがまかり通る職場。しかも若い女性を集めるために採用面接官を若いイケメン士官にさせたりとか。
    家族には職務内容は一切話せない。それでも女性たちは国の為に誇りを持って職務に励み恋をし人生を楽しみ結果を出していく・・・。

    って書くと面白そうだけど、個人名が沢山出てくるので、読むのが大変。『戦争は女の顔をしていない』のように名も無き若き女性たち(世に広く知られてないだけで名前はあるが)が次から次へと出てくる。ただ『戦争は』と違って彼女たちは職務柄ほぼ国内の安全な場所で働いているので、悲壮感はあまりない。


    本書の著者は女性で女性たちの視点からの暗号解読なので、男性の暗号解読者が書いた本も読んでみたい。この本を読むと上司は男性でも実際に暗号解読したのはほぼ女性たちでのような気がするが、どう書かれているのだろう。俺が解読した、みたいな書かれ方なのか?
    それからアメリカから見た話なので、日本の暗号作成者の本もあったら読みたい。どんな人が作っていたのか。
    ただ暗号解読の部分は全く私には理解出来ぬ。暗号解読者にはなれなそうだ。


    特に印象に残ったのは、23歳にしてアーリントン・ホール日本陸軍宛名コード調査班の長を務めていたアン・カラクリスティ。とても優秀。戦後は殆どの女性が家庭に入り戦時中の仕事については一切口をつぐみ墓場まで持って行った中、仕事を続け冷戦時代のソ連や、東ドイツの暗号解読を担当。昇進を重ね、NSAの上級顧問になり、国家安全保障勲章と殊勲文官功労者賞を受賞。94歳で他界した時には、同僚でパートナーだったガートルード・カートランドの隣の墓に埋葬された。
    このガートルードさんは女性。つまりアンは同性愛者だったのだ。

    私は映画『イミテーション・ゲーム』を観た。イギリスの暗号解読者アラン・チューニングがドイツのエニグマを解読するが、ゲイであるために迫害され苦しむ。とても辛い話だった。
    勿論当時のアメリカ軍でも同性愛者であると判明したら辞職させられた。だがアンさんは、女性の暗号解読者だった事がかえって利点になったのではないかと著者は考察している。
    当時の女性は男性より重視されていなかったから気づかれなかった、もしくは戦時中女性職員は男性に対するハニートラップ要員とみなされていたから男性以外を恋愛対象とするなんて思われなかった。のだろうと。
    映画ほんとしんどい話だったからな。皮肉な話だけど、結果として良かったのかなぁ。


    最後にこの本は12月8日頃から読み始めた。真珠湾攻撃の日だから新聞ではその週はずっと戦争特集が組まれていた。そして本書も真珠湾攻撃から始まる。
    アメリカ目線なので、日本人としては読んでいて落ち着かない気持ちになり色々考えながら読んだ。暗号が中々解読されないと嬉しく思ったりもした。何より自分の中で戦争についての考えがまとまってないので、読みづらかった。(後で書き直すかも)

  • 「コード・ガールズ」
    それは第二次大戦下の米国において、ドイツや日本の暗号解読に従事した女性たちのこと。
    ナチス・ドイツの暗号「エニグマ」を解読する為にイギリスのブレッチリー・パークでアラン・チューリングなどの科学者が奮闘した話は映画「イミテーション・ゲーム」などでも取り上げられた。
    開戦当初、暗号解読はイギリスが進んでいたものの、アメリカは日本の外交用の暗号「パープル」の解読に始まり、イギリスから「エニグマ」の暗号の解読も引き継いで、イギリスよりももっと大規模に暗号解読に取り組んでいた。
    そして、その暗号解読に携わったのは、ほぼ女性たちだった。
    アメリカでは男性が兵士として出征し、国内の産業の人手不足を埋める形で女性の社会進出が始まった。
    暗号解読も同じ背景を持っていたが、更にそこに女性の方が座って何時間も同じ作業に取り組んだり、文字の羅列に隠されたパターンを見つけ出したりする事に向いているという偏見や性差別的な風潮も重なって、海軍や陸軍が国内の女子大学に働きかけて、多数の女性を採用したのだ。
    そして彼女たちは、ある女性は民間からの協力者として、又は入隊して女性下士官として、暗号解読に取り組んだ。
    彼女たちは機密保持のために、同僚はもちろん、家族や友人にも暗号解読に従事していると話すことは禁じられていた。がしかし、解読不能を誇り、それ故に沢山の機密を含んだメッセージを送っていたパープルやエニグマと日々闘い、破ってきたのはこの無名のコード・ガールズだったのだ。

  • 第二次世界大戦前後で暗号化された通信を解読した現場の女性のドキュメント。米国が戦時中の暗号解読作業についての機密を解除し、戦況を左右した情報戦の詳細が詳らかになった。本書で分かったことは、暗号解読そのものよりも、なぜ女性が暗号解読の仕事に就いたかだろう。当時の米国でも女性が受けてきたジェンダーや教育、終業などの差別があったことを知ることになった。人種問題も関連する。そんな差別が当たり前の時代に加えて、自分の仕事について家族や友人にはまったく話せないストレスは想像に難くない。

    暗号解読については、第二次世界大戦後も重要な技術となっている。先進国のほとんどは諜報機関を持っており、これが自国の安全保障の礎となっている。日本もしっかりとして諜報機関を持って、世界と対峙しなければならないような気がする。現代の戦争は銃弾ではなくネットを流れる情報が武器となる。暗号解読技術がどれほど重要であるかは、本書を読むと、危機感が増してくる。

  • かなり長い本であり、話の山谷もあまりなく、そういった意味では少し読みにくい本だった。
    が、第二次世界大戦について、新たな視点から考え直す機会を得た。
    とは言うものの、日本人として、女性として、複雑な読後感ではあるなぁ…

  • いやはや凄い凄い、知らなかったな。
    というより、いままで研究者は何やってたのっていうレベルで、これまでの史書や戦史に新たな注釈が加えられなければならない。
    関係者のほとんどが沈黙を貫いていたせいもあって、本国でも大きな反響を巻き起こし、"ペーパーバック版のあとがき"にその一端が紹介されている。

    家族で大戦のドキュメンタリー番組を見ていたある家族のエピソードが印象に残る。
    母親が「もう話してもよさそうね」と唐突に話し始めると、「母さんは秘書として働いていたんだ」と言葉を継ぐ夫に首を振り、「暗号を解読していたの。わたしたち女性が、あの戦いの暗号に挑んで破ったのよ」と言うと、立ち上がり全員とハイタッチを交わし、「父さんは言葉を失っていた」と息子は思い返す。

    暗号解読によって勝敗が決したわけではない。
    確かに、ミッドウェー海戦によって暗号解析部門への信頼は高まったが、海軍幹部の多くが暗号解析に価値があるのか疑問視していた。
    たとえ成功したにせよ、解読に時間がかかりすぎ、戦闘に間に合わないと。
    それもそのはず、当初は、機械と人員の豊富なワシントンに通信文を送るには船での輸送が一般的で、それこそ何日もかかっていた。

    これまで暗号解読にそんなに多くの女性が携わっているとは知らなかった。
    戦争の進行とともに急速に拡大・成長した暗号解読部門に占める女性の割合は、7割から8割も占めていたというのだから驚きだ。
    チューリングやロシュフォートなどの伝説的な暗号解読者のように、天才が突然ひらめきを得て暗号を破るというイメージが強いが、実際の暗号解読は天才の仕事とは正反対の共同作業で、大所帯のチームによる努力が物を言う世界。
    収拾した情報は交換され、発見したパターンは共有し合った。
    インスピレーションも大事だが、ファイリングも重要なのだ。

    ごちゃごちゃのままで手のつけられない暗号通信文を整理するため、全国から司書が集められたというのも頷ける。
    記憶力はもっとも有用な能力の一つで、暗号解読のプロセスは、点在する偶然の一致に気づくこと、索引とファイルを整備すること、莫大な量の情報を管理すること、ノイズの中から信号を拾うことにある。

    女性の方が暗号解読の仕事に向いているのは、退屈な仕事や反復作業を辛抱強くこなすからだと考えるのはまったくの偏見で、当時も根強かった。
    しかし、知的な女性と一緒に働くことに抵抗を感じない男性も、彼女らの周りに少なからずいたことが大きかった。

    イギリスの伝説の暗号解読部門が、オックスブリッジの数学や言語学の秀才たちを集めていたのと対照的に、アメリカは大学出の女性に声をかけた。
    彼女たちは、数学や外国語に習熟していたというより、高い冒険心と愛国心、そして低い自己顕示欲を持っていた。
    暗号解読は、名声や信望とは縁がないが、自分の力が試されていると感じられる仕事で、社会が必要とし、やりがいを感じられた。

    太平洋も日本の船も見たことのない民間の女性が、天賦の才を発揮して、日本の偽装コードを見破り、船団コードを解明していき、周りの男たちから崇拝されることもあった。
    この女性、アグネス・ドリスコールは編み出した手法を部下に教えるマスター的存在で、世界最高の暗号解析者の一人と評されるが、自動車事故後は、美貌とともに解析能力も失い、窓際に追いやられた。

    もう一人のエリザベス・フリードマンも伝説の存在で、経歴が異色すぎる。
    そもそものスタートは、シェクスピアは実はフランシス・ベーコンだとする珍説を支持し、在野で検証していた大富豪の趣味を助ける秘書として暗号の世界に入っていき、特異な解析能力を発揮して、軍に協力するようになり、やがて政府の秘密兵器になるのだから。

    日本の暗号機も当初はなかなか破れなかったが、戦時中の大半において、もっとも優れた情報を連合国に与えてくれたのは日本のパープル機だった。
    「日本人は自国の暗号システムの安全性に無邪気なほどに自信を持ち、饒舌に通信文をやりとりしていたため、知らず知らずのうちに非常に厳粛な秘密会議の多くへとわれわれを招きいれていた」
    日本も頻繁にコードブックや暗号化の手法を変更していたが、解読不能になれば解読し直すの繰り返しだった。

    日本側にも問題があって、頻繁な報告は通信量を増大させ、解析の機会を増やしたし、定型の決まり文句を多用したのも拙かった。
    「解読を困難にする目的で日本がしている工夫の多くが、解読をいっそう容易にした」

    まず日本人外交官の通信が筒抜けになり、次に商船、海軍と続き、最後に陸軍の順番に解読されていったが、これは陸軍の功績というより、単に中国の奥地にいて傍受する通信量が少なかったことによる。
    その後の陸軍の快進撃により、部隊が太平洋の島々に広く展開すると、送信出力も上げて傍受が容易になると、結果として彼らの命取りとなった。
    部隊の兵力、装備、種類、位置、配備、どこに向かい、どこで宿営するかまで把握されているので、そこで待ち受けていればいい。
    あまりにも敵潜水艦に遭遇するので、実際の数よりも過大に敵兵力を見積もるほど。
    やりすぎると警戒されてコードを替えられても困るので、わざわざ哨戒機を飛ばして見つけましたよとアリバイ工作することも。

    日本兵の死傷者数やチフス等の病気の罹患数などの健康状態から、昇進や転任、給与なども把握され、「日本が送信したもので、われわれに読めないものはひとつもなかった」。
    受信側の日本人よりも先に通信文を読んでいたのはコード・ガールズたちで、和平交渉に奔走し苦渋を舐め続け、最後には陛下に対する責務を果たせなかったと辞任を申し出る、モスクワ駐在大使の佐藤尚武には、敵ながら同情を集めていたらしい。

    これだけ筒抜けになっていて真珠湾攻撃がなぜ予測できなかったのか疑問に感じるが、その当時は軍部の通信は解読できてなかったという。
    にわかに信じがたく、まだ機密解除されてない暗号解読関連の資料があるらしいので、それが公開されればよりハッキリするかも。
    原爆投下の決断も、通信文の解析された翻訳がどんどん届けられ、本土上陸に対して、日本陸軍が徹底抗戦を準備し、全国民を巻き込む大規模な動員が予定されていると情報がわかっていたためだとしているが、暗号解読で多くの命を救えたという議論とともに、読んでて不快な部分だった。

  • 世界大戦を変えた女性たちの物語。

    第二次世界大戦のアメリカでは、実はたくさんの女性たちが暗号解読に従事していた。インテリジェンスの分野で活躍した女性たちの秘められた歴史を明かすドラマティックな一冊。

    自分の祖母も戦争中のことを語らなかった。亡くなった後で大陸で教師をしていたらしいことがわかった。話を聞ければよかったと思うが、祖母にとっては話したくないことだったのかもしれないし、語るべきことではなかったのかもしれない。この本を読んでそんなことを思い出した。

    女性たちには暗号を扱う力があった。戦争で男性たちが足りなくなったから女性たちを採用した面が大きいだろうが、結果的にそれが功を奏した。しかし女性たちが正当に扱われたかといえばそうではないこともあったようだ。戦後に自分のしたことを語れなかった者がいた。お払い箱のように職場を去らなくてはならなかった人もいた。結局アメリカも「男は外で働く、女は家を守る」という発想が強い。また武器を持って前線でひどい経験をした兵士たちと同様に精神を病んだ人もいたようだ。直接的でなくても人の命を奪う仕事だったのだから。『戦争は女の顔をしていない』でも思ったが、戦時中にそれぞれの場所で戦った(特に軍属の)女性たちへのフォローが不十分なのか、この国も。

    そのような女性たちの誇り高き仕事に光を当てる作品である。苦悩も活躍も描かれている。分厚くて登場人物が多くて読みにくい部分もあるが、惹きつける本だった。戦時中の任務だから話せない部分もあったのだろうが、やはり女性たちのしたことだからという点で知られていなかった部分もあるのだろう。この本の反響が大きかったことが最後に書かれている。人を揺さぶる作品である。

  • アメリカから見た太平洋戦争という意味で新鮮でした。物資は不足してインフラは混乱してたんだな。まあ当たり前と言えばそうですが。ちゃんとしてないけどやらなくいけないからやる、という形で始まった暗号解読チーム。最終的に一万人以上若い女性が動員されたと言うのに驚くとともに、日本はどうだったのかと疑問に思う。例えば10分の1でも動員されたら千人、動員できるのは若い女性だけだったのは日本も同じ。でもそんな事は起きなかった。まあこの方面から見ても負けるべくして負けたんだね。
    能動的サイバーセキュリティとか言って法律通してるけど人の手当を全然考えてないのが変わってないなあ。と暗澹たる気持ちになります

  • 第二次世界大戦中、極秘任務として暗号解読に携わったアメリカ人女性を描くノンフィクション。

    1930年代以前のアメリカでは、女性に教育は要らないとする考え方が主流で、女性の職業は学校教師くらいしかなかった。そんな中、総力戦で人手不足になった軍が、暗号解読のスタッフとして目をつけたのが大学教育を受けた若い女性たちだった。
    ひとつには暗号解読という業務の特殊性もある。「男らしい」業務ではないとされて男性には敬遠され、退屈な繰り返し作業に女性が適任だと考えられていた。
    それでも未知の業務に駆り出された女性たちは、日本やドイツの暗号を解読し続け、また権利として軍の正式な訓練を受けて役職も得た。
    太平洋戦争終了後には、女性を再び家庭に押し込もうとする動きが活発になったが、一部の女性はそのまま留まり、暗号解読に活躍し続けた。

    家族にも秘密を分かち合えない任務は過酷だったが、当事者の女性達の証言からは、青春の思い出という感じも漂う。研究所や住まいは急ごしらえのものながら、重要な仕事をして自分で稼ぐ生活、仲間との絆。
    軍務に従事する女性というと『戦争は女の顔をしていない』[ https://booklog.jp/item/1/4006032951 ]が連想されるが、トーンの重苦しさは全然違う。やはり実際の戦線に投入される体験の有無だろうか。
    アメリカでもソ連でも女性が軍務に駆り出されたのに対し、枢軸国側ではそうならなかったと言及がある。確かに日本では、ひめゆり学徒隊のような例はあるが、正式な軍務に女性が地位を与えられることはなかったように思う。良し悪しは別として、こういった違いが戦後社会のありかたにもいくらか影響しているのだろうか。

    暗号解読の実務自体も興味深い。あいさつなどの定型文をキーにして文字変換の繰り返しを見抜く。通信量自体の増減や地点からも情報が得られる。この話題をもっと知りたければ『暗号解読』[ https://booklog.jp/item/1/4105393022 ]も良い。
    時にはこちらから偽情報を流してひっかけることもある。日本軍の暗号に出てくる「AF」がどこか特定できなかったため、ミッドウェーが水不足だという偽情報をわざと平文で流し、それが日本艦隊に周知されるのを傍受してAFがミッドウェーであることを把握した(p172)。
    こういった情報戦は、使う道具は違うにしても、結局現代でも行われているのだろう。

    そのミッドウェー海戦を含め、太平洋戦争に関する諸々の出来事が、アメリカ側から見ると、日本側からとはいぶん違って見える。
    こちらにとっての悲劇が、相手にとって華々しい戦果となるのは戦争だから当然だが、それだけではない。現代の目で見ると大国のアメリカに日本が敵う訳がないと思ってしまうけれど、アメリカ側にとっての太平洋戦争も、それなりに危機感を覚えるものだったと分かる。国力に差があろうが、家族や身近な人が前線で死ぬかもしれない状況であれば当然のことなのだけれど。
    一方で、敗戦直前、モスクワ駐在日本大使佐藤の奔走を傍受で見守る翻訳者たちが、敵側であるはずの佐藤に共感した(p375)というエピソードが印象深い。どんな形であれ、相手の言葉に触れ、考えていることを理解しようと努力し続けると、そういう感情が生じることもあるのだろう。

  • 先の大戦において、枢軸の暗号を丸裸にした沢山の米国人女性たち。
    男たちは戦場に出ていくため、後方に女性たちを起用した。もちろん優秀な女性たちは沢山いるのだが、それまでの米国は、女性が家庭を維持する以外の「社会」で尊重されることはなかったので、これは画期的であり、いろんな偏見もありながらも、女性の地位向上にもつながった。
    一方で、戦争が終わると復員した男性が優遇されるようになり、優秀であった彼女たちの能力も生かされず、また、戦時の心理的障害から逃れられない女性もいた。

    フェミニズムが中心かな。

    実際に、暗号を解読することの困難さ、戦局に与える重要性なども描かれているが、あくまでそこに女性がどう絡んでいたかを中心に描いている。

    いろんな偶然にも恵まれていたところはあろうが、やはり、知の集積が凄い。

    悔しいなあ。

    戦争自体に、その解釈に善悪はつけない。
    特に現場では、そりゃ、戦争相手の日本は憎いし、身内の米国兵を助けて一喜一憂するのは当然。

    だが、この余裕は何。
    社会がちゃんと機能している。娯楽もある。ダンス?デート?何言ってんの。

    同じ時期、と言うか、同じ時、日本人の戦時下の生活を考えれば、雲泥。
    同じ水準とは言わないまでも、人として生きていくことができたはずの非戦闘員の一般国民が、何十万人も殺された。戦略的に、殺された。

    戦争目的を見失った日本軍も愚かだが、戦争目的を見誤った米国軍は傲慢だ。

    改めて戦争の愚かさを思い知る。

  •  ようやく読み終わった『コード・ガールズ』。日独の暗号を解き明かした女性たちのノンフィクションである。太平洋戦争ではアメリカは1万人以上の女性が暗号解読作業に従事し、日本の難暗号を見事に解読していたことが詳細に記されている。山本五十六長官の行動スケジュール情報を解読し、容易に撃墜できたことや、ヒトラーと親密な関係であった大島浩駐ドイツ大使が知り得たドイツ軍の配置状況などの東京への報告が解読されたことなど、彼女たちの地道な活躍が連合国の勝利につながったことがよくわかる一冊である。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC08661784

  • 科学道100冊 2022 テーマ「情報の世紀」

    【所在】図・2F開架
    【請求記号】391.6||MU
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/465542

  • 第二次世界大戦中に暗号解読に従事していたアメリカの女性たちをとりあげたノンフィクション作品。暗号解読という視点から当時の状況、戦況等を知ることができて興味深かった。特に暗号解読に従事する女性たちの活躍により山本五十六の位置を特定し、攻撃を決行するくだりはスリリングだった。

    後年になって、戦争中、暗号解読に従事していたことを家族に打ち明けるエピソードがいくつか出てくる。人知れず国にしっかりと貢献していたことをようやく打ち明けられ、そのことを誇りに思う家族が印象的だった。

    他方で、戦後、速やかに家庭に戻ることを求められた女性たち。本書では、戦後、女性たちが社会で引き続き活躍するもののいれば、居場所を見つけられなかった者もたくさんいたことにも触れられている。ノンフィクション作品としてとても読み応えのある一冊。

  • 戦時中のアメリカ、他国の通信を読み取るために軍隊で暗号解読の任務についた女性たちの話。
    日本の使っていた暗号は連合国側にばれていて、通信が筒抜けだったという話は聞いたことがあったけど、あらかじめ符号を手に入れていてスマートにささっと暗号を解読するようなイメージだった。それがこんなに大勢の人員で、血のにじむような努力を何年も必死で続けて成し遂げていたのだとは知らなかった…。しかもそれは戦地に赴く男性の代わりに集められた優秀な女性たちで、戦争が終わって長くたった後でさえ任務について称えられるどころか話すことすらできなかったとはびっくり。
    当時の女性の一般的な生活ではありえないような重要な任務に携わる充実感と、自分たちの働きが男たちの命運を文字通り握るという重圧。戦後は速やかに「家庭に戻る」ことを求められた彼女たちの、その後の生活も明暗が分かれたという。精神を病む者、家庭を飛び出して仕事で成功する者、軍に残って出世する者…。戦地の話ではないけれど、才能ある女性たちの生き生きした仕事ぶりと戦争の光と影を生々しく感じられる本だった。

  • 暗号モノが好きで読み始めたのだけれど、思いの外ジェンダーな話でもあると思った。

  • 流石米国。民間人だった暗号解読従事者を士官に迄昇進させる。合理的で自由な発想が可能にするのだろう。当時の日本の現状を考えると進み過ぎ。羨ましい。

  • 第二次世界大戦における連合国の勝利を支えたインテリジェンスはアメリカの女性たちがもたらしたものだった。前線に多くの若い男たちが駆り出される中、数学の素養がある優秀な女性たちが集められ日本軍やドイツ軍の暗号解読に日夜勤しむようになった。さながら映画のようなノンフィクションでとてもスリリング。女性の社会進出という文脈やNSAの源流を探るといった観点でも読める一冊。

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著者プロフィール

アメリカのジャーナリスト、ノンフィクション作家。《ワシントン・ポスト》紙で長年記者を務め、女性問題や労働問題を中心に取材。2017年に刊行された本書は《ニューヨーク・タイムズ》紙ほか主要紙で高評価されて20万部を超えるベストセラーとなり、10を超える言語に翻訳されている。情報機関出身者が選ぶ「Best General Audience Intelligence Book(一般向けインテリジェンス最優秀書)」(2018)にも選出された。グーグル本社をはじめ、各地で本書と「コード・ガールズ」に関する講演を行っている。ほかの著書に『ミシェル・オバマ』(渡辺将人監訳、清川幸美訳、日本文芸社、2009)、Everything Conceivable (Knopf, 2007) , The Richer Sex (Simon & Schuster, 2012) など。シンクタンク「ニューアメリカ」のシニア・フェロー、「ジャパン・ソサエティ」フェロー。2019-20年に米国家安全保障局/中央保安部(NSA/CSS)の招聘研究員。バージニア州アーリントン在住。

「2021年 『コード・ガールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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