- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622090731
作品紹介・あらすじ
「ハイパー資本主義はあまりにも行きすぎてしまった。いまや私たちは、資本主義を超える新しい体制、すなわち、参加型かつ分散型、連邦主義的かつ民主主義的で、環境にやさしく、多民族共生かつ男女同権といった新しい形の社会主義について考える必要がある。私はそう確信している」(序文より)
英国のEU離脱(ブレグジット)、トランプの勝利と敗北、マクロンの諸改革、プーチンの泥棒政治、新型コロナ、気候危機……激動する世界のただ中で、格差と闘うエコノミストは何を訴えたのか? ピケティが構想する「新たな社会主義」とは?
2016年から21年初頭にかけて『ルモンド』紙に寄稿した時評から44本を精選し、新たに「序文」を付す。『21世紀の資本』から進化を続ける思考と格闘の軌跡。
感想・レビュー・書評
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トマ・ピケティ氏の、フランスのル・モンド紙に掲載された月々のコラムを選んで収録。2016年9月~2021年1月まで。
「21世紀の資本」をわずかなページで挫折した身にとっては、短文でもやはり難しい。ピケティ氏は日々社会への観測を紙面に掲載しているんだ、というのを知っただけでもよかったかな。
冒頭は「来たれ! 社会主義」2020年9月
・ベルリンの壁崩壊から30年、ハイパー資本主義はあまりにも行きすぎてしまった。いまや私たちは資本主義を越える新しい体制、すなわち参加型かつ分散型、連邦主義的かつ民主主義的で、環境にやさしく、多民族共生勝つ男女同権といった新しい形の社会主義について考える必要がある。
・「社会主義」という言葉が完全に過去のものとなり、別の言葉で置き換えられるべきかどうかは、歴史が決めるだろう。私自身は社会主義はまだ救うことができる言葉だと考えている。
・資本主義や新自由主義にただ「反対」しているだけでは何も始まらない。何か別のものに「賛成」する必要がある。実現したい理想の経済体制、思い描いている公正な社会を正確に示さなければならない。
奴隷制度について初めて知ったこともあった。
「人種差別に立ち向かい、歴史を修正する」2020年6月16日
・人種差別の運動の波は重大な問題を提起している。どう考えても解決済みとは言い難い、植民地支配と奴隷制の過去に対する補償の問題だ。
・共和党のリンカーンは解放奴隷たちに南北戦争が勝利の暁には「雌ラバ1頭と40エーカー(約16ha)」の土地を手に入れられると約束したが、それは実行されず民主党は南部の支配権を取り戻し、1960年代まで人種隔離と差別を押しつけた。この人種隔離政策が撤廃された時も、なんの補償も行われなかった。
・イギリスとフランスでは奴隷制度の廃止は必ず、国庫による奴隷所有者たちへの補償を伴うものだった。奴隷所有者たちが補償なしに財産を奪われたら反乱が起きるだろう、とのことからだった。奴隷たちは奴隷所有者たちと長期労働契約を結ばねばならず、それをしないと浮浪者として逮捕された。
・1833年のイギリスでの奴隷廃止時には、イギリス国民所得の5%(現在の1200億ユーロ)に相当する額が約4000人の奴隷所有者に支払われ、その補償額は平均3000万ユーロにものぼり、現在でも目にする多くの財産の源となった。
・フランス領ハイチは1791年の反乱から1804年に独立。だが1825年、フランス政府はフランス人奴隷所有者が失った奴隷という財産を補償するために(当時のイデオロギーによれば「不当に財産を奪われた」)、ハイチに対し莫大な債務を負わせた(当時のハイチのGDPの300%)。ハイチは1950年までフランスに債務を返済し続けた。ハイチは今、フランスに対し、この不当な貢物の返済を求めているが、この要求は正当だといえるだろう。
・しかし第二次世界大戦中のアメリカでの日系人収容には1988年、一人2万ドルを補償する議決が通り、補償された。12万人収容され議決時は8万人の生存者で計16億ドル。
2020 フランス
2022.4.18第1刷 図書館 -
本書は、トマ・ピケティ氏が書いた記事をまとめたもので、トピックは経済格差や温暖化問題、ブレグジットそしてアメリカ大統領選挙など多岐に渡ります。
また、専門書では無いので、トマ・ピケティ氏がまさに『そのとき何を考えているか』を垣間見ることができます。多くの人に富がいきわたるような、世の中になることが、多くの問題を解決するというトマ・ピケティ氏の見解を社会主義というワンフレーズで表していることが私には衝撃的でした。
あと、とても本のデザイン秀逸です。 -
あまり面白くなかったかも?
新聞のコラムだから、どうしても、ロジカルにデータを示しながら、、、とはいかないからかな?
ピケティは凄い人だけど、この本を3,500円払って読む人が、果たして何人いるだろう。。 -
トマ・ピケティが描く、新たな社会主義を、2016年~2021年のコラムから読み解く。
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著者の最大の関心は格差問題と気候問題の2つだが、両者を関連付けて分析し、セットで解決しようとしている点が興味深い。
本書は2016年から21年初頭にかけて仏『ルモンド』紙に寄稿した時評から44本を抜粋しものだが、時期的な問題もあって、トランプ批判とブレグジットに関するものが多く、あとはEUや国内政治に関するものが殆ど。中国とインドに関するものが各々1本あって、日本に関するものは皆無である(ちなみにロシアも1本あってこれは結構面白い)。この辺からは著者のアジアへの無関心が感じられ、国際的な視野が狭い印象を受ける(編集者がそういう選択をしただけかもしれないが)。基本的には米を敵視し、英に愛想をつかし、独とは仲良くやってEUを「社会主義的連邦主義」で盛り上げていこうという思考の持ち主であり、EUが限界にきているという認識はないようである。この辺はやや楽観主義的というか、ユートピア思想的でもある。
とはいえ、各々で提示されるデータやグラフには興味深いものも多い。特に印象的だったのは、男女賃金格差は年齢と共に拡大する、移民流入の数は2010以降は減っている、左派への投票は昔は低学歴だが最近は高学歴、世界格差のエレファントカーブ(底辺層の所得は増え、中間層は没落、上流層は激増)。これらの様々なデータを読み手が各々認識・解釈し、著者の考えと対比させながら、自分なりに考えるという読み方が正しいのかもしれない。 -
トランプとマクロンは外国人嫌いで気候変動に懐疑的なツイートをする似た者同士。共通点も多い。
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東2法経図・6F開架:332.07A/P64k//K