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- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622090854
作品紹介・あらすじ
本書は、神経症・強迫神経症・衝動狂・性的倒錯・興奮者・軽佻者・欲動者・奇矯者・虚言者と詐欺師・社会敵対者(反社会的人格)・好争者などをテーマとしている。
アメリカの最新の診断基準DSM-IIIが主としてクレペリンに基づいているのは周知のとおりで、ここにとりあげた人格障害を例にすると興奮者・軽佻者・欲動者は、現代社会問題化している家庭内暴力を含む境界型および自己愛型人格障害にあてはまろう。(国際疾病分類ICD-10の最新案ではこの二型がなく、衝動性人格障害としてまとめられている。)これらの人格障害をはじめ、内因性・心因性の精神障害に関してアメリカを中心に最近進められた生物学的研究の多くは、クレペリンのこの教科書にさりげなく述べられているさまざまな経験的事実や、そこから導き出された仮説を最新の方法で科学的に洗い直すことであったといっても過言ではない。クレペリンの即物的(ザハリヒ)で克明な描写は完璧といってよいほど、種々の臨床像の明細をとらえている。
質素な北ドイツ出身で勤勉だったクレペリンには、南ドイツやオーストラリアの都会の若者たちはすべて精神病質に見えたのではないかと思えるふしが多々ある。何といってもクレペリンはプロテスタントの支配する新興国プロイセンの有能な官僚で、ゾラの「ルーゴンーマッカール叢書」などに描かれた当時の時代風潮の枠をこえることも、難しかったのである。したがって、本書の特に後半部は今日のわれわれにとって、精神医学的というよりはむしろ、風俗的文化的歴史的な参考あるいは警告の書としてきわめて有益であるように思える。(訳者あとがきから)