- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622096030
作品紹介・あらすじ
― 患者にはよく「実験精神」について語った。たとえば、「三日間家に戻ってみよう。三日間なら取り返しのつかないことにはならないだろう?」と提案する。そして、「途中でこれはいかんと思ったらさっさと帰っておいでなさい。まだ少し早いということがわかったから実験は成功さ」「実験に失敗なし」などと患者に告げた。絵や箱庭は患者のことばの添え木となった。
― 「患者とは、あるいは患者も含めて不幸な人とは、考え、考え、考え、考えている者」であり、認知症の人も統合失調症の人もがん患者も、「考えに考えをつづけています」。
― 誰もが病気になりうる存在であって、自分たちにも統合失調症の人たちが示す症状が一過性でも起きることはある。だから治療にあたっては症状よりも患者の健康な部分に光を当て、そこを広げていけばいい。慌てずに患者を見守っていなさい──。この疾病観はどれだけ医療者の意識を転換させ、患者やその家族を勇気づけただろうか。
われわれの世界に数々の知恵と言葉とヒントを遺し、2022年にこの世を去っていった精神科医・中井久夫。著者は『セラピスト』(新潮社、初版2014)以後も中井の聞き書きをつづけ、その生涯と仕事を追いかけてきた。
『中井久夫集』(全11巻)の「解説」を大幅に改稿して本書は成った。1960年代前半、精神科医誕生の前後からその死までを軸に、統合失調症やトラウマ研究はじめ医療とケア、膨大な執筆や翻訳、人との付き合いなどをつぶさに記す。詳細な年表付き。
感想・レビュー・書評
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全集のあとがきを加筆修正して一冊にまとめたもの。中井久夫の広範囲すぎる業績をコンパクトに、熱を持って実感することができる。読むとやっぱり、全集の方も読みたくなる。
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中井久夫を丸ごと理解しようとした本。益々中井先生を尊敬し、好きになりました
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中井久夫の仕事の歴史とその時の彼の考えを記したもの。
もっと伝記的にどういう人生を歩んだのかを知りたかったが、プライバシーに配慮したのか、わずかに幼少期のことが出てくるのみ。
中井の思想などもあまり書かれておらず、表層的な出来栄えであり、期待外れであった。
著作がどういう背景で書かれたのかはわかったので、ちゃんと著作を読まなければと思った。 -
みすず書房から全11巻で出された『中井久夫集』の解説をもとに書かれた小伝。聞き書きを続けられていた方が書いているので、第九章以降は中井と著者との個人的なやりとりや交流の際のエピソードが随所に挟まれ、これまで中井自身の著作からだけでは見えずらかった、語る人・交流する人としての中井の姿がほんのりと目に浮かんでくる。洗礼を受けた日の情景が印象的。己の戒めとしたい。
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中井先生の家庭訪問、ぜひ拝見したかったと感じた
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電子ブックへのリンク:https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000160297
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まさにタイトル通り、中井久夫の人と仕事をケレン味なく紹介していく。晩年になって著者自身が顔を出すあたりから少しだけエモーショナルに
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2023I118 493.7/Sa
配架書架:C2
著者プロフィール
最相葉月の作品





