北海道 犬旅サバイバル

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622096535

作品紹介・あらすじ

「自分のもつ能力を最大限に発揮するのはやっぱり面白い。たぶん、面白いと感じるようにできている。(…)ナツすら山旅犬としての能力を発揮する瞬間瞬間を楽しんでいるように見える。存在の理由や意味など考えずに、ただ脳内の快楽物質が生成される刹那を求めて生きている。人は犬のようになれないのか?」
この旅で50歳を迎えたサバイバル登山家が、現金もクレジットカードも持たず、愛犬ナツを連れて、宗谷岬から襟裳岬まで、晩秋の北海道南北分水嶺700kmをまる2か月かけて歩き通した。背負っている食料は米と調味料だけ。河原で野営し、おかずは鹿を撃って食いつなぐ。新雪の大雪山系を越え、さらに日高山脈を南へ。著者のサバイバル経験の集大成とも言える旅のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • <訪問>「北海道犬旅サバイバル」を書いた 服部文祥(はっとり・ぶんしょう)さん:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/933174/

    北海道犬旅サバイバル | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/09653/

  • 序章 旅立ち前
    五〇を前に惑う  ナツとの出会い  山旅犬  覚醒の途中  荒野の旅

    I 前半戦
    宗谷丘陵
    まず羽田まで  北海道上陸  宗谷岬へ  牧場の分水嶺
    森から強制退去
    気のいいおじさん  国有林の山旅  強制連行  宗谷の日曜日  一日の歩行スタイル  道迷い  問寒別のヒグマ
    街を歩く
    ヒグマの親子  牧草地の奥で  国道を使って  車道に出る  中川町に入る  コンバット  国道を歩く
    天塩岳ヒュッテへ
    音威子府通過  街場の調達食料  クズ野菜の助け  引退セレモニー  豆ご飯  朝日町  野菜調達方法  廃道の鹿  天塩岳ヒュッテ

    II 中盤戦
    大雪山系を越えて
    デポ回収  完全休養日の目論み  天塩岳の登山者  廃道  国道の誘惑  誕生日の層雲峡  大雪越え
    山小屋芽室岳へ
    廃道  ヌプン小屋  荒野の旅  十勝川林道  新得の街場  デポという不確定要素

    III 後半戦
    ナツを待つ
    旅の核心部へ  チロロ越え  幌尻越え  新冠ポロシリ山荘  古道ナメワッカ沢  ナツ行方不明  犬と山を歩く意味  ペテカリ山荘へ
    襟裳岬を往復する
    基礎疾患対策  いよいよ終盤戦へ  ペテガリ岳  終盤戦開始  冬将軍到来  食料制限  アタック準備  岬アタック開始  襟裳岬
    旅の終わり
    本町無料休憩所  謎のオッサン  現金があるということ  現金があるということ 2  楽古岳越え クッキーシュー  生還

    ちょっと長いあとがき

  • 文章が淡白になりエッセイ集のような味わいで、すぐに読み終わるのがもったいなかった。ハイレベルな山旅を志向しているにもかかわらず、ハイレベルであること自体を意図せず無化してしまう旅になったと読んだ。次の旅での彼の思考も早く読みたい。
    --
    再読。人生の集大成と言える登山を果たせなかった者の悔恨の記録として読んだ。冒険記ではなく、くよくよしている部分がとても良く、評価があがった。

  • 「自分のもつ能力を最大限に発揮するのはやっぱり面白い。たぶん、面白いと感じるようにできている。(…)ナツすら山旅犬としての能力を発揮する瞬間瞬間を楽しんでいるように見える。存在の理由や意味など考えずに、ただ脳内の快楽物質が生成される刹那を求めて生きている。人は犬のようになれないのか?」 この旅で50歳を迎えたサバイバル登山家が、現金もクレジットカードも持たず、愛犬ナツを連れて、宗谷岬から襟裳岬まで、晩秋の北海道南北分水嶺700kmをまる2か月かけて歩き通した。背負っている食料は米と調味料だけ。河原で野営し、おかずは鹿を撃って食いつなぐ。新雪の大雪山系を越え、さらに日高山脈を南へ。著者のサバイバル経験の集大成とも言える旅のドキュメント。

  • 第9回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会④オンラインで発表された本です。
    2024.2.4

  • <目次>
    序章   旅立ち前
    第1章  前半戦
    第2章  中盤戦
    第3章  後半戦

    <内容>
    サバイバル登山家と名うっている著者。世界の山旅はもう撤退らしい。モンペルの社員として、雑誌「岳人」の編集をしているようだが、3ヶ月の休暇で、北海道を飼い犬と縦断、それも金も現代的な備品も持たずに、狩りをしながら、準備した山小屋にキープした食糧などでつないでいった記録である。現代のサバイバルはなかなかハードというか、情けないというか…。でも著者の正直な感想が盛り込まれているのが良いというか…。ある意味苦労の連続なのだ。国有林の進入禁止(北海道は国有林が多く、事件などがあって、狩猟が限定されていた)など、トラブルを受けながら、宗谷岬から襟裳岬まで。一気に読める感じだった。

  • 米と調味料のみを背負い、鹿を撃ち
    岩魚を釣り、沢の水を飲みながら山行する
    #サバイバル登山家 #服部文祥 が愛犬ナツと共に北海道の分水嶺を現金をも持たず歩く。

    あらゆるジャンルでの #ド変態 が大好きなワタクシにとってはたまらなく面白かった一冊でした
    ブンショーさん相変わらずサイコーすぎ!
    中でもナツの台詞というか心の声?や
    数々のエピソード…以下ネタバレ注意

    ナツが失踪した数日間や

    鹿肉のみを食べ続けた結果痔になり
    『ボクサーはパンチでまぶたの傷が開き、
    サバイバーはウンチで肛門の傷が開く。』
    鏡がないので、コンデジで肛門を撮影www

    極めつけは「浣腸器自作」ww

    デポしたスナック菓子、忘れ物のプリッツ…
    生還して帰路途中に貪り食う記述も笑

    なけなしのおにぎりをナツに分けてあげるが
    シャケだけ食って米は全部地面に吐き出し、
    それをブンショーさんが拾って食べるwww

    それにしても
    #カヌーの父 と呼ばれた #野田知佑 さんと 
    #カヌー犬ガク といい、
    #ホーボージュン さんの #ラナ ちゃん
    野外をのびのび走り回る犬との暮らしが
    羨ましい

    #読書 #読書記録 #本棚 #読了
    #読書日記 #読書ノート #本好き #本スタグラム #活字好き #読書体験 
    #犬 #いぬのいる暮らし #犬のいる幸せ #Dog #犬との暮らし

  • 北海道犬旅サバイバル

    著者:服部文祥
    発行:2023年9月11日
    みすず書房

    「サバイバル登山家」として、その登山体験などを著書に残してきた服部文祥氏。必要最小限の荷物だけを持ち、あとは狩猟で食料を調達して登山をするスタイル。この本が出版されたのは去年だが、北海道を犬とサバイバル旅行したのは2019年のこと。著者が50歳を迎える節目のこの年、これから加齢とともに体が動かなくなり、思うような登山もできなくなるだろうと考え、本当にやりたい登山を「引退セレモニー」としてすべく実行したのがこれ。

    憧れる伝説の猟師デルスー・ウザーラのフィールドである極東ロシアを徒歩旅行したかったが、今の時代、それは無理。では、気候的に一番近い北海道にしよう、そして、お金とクレジットカードを持たない「無銭登山」「無銭旅行」をしようと決めたのだった。

    犬を飼うのが憧れだった著者は、その3年前にもらいうけたメスの柴犬ナツを、3シーズン猟に連れ出して猟犬として訓練した。そして、4シーズン目にあたる2019年は、狩猟解禁日である10月1日から、一緒に北海道犬旅をすることにした。乗り物に乗るのは、羽田~北海道を往復する飛行機のみ。横浜の自宅から羽田までも徒歩。そして、稚内空港から最北端の宗谷岬、そこから北海道を縦断して南の襟裳岬、さらにかなり北へ戻って帯広空港までも、全部歩く。地図上の距離では700キロだが、登山をしていくので1000キロぐらいの距離となる。

    著者は2019年の時点では、まだモンベルの社員であり、山岳雑誌「岳人」の編集者としての仕事をしていた。10月から3ヶ月は、休職をして旅行することになる。給料がもらえないだけでなく、毎月支払っている住民税、健康保険料、厚生年金保険料を逆に払わないといけない。36万円。三ヶ月の生活費40万円弱と航空運賃とで、合計100万円の出費となった。子供は4人。一番上は大学生。

    食料は狩猟で調達するといっても、肉や魚ばかり食べては生きていけない。3ヶ月分(腹づもりでは70日で終われそう)の米がいる。そんな大量の米を担いで旅行などできない。事前に北海道に行き、3ヵ所の避難小屋にあるデポに、それぞれの旅行期間にわけた米を置いておくことにした(許可が出た)。お菓子など他の食料も少々。食料費とデポ設置行の交通費で約10万円。しかし、誰かが勝手に食べてしまうかもしれないし、クマが入り込んで根こそぎ食べてしまうかもしれない。探検家・角幡唯介が北極圏の極夜を行く旅ではそれが起きていた。そんな不安も抱きつつ、とにかく旅行をスタートした。なお、この本の中に角幡唯介の話は何度か出てくる。

    稚内空港から宗谷岬北端まで歩き出した初日、いきなり鹿に出くわす。銃を組み立て、早速仕留める。まだ初日、米などの食料がリュックサックの中にずしりと入っているのだから、鹿を一頭仕留めても丸々は持って行けない。撃つべきか、もう少し待つべきか、迷うが引き金を引いていた。この本、全般にそうしたシーンが出てくる。迷うが、必ず撃つ。狩猟本能なのか。

    いろいろな苦労やトラブル、困難が待ち受けているが、なんとか乗り越えて旅は達成される。話の中心の一つは、なんといっても愛犬ナツとの関係である。国道など車に轢かれるかもしれないところ以外では、リードは外して歩く。鹿などを撃ち、命中すると、出血しながら逃げる獲物をナツは血の臭いを手が掛かりに追っていく。追いついたか否か、結果はどうあれ、何分かして戻ってくるが、時になかなか戻らないことも。旅も最後に近くになり、なんと3時間戻らなかったことが。もう死んだと諦めるべきかどうか、不安と怒りと、そして悲しみに苛まれつつ、ただ待つしかなかった。また、諦めかけた3時間後にやっと帰って来てから、どう接していいものやらも悩む。いきなり怒ると本当にどこかに行ってしまうし、甘やかすとまた消えてしまう。その距離の取り方に悩むが、一方の犬のナツも同じだった。怒られるのかどうか、疑心暗鬼だったのだろう。微妙な距離感と態度を保っていた。

    最後近くになり、楽しい場面も出てくる。朝の出勤時、著者のファンだという人が著者を見かけ、妻に電話をして、歩いているはずだから探してサインをもらってきてくれと言いつける。妻は車で探しだし、本を差し出してサインが欲しいと言う。著者はサインをするが、旅も終わりに近づいて食料不足に悩んでいたために、サインを渡しつつ、生米など恵んでくれと頼む。

    あるいは、車に乗ったオッサンに声を掛けられ、自販機での飲み物をおごられつつ、徒歩での無銭旅行の話を聞かれる。オッサンは随分と感心し、お礼だといって千円札3枚と小銭を山ほどくれた。要らないならそこらの神社かお寺にでも賽銭として入れてくれ、と言って去って行った。著者は、経済活動に参加していいのかどうか迷いながらも、飢えにはかなわず、それでお菓子などを大量に買う。

    鹿肉はたくさん食べられるが、野菜類はどうするか?畑に人がいたら、くず野菜をもらう。でも、事情を説明すれば、くず野菜どころか美味しい野菜をたいがいはくれるようである。また、道に落ちていた大豆(運搬途中に車から落ちたのであろう)を拾い集め、夜に豆料理を作るといった場面もあった。

    読みながら心配した。肉ばかり食べていたら、痔にならないか?案の定、それは出てきた。鹿肉の脂を浣腸してスムースに排便するという技まで編み出した著者だった。

    他にも、いろいろと楽しい、そしてシビアな話が出て来た。昼食後、満腹で半分まどろみながら読み始めた本書だが、夜に読み終わる時には、こちらのお腹の具合も引き締まっていることが感じられた。

    ******

    角幡(唯介)君の極夜行は、デポが白熊に荒らされていることが発覚してから、がぜん面白くなっていった。連れている犬まで食べるかという窮地に置き込まれるのだ。
    その報告を読んだとき「デポを回収できない事態を想定して食料計画を立てておけよ」と思い、角幡君にも直接そう言ったのだが、実際に長期の旅をやってみると、デポを回収できないことを想定したら、デポの意味がないことがわかった。デポが回収できなくても旅が成り立つなら、最初からデポがなくてもいいからだ。
    もし山小屋芽室岳のデポがなかったら、角幡的に面白いことになると思った。そうなったらとりあえず、鹿を撃ちながら、ペテカリ山荘にある第三のデポにいそぐことになるだろう。

    上川の町を散歩していると、町工場の側壁に絡みついたヤマブドウをおじいさんが収穫していた。おじいさんでは手の届かないところにたくさん実っているので、少し手伝うと「好きなだけ持って行け」という。手伝っているときから下心はあったのだが、ありがたい。

    「ナツが死んだ」と納得するまで何日かかるのだろう。
    「私はいったい何のために歩いているのだ?」という自問に行き当たり、ぞわぞわと背筋が泡立つような感じがした。ナツがいなくなっても、旅をつづけるのか?意気消沈して帰宅するのか?

    基礎疾患として、アルパインクライマーは肛門に問題を抱えていることが多い。

  • 途中山小屋にデポしたコメ以外はほぼ狩猟や採取で調達しながら宗谷岬からえりも岬まで山を歩き通した旅の記録。

    廻ったルートを地図に残してくれててなるほどと思いつつ、山をよく知ってる熟練者じゃないと真似できないすごい旅だなと思いました。

    自分は狩猟をやっておらずちょっと素朴に感じたことですが、旅の道中、いっぱいシカを仕留めてて、余して捨ててる肉が結構大量なイメージがしてちょっともったいない(余った肉を全部カレーやスープに使ってみたい)なあって感じました。
    (現実的にこういったルールで旅をするとなれば、捨てる以外どうしようもないとは思います、すみません。)

    しかし森林局のエピソード、威張ってるご老体が一刻も早くいなくなってほしいものです。
    (北海道って林道のゲートの施錠が結構いやらしい感じがしてそれに通ずるものを感じました。。。)

  • 愛犬と自給自足で北海道を縦断。文明から根絶した山中で鹿を狩りひたすらに歩く。避難小屋に事前に食料を貯蔵したり、飛行機で北海道を往復したり、ルールが複雑だが生き物としてヒトとして、何か根源的なものに迫る内容。

    サバイバルな旅をする発想からして面白い。出版がみすず書房ということから分かるように、自省する内容は奥深い。

    筆者50歳だからこそできた長い旅。愛犬のナツとのドタバタも楽しい。

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著者プロフィール

登山家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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