哺乳類の興隆史 恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで

  • みすず書房 (2024年7月18日発売)
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本棚登録 : 158
感想 : 10
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  • 本 ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622097013

作品紹介・あらすじ

約3億年前に爬虫類の祖先と分かれたグループが、幾多の絶滅事件を乗り越えて私たちに至るまでの、途方もない歴史を描く書。
今、地球には約6000種の哺乳類が生息している。この動物たちは、哺乳類というグループが織りなしてきた豊かな系統樹のごくごく一部にすぎない。過去には、車のような大きさのアルマジロ、犬のような小ささのゾウ、マメジカのような華奢な四肢を持つクジラの祖先など、奇想天外な動物たちがいたことが化石記録から明らかになっている。
哺乳類の系統樹の枝は、小惑星の衝突や火山の噴火、気候の変動などに起因する絶滅事件により、大半が刈り込まれてしまった。しかし絶滅哺乳類が獲得した進化の遺産は、私たちの身体に確かに引き継がれている。たとえば、耳や顎の骨の形状、妊娠や乳児の成長の仕方、咀嚼を可能にした臼歯の形状や乳歯・永久歯のしくみは、私たちの祖先が3億年の間に一つ一つ獲得したものだ。
古生物学者たちは、世界中を探索し、化石記録やDNA解析を元に、絶滅の危機を辛くも耐え抜きついに繁栄を勝ちえた哺乳類の歩みを明らかにしてきた。本書はその発見と解明の興奮を追体験する書でもある。
図版多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • 人類史をなんらかのトピックでもってひとまとめにするビッグヒストリー系の本とは違く、「哺乳類」という観点から進化史をたどっていく体裁となっている点が本書の売りにしておすすめポイント。
    哺乳類が登場したおよそ3億年前からはじまり、爬虫類からどのように進化してきたのか、その間に起こった気候や大陸間の変動について、恐竜と哺乳類の関係性と違い、などなど、進化史にまつわる様々な話題をわかりやすく通史としてまとめている。
    書かれていることの多くが最新研究で解き明かされたことであり、そもそも動物について知らないことばかりだったため興味をそそられる記述が多くあった。例えば、【極端な哺乳類たち】の章では身体の一部や全体が極端に大きくなった動物たちの生態が説明されている。クジラが哺乳類なのはいいとして、ではどういった種類の哺乳類なのか?というか陸棲哺乳類からいかにして進化してきたのか?というのは言われてみればかなり謎な話で興味津々。読みながらクジラに対する著者の愛着が感じられ、自分自身もクジラが好きになっていく楽しさがあった。ちなみに、ダーウィンは『種の起源』の中でクジラの事を、「クマこそが祖先かもしれない」と推測していたらしく、後で「そんなわけ無いか……」と思い直して当該の部分を削除していたそう。クマからクジラは流石に無いよねえ。でもこういった進化史にまつわるトリビアが知れるのも本書の面白い部分だろう。

    【哺乳類と気候変動】の章ではウマに関する記述が中心となっている。なんでも、草が進化したのは地球史全体で見れば最近のことらしく、ようやく登場したのは白亜紀(恐竜たちの時代に陰りが見え始め、しかし哺乳類はいまだひっそりと暮らしていた頃)あたりからとのこと。初期の草はいまの草とは違く、食用には適さないものが多数あったようで、そこから気候や土地やそこで生きる生き物たちに適応することで、大陸をまたいで繁殖し、新たな生態系となっていったみたい。さらにそこで足並みをそろえるように数を増やしていったのがウマであり……といった具合に環境の変化と哺乳類の進化がどのように進んでいったのかをひとつの叙事詩のようなかたちで提示しており、科学系の読み物というよりも、物語を楽しむ感覚で通読できた。

    その他にも、「ティラコレオ(フクロライオン)」という樹上まで登ってくる凶暴なライオンのような生き物の話があったり、絶滅動物の中でも代表的なマンモスの話があったり、『恐竜の世界史』の著者だけあってか、大きくて強い生き物の記述に関しては特に熱がこもっているように感じられて楽しい。最後は「人」という哺乳類について書かれているが、あくまで哺乳類の進化史におけるひとつの過程、といった感じで必要以上に特別視をしておらず、そのフラットさがまた良かった。
    やはり今回の本も文章の方が多めなのだが、動物の挿絵や骨格の写真は『恐竜の世界史』よりも若干増えているので、姿かたちは前作よりも想像しやすいと思う。

    動物史、面白いな……。

  • 小惑星の衝突により恐竜が滅びたニッチに、哺乳類が進出し今に至るまでの興隆

    ゾウ、コウモリ、クジラへと、またはホモ・サピ エンスへと進化したもの。いや、滅びたもの。

    途方もなく壮大なロマン、、

  • 面白い。
    化石掘り苦労話→特定の哺乳類主観話→解説
    を繰り返す構成。化石掘り苦労話は退屈。あと絵が欲しい。

  • 大型哺乳類メガファウナをメインに地球時間軸でみた変遷を一気に頭に突っ込んだ感じ。恐竜ものにも共通する化石調査は興味深い。

  • ●なかなか読むのが大変だった。タイトルどおり、哺乳類がいかに発展していったかを解説した本。

  • 哺乳類が恐竜の陰に隠れて夜行性の小さな生物としてスタート、恐竜絶滅の後生存領域を広げてあらゆるところに住み、巨大化していったが、それが人間によってまた絶滅の危機にさらされている。

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著者プロフィール

1984年アメリカ生まれ。エジンバラ大学で教鞭を執る。博士号をコロンビア大学で取得後、2013年より現職。専門は恐竜などの古脊椎動物の解剖学・系統学・進化。これまでにブラジル、イギリス、中国、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、アメリカでフィールドワークを行う。また、15種を新種として記載している。著書に、Dinosaurs(Quercus 2008), Dinosaur Paleobiology(Wiley-Blackwell, 2012年), Day of the Dinosaurs(Wide Eyed Editions, 2016年), Walking with Dinosaurs Encyclopedia(HarperCollins, 2013年), The Rise and Fall of the Dinosaurs(William Morrow, 2018年〔『恐竜の世界史』黒川耕大訳、土屋健日本語版監修、みすず書房〕)などがある。

「2019年 『恐竜の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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