鋼の王国 プロイセン 上 興隆と衰亡1600-1947

  • みすず書房 (2024年12月2日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (536ページ) / ISBN・EAN: 9784622097464

作品紹介・あらすじ

プロイセンの歴史を描き切り、歴史家クラークの名を世に知らしめた出世作。プロイセンを語らずしてヨーロッパを理解することはできないと鮮やかに示した本書は、プロイセン史の決定版として輝きを放っている。
現在のオランダからリトアニアまで広がり、多くの民族、宗教、文化、社会を包み込んだプロイセンは、不毛な辺境の地から始まった。上巻は、小さな領土の集まりであったプロイセンが、ヨーロッパの大国になるまでを描く。
神聖ローマ帝国の端で誕生し、三十年戦争、大選帝侯時代、ルター派とカルヴァン派、フリードリヒ大王時代、絶対主義的統治の限界、啓蒙主義の開花、対ナポレオン戦争の敗北、官僚による改革など、プロイセンがその姿をとる過程が明らかにされる。
膨大な一次資料に基づき、多数の人物、様々な事件、対立する勢力、制度の変遷が複雑に絡む長大な歴史を、生き生きと手際よく語るのは、クラークの真骨頂と言えるだろう。ドイツ史、プロイセン史、そしてヨーロッパ史を知ろうとするさいの必読書。[全2巻]

感想・レビュー・書評

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    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/725030

  • 「プロイセン」という切り口で中世以降の欧州諸勢力の興亡について辿ることができる好著。経済についてのカバーが少ないことが気になるが、ロシア・フランス・イギリスなどとの関係も含めた外交・国の成り立ちなど、興味深い。著者による「夢遊病者」でのドイツの取り上げ方でもそうだったが、軍国主義的なニュアンスが強いプロイセンが、歴史の文脈ではそれほど特殊ではないことを教えてもらえる。

  • プロイセンの興隆を政治、軍事、外交、経済、社会、文化等多面的に記述する。プロイセン王国への道は、有能な歴代君主の意思にもよったが、幸運の所産でもあり、王国が成立しない可能性も十分あったと思われる。
    ・ホーエンツォレルン家が婚姻政策(クレーヴェ公国・マルク伯領等)、親族関係(プロイセン公国)、幸運(弟系の断絶)や限獅子エンツォレルン家が婚姻政策(クレーヴェ公国・マルク伯領等)、親族関係(プロイセン公国)、幸運(弟系の断絶)や限嗣相続の採用によって領土の拡大に成功するが、軍事力と外交能力なしでは、東西にまたがる分断した領土を保持できなかった。
    ・分断された領土では、それぞれのフェーデが力を持ち、ホーエンツォレルン家は弱体であったが、30年戦争の徹底的な荒廃によって、軍事総監察庁の創設と臨時の軍税・徴兵・練兵の恒久化が中央集権化を進めた。軍による国家形成。
    ・オランダで育ったフリードリッヒ・ヴィルヘルム大選帝侯(1640-88)の軍事・内政改革、戦争、同盟政策がラノベなみにすごかった。
    ・イスパニア継承戦争でハプスブルク家と同盟したことで「プロイセンにおける王」の称号を手に入れたが、これを利用しブランデンブルク=プロイセン二重国は、ポーランドから独立しプロイセン王国へと昇華していった。
    ・フリードリッヒ・ヴィルヘルム1世(兵隊王)の時代には、1723年には総監理府が創設され、徴税・軍事・財政を一元的に司る組織ができ、トップは合議制的な機関も置いたが、部局間の重複やある部局が飛び地の領地管理と郵便を行うなど十分な整理はされておらず、まだ個人によるところもあった。(江戸幕府の官僚制もあえて北町・南町奉行を置くところもあったが、より整理されている。)また、土地調査を実施し、封建的な様々な権利を解消し所有権を確定、収穫量を決め、貴族・小自作農間の課税のある程度の平等、課税強化を進めた。
    ・軍事改革については、徴兵制度の創設、貴族の子弟の士官学校への強制、軍装品の規格化、訓練の統一等により人口に比して強大な軍事力を作った。
    ・ルター派の地域で君主がカルヴァン派だったため、寛容にならざるを得ず、ルター派経験主義者やユグノー、富裕なユダヤ人家族すら受け入れた。また貴族に対抗して中央集権を進めた官僚の多くはカルヴァン派だった。
    ・グーツヘルシャフトにより、領主の裁判権や強制的賦役が強化された面も確かにあるが、農奴ではなく被雇用者が多く、賦役は労働地代であり、生産された穀物は商品であった。そもそも人口減少によりヨーロッパ各地からの移民にも頼ったので、賃金が安いはずがなかった。
    ・フリードリッヒ大王のシュレージエン獲得を支えたのは、相続した歩兵、国家原理、大王の戦略・戦術と幸運。「君主は国家第一の下僕である。」また、帝国裁判権からの離脱を図り、一般ラント法の制定に着手。
    ・イエナの敗戦からシュタイン・ハルデベルック改革:閣議、陸軍省・参謀本部、土地改革(賦役の廃止、貴族領地の売買、世襲農民の使用権の保持又は買取請求権)、公教育制度、都市条例(一定財産を有するユダヤ人を含む男性市民の選挙権等)

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著者プロフィール

(Christopher Clark)1960年オーストラリア生まれ。ケンブリッジ大学教授。近現代史研究をリードする歴史家の一人。著書に『夢遊病者たち』(全2巻、小原淳訳、みすず書房、2017年)、Iron kingdom: the rise and downfall of Prussia, 1600-1947, Cambridge: Belknap Press of Harvard University Press 2006, Kaiser Wilhelm II, Harlow, New York: Longman 2000などがある。

「2021年 『時間と権力 三十年戦争から第三帝国まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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