身体・自我・社会:子どものうけとる世界と子どもの働きかける世界

  • ミネルヴァ書房
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623014972

感想・レビュー・書評

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  • メルロ=ポンティの「眼と精神」の中にあった認知発達論の講義録を読んでて読みたくなって、20数年ぶりに本棚から引っ張り出した。
    ピアジェは自己中心性とかシェーマとか不完全だけどあらかじめ発達段階がシリアルにプログラミングされているようなシステムを想定していて、どうしても主知主義の匂いが付いて回るわけだけど、ワロンは自でも他でも何者でもないものから能動的に個を形成していくという開かれた系というのが根本にあり、おそらくそれは「運動」という外界(にいずれなっていくもの。とくに「他者」)への能動的な働きかけが主要な役目を果たすというなんというか生理的な発想で心身問題を乗り越えようとする。この辺りが心理学者ではなく小児精神科医(のはしり)の面目躍如という感じである。随所に見られるマルクス主義的な主張(というかマルクス主義へのおべっかに見える)も、思想の根幹をなすというより時代の空気なのかなー、とスルーできる範囲。

  •  ワロンに関する本を読むのは,これが2冊目。いよいよワロンにハマってきています。
     著者は,「はじめに」や「あとがき」でワロンの文章はとても難解だといいます。しかも,以前に日本語に翻訳されている著作はとても読めたものではないものだと,次のように述べています。
    「ワロンの理論自体の難解さはともかくとしても,アカデミズムにしか通用しない,いやもっと言えば,本来通用するはずのないものでもアカデミズムでならば通用する,そういうけったいな風潮にのっかっているようなことろがあるとすれば,それは許されるものではありません。」
     こういうことをいうと,それは全て訳者自身に跳ね返ってくることであることも自覚しています。
     本書は,章ごとに「ワロン論文の訳文と訳者の解説」というペアでまとめられています。ワロンに限らず,こういう論文というのは,専門用語がちりばめられていて,スムーズに読めるものではありません。それは,ピアジェの論文だって同じことです。それで,訳者の解説がとても役に立ちます。
     ワロンの全体像は,まだまだ私には理解できませんが,ワロンが寄って立とうとした研究の視点と子どもの捉え方は,ピアジェとの対比の中で,だんだんと分かってきました。
    「ピアジェとの対比において見るとき,全体性をそのさまざまな矛盾を含んだ姿のまま,多面性を多面性のままとらえようとするワロンの全体的志向が,鮮やかに浮かびあがってきます。彼の方法が弁証法的だと言われるゆえんは,おそらくここにあるのです。」(267p)
     

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