流動化する民主主義: 先進8カ国におけるソーシャル・キャピタル
- ミネルヴァ書房 (2013年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623053018
感想・レビュー・書評
-
開発目標10:人や国の不平等をなくそう
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99522394詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先進8ヵ国における社会関係資本のさまざまなあり方について、おもに20世紀前半から21世紀初めまでの期間を対象にそれぞれの国の研究者がまとめている。
社会関係資本という概念自体に国によって異なる位置づけが与えられており、統一した基盤に基づく比較研究といった体裁ではない。
したがって各国の状況を比較するというより、社会関係資本という概念をどのようにとらえたらよいか、さまざまな観点で考えるために役に立つ書籍といった印象を受けた。
一般的に、近代化や情報化、福祉国家の成熟といった事柄が人々の社会関係の希薄化を促進をもたらしているという言われ方がされることが多いが、本書を読むと必ずしもそうではなく、人々が求める社会関係というのは、社会の変化に合わせて柔軟に変化していっているのではないかと感じた。
昔ながらの社会関係が徐々に希薄化していっているのは事実であろうが、その分、自らの生活や精神の充足を別の何かに求めて新しい関係性を築いていく動きが、どの国でも見られているように思う。
ただ、その中で、新しい関係性を築くのに有利な立場にある人と、そこから疎外をされる人が出てくる可能性があり、そのことが社会の不安感や不平等の固定化につながる危険性も感じさせた。
本書の研究自体が行われたは21世紀の初めであり、すでに10年以上が経過している。したがって、最新の研究成果ということではないが、社会関係資本という概念を幅広くとらえなおすためには、良い本であると感じた。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:361.3//P98
-
社会関係資本=様々な社会的ネットワークとそれらに関わる相互依存の規範
旧社会主義国の民主化には不足。しかし、民主主義の先進国にもこれが変質している。
困ったときに頼りにでき、それ自体も楽しむことができ、利益のために役立てることもできる関係。
社会関係資本には、民主主義に資するものもあるが、破壊的なものもある。マイナスの外部効果をもたらす可能性があるもの。
大規模な人口移動によって、社会関係資本が変化している。
脱工業化民主主義国についての社会関係資本の変化による民主主義の変貌を研究したもの(アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、オーストラリア)
イギリス=拡大する不平等=豊かな生活と豊かな人間関係のグループと、社交的生活や政治参加が非常に限定的なグループとの格差が拡大している。
スウェーデンの勉強サークルの存在。より広い市民的関与の基盤となっている。大きな政府は、社会関係資本の敵である、という議論への反証。テレビを見て過ごす時間が少ない。
オーストラリア=米国と似ている。テレビを見て過ごす時間が増え、協会や組合参加、ボランティアが減少。
日本=社会参加は、教育レベルの低い層でより高い。
投票率の低下。正当における公衆の関与の減少=無党派層の増大。組合加入率の低下。ただし、北欧だけは例外。教会礼拝の減少。
これらは、教育レベルの低いより貧しい部分の権力拡張のために必要だが、それが減少している。
社会関係資本の世代間の差異。