マーケットデザイン入門:オークションとマッチングの経済学

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623059119

作品紹介・あらすじ

1960年代初頭に、オークションとマッチングについての萌芽的研究がなされた。それから約半世紀、これら両理論は経済学における強力な分析ツールとして成長し、実際的な制度設計問題に対処する、ひとつの学問領域として分類されるまでになった。本書でマーケットデザインと呼ぶのがそれである。実用テーマの例には、国債オークションや周波数オークションなど、経済学と比較的馴染みのあるものから、腎臓ドナーマッチングや学校選択マッチングなど、これまで経済学と縁が無かったものまできわめて幅広い。本書はそうした応用を念頭に置きつつ、マーケットデザインの理論について入門的な解説を行う。解説に際しては、なぜそれを行うのかというモチベーションを重視するとともに、平易な例に基づく直観的な理解を優先する。

感想・レビュー・書評

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  • 文字通りマーケットデザイン入門書。経済学のうち最もホットな理論分野の1つを懇切丁寧かつ平易に解説する本書は,出たなこれぞ決定版!というぐらいにすばらしい出来。『メカニズムデザイン』や『オークション理論の基礎』あたりで挫折した人には是非ともお勧めしたい1冊。ただし,なんの前置きもなく「ナッシュ均衡」という用語が出てきたりと,冒頭で謳ってるほど初学者に優しくなっているかというとそうでもなく,高校生レベルが読めるとは考え難いので0.5ダウンとした。
    ミルグロム本とか離散凸も余裕だぜっていう人は購入をお勧めしません。速やかにKrishna.Vの本に進んでください。

  • 【版元】
     オークション市場とマッチング制度の設計図を描く先端領域の入門書
     1960年代初頭に、オークションとマッチングについての萌芽的研究がなされた。それから約半世紀、これら両理論は経済学における強力な分析ツールとして成長し、実際的な制度設計問題に対処する、ひとつの学問領域として分類されるまでになった。本書でマーケットデザインと呼ぶのがそれである。実用テーマの例には、国債オークションや周波数オークションなど、経済学と比較的馴染みのあるものから、腎臓ドナーマッチングや学校選択マッチングなど、これまで経済学と縁が無かったものまできわめて幅広い。本書はそうした応用を念頭に置きつつ、マーケットデザインの理論について入門的な解説を行う。解説に際しては、なぜそれを行うのかというモチベーションを重視するとともに、平易な例に基づく直観的な理解を優先する。
    http://www.minervashobo.co.jp/book/b75930.html


    【目次】
    はじめに(2010年7月 坂井豊貴) [i-iv]
    目次 [v-viii]
    記法 [ix-xi]

    第I部 オークション
    第1章 単一財オークション 003
     1.1)はじめに
     1.2)モデル
     1.3)封印型オークション
     1.4)公開型オークション
     1.5)マイナスの評価値とビッド
     1.6)まとめ
     文献補足

    第2章 期待収入 023
     2.1)はじめに
     2.2)第1価格オークションのもとでの入札者の行動
     2.3)第1価格オークションのもとでの期待収入
     2.4)第2価格オークションのもとでの期待収入
     2.5)留保価格
     2.6)入札者の参入
     2.7)まとめ
     文献補足
     補論)確率と期待利得

    第3章 複数財オークション 039
     3.1)はじめに
     3.2)同質財の単一需要
     3.3)同質財の複数需要
     3.4)次点価格オークションと過少ビッド
     3.5)一般のケース
     3.6)VCG オークションについての補足
      3.6.1)ビッドの数
      3.6.2)架空名義入札
     3.7)まとめ
     文献補足

    第4章 予算バランス――ダブルオークションと公平分担 061
     4.1)はじめに
     4.2)ダブルオークション
      4.2.1)モデル
      4.2.2)不可能性定理
      4.2.3)マカフィーオークション
     4.3)公平分担問題
      4.3.1)モデル
      4.3.2)フェアメカニズム
      4.3.3)人々の戦略的行動と無羨望配分の実現
     4.4)まとめ
     文献補足

    第II部 マッチング
    第5章 財と財の交換 079
     5.1)はじめに
     5.2)既存住人による部屋の交換
     5.3)TTCアルゴリズムが満たす性質
     5.4)強コア配分
     5.5)インセンティブ
     5.6)新規住人への部屋の割り当て
     5.7)既存住人と新規住人による部屋の割り当て
     5.8)まとめ
     文献補足

    第6章 腎臓マッチングとペア交換 101
     6.1)はじめに
     6.2)ドナーの交換
     6.3)効率的マッチングのもとでの交換数
     6.4)まとめ
     文献補足

    第7章 一対一マッチング 111
     7.1)はじめに
     7.2)モデル
     7.3)DAアルゴリズム
     7.4)男性側DAと女性側DAが異なるマッチングを導くケース
     7.5)インセンティブ
     7.6)DAアルゴリズムの厳密な定義
     7.7)まとめ
     文献補足

    第8章 一対多マッチング 135
     8.1)はじめに
     8.2)モデル
     8.3)DAアルゴリズム
     8.4)ボストン方式
     8.5)まとめ
     文献補足

    第9章 公立学校マッチング 147
     9.1)はじめに
     9.2)モデル
     9.3)学生側からの効率性
     9.4)同順位の解消とそれに伴う問題
     9.5)まとめ
     文献補足

    関連文献 [159-167]
    索引 [169-171]

  • これから読む

  • 新進気鋭のメカニズムデザインの専門家、坂井豊貴(慶應義塾大学経済学部順教授)による良書。特別な知識がなくても読みこなすことができる。ただし、それなりに論理的思考力は必要である。

  • 今回のノーベル経済学賞の受賞理由は「安定配分理論とマーケットデザインの実証」。日本語で書かれたマーケットデザインに関する本はほぼ、これだけです。

  • 331.845||Sa3||Ma

  • オークションとは最も効率的な売買の法則である。経済学を学んでいたら一度はこの引用を耳にすることと思う。しかしそれでいて市場が私的にも社会的にも効率的な状態というのが何を以て定義され、またそれが投げかける意味というのを学ぶ機会も教材もなかったように思われる。あるとすればワルラス均衡のくもの巣理論程度であり、ベクトルで説明される市場の効率性ほど退屈で経済学への批判が指摘することを体現させたものはなかっただろう。本書はその一連のもどかしさをほぐすための慣らしに相当する本だ。

    市場がどれほど効率的かというのは産出量から技術や資本の差分でしか求められない以上、その計量は猥雑この上ない。しかし目の前で行われていることが非効率であると感じる直感は往々にして当てにできると考える。ではどうやってその問題を解決するかという方法論がゲーム理論をベースに記述されている。

    この本で最も評価したのは数学的記述、記号のチュートリアルが冒頭の章で懇切丁寧にまとめられていたところだ。マッチングの問題は高校数学で慣れ親しんだインテグラルやベクトルや幾何学とは違った独特の表現方法が使われる。読んでいて理解できない箇所があれば冒頭の手引きを見ればいいというのは専門書にはなかなかない優しさだ。

    オークション&マーケットデザインはここ20年ほどで勃興してきたジャンルだ。行動経済学やゲーム理論よりも新しい。社会科学の知見をより現実社会に応用したいと考えようとするその第一歩に本著をとってもらいたい。

  • 所属組織の合宿で研究発表をするために読んだ。
    オークション理論とマッチング理論の2部構成だが、読んだのはマッチング理論の部分だけ。

    マーケットデザインというのはゲーム理論の分野でも比較的新しい分野。

    この本はかなりわかりやすくまとまっていると思う。初学者にもおすすめ。
    日本語の文献だと、もう一冊、メカニズム・デザインという本が同じくミネルヴァ書房から出ているが、これは少し初学者には難しいかもしれない。
    今回の場合、スケジュールの関係1日でマッチング理論の全体像をつかみ、自分のモデルを考える必要があったので、本書を選択。

    ただ、少し難解な一般的な定理の証明などは割愛されていることが多いので、専門家にはこれ一冊ではもちろん不十分。

    「制度設計」の理論を本書で学び、実例を「市場を創る」で学ぶとちょうどいいんではないかな。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2017年 『大人のための社会科 未来を語るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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