岩崎弥太郎: 商会之実ハ一家之事業ナリ (ミネルヴァ日本評伝選)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623060207

作品紹介・あらすじ

岩崎弥太郎(一八三五〜八五)実業家。入獄、藩職を辞すなど腰の据わらない青年時代を過ごすが、長崎に出向いたことから、藩の貿易業務に従事する。維新後、三菱商会を発足させ、「政商の時代」を築いた。この豪快な物語は虚実ないまぜに語られてきたが、本書では資料と時代背景から、三菱発展の真相と人間岩崎弥太郎の等身大の姿に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 岩崎弥太郎の通史を学ぶための良書。
    また様々な定量的データを揃えているところも理解を助けてくれる。

    幼少期から振り返ることで、岩崎弥太郎の人物像がより明らかになってくる。
    ”豪傑”のイメージが一般的だが、慎重、神経質な一面も垣間見ることができ、その性格がビジネスにおける成功にも繋がったのだろう。

    現代人には理解し難いところだが、当時の商人の地位はとても低かったし、それは岩崎弥太郎が最後の最後まで東京での官の道に拘り続けていた理由でもある。
    彼は、ある意味、士族の中では成功者ではなかった(倒幕に関わることができなかった)。それが故にビジネスの世界で成功できたとも言える。
    貧しく、苦労したので、上昇志向が強い、ただ、守るべきプライドがなかったので、新しいビジネスの世界に自らを確立することができた。

    士族として成功しなかったとするが、渋沢栄一もそうだが、儒学の教養は持っていた。
    これは、政治の世界もそうだが、ビジネス、組織を作る上で大変重要な要素だと思う。

    もうひとつは、海外との接点。
    岩崎弥太郎は海外には行っていないが、土佐藩時代に長崎を拠点にしていた経験が大きい。
    (長崎では大隈重信とも交流があったので、人脈の面においても)
    そして海外を知ることの必要性を人一倍強く思っていた、ということは、後の岩崎家の代々社長が海外に留学していることでも明らかだ。

    以下引用
    ・弥太郎は、吉田東洋の小林塾に通い、後藤象二郎、福岡孝弟との人脈を築くことができた。

    ・岩崎は慶応4年、福沢諭吉の「西洋事情」を読み、会社組織などについての知識を得たという。

    ・大阪商会時の弥太郎の活躍:おそらく明治初年において外国人を相手に活躍した貿易家の最大の人物は弥太郎であるといっても過言ではない。
    具体的な業態は貿易業務と資金仲介などであり、後の海運業者としてのそれとは近接しているが、異なるものであった。

    ・三菱は上海航路の獲得を政府補助金付きで成功した。
    この定期航路の運航は、日本が初めて国際郵便業務に自前で参加することを意味していた。

    ・政府の補助
    →日本国としての自立(外資排除)
    →三菱は個人事業ではなく、会社としての体裁を整えることを求められる(諸規則を整備)
    →専業禁止は足枷であったが応諾(緩やかなところもあった模様)
    →大久保は財政負担を軽減すべく、独立して事業を成しえる三菱を選んだ。

    ・会社経営の特徴
    →会計制度(複式簿記)の導入
    →人材の登用(士族子弟や大学出身者)
    ワンマンではなく、裁量権を尊重。

    ・人事面でもう一つ三菱の特徴づけるのが、外国人の多さであった。明治9年の三菱の雇人では、日本人1351人に対して、外国人は388人(内、船員は355人)を数えている。

    ・政府部内で三菱攻撃の急先鋒であったのが品川弥二郎で、政府の支援を受け共同運輸を設立。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、博士(経済学)。主な著作に、『歴史としての高成長東アジアの経験』(共編、京都大学学術出版会、2019年)、『日本経済史』(有斐閣、2019 年)などがある。

「2022年 『企業類型と産業育成 東アジアの高成長史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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