政策変容と制度設計: 政界・省庁再編前後の行政 (MINERVA人文・社会科学叢書 179)

制作 : 森田 朗  金井 利之 
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623063420

作品紹介・あらすじ

1990年代からの政界・省庁再編による統治機構改革は、機能しうる政策再編をもたらし、新たな課題に適切に対応していく政策編制を生成したのか。本書は、代表的な12の政策領域を取り上げ、政界・省庁再編後の政策変容を理論的かつ実証的に分析することで、現代日本の政策活動の全体像を捉える。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、90年代半ばの「制度改革」による政界・省庁再編が、諸政策の分業・協業の形態である政策編制を社会環境の変化に対応させる「政策再編」(あるいは「政策変容」)をどの程度もたらせたのかについて考察した共同研究です。
    制度改革や省庁セクショナリズムなどの個別のテーマに関する研究は多くありますが、本書は個別の政策分野の道のりを概観し、その変化の要因を探ることで、制度改革の「効果」を計ろうとしている点に特徴があります。ちなみに、第Ⅰ部では政府全体の総合調整システムについて、第Ⅱ部では新規政策分野について、第Ⅲ部では既存政策分野について、それぞれ政策再編と制度改革との関係性が検討されていきます。

    まず、90年代半ばの橋本行革における大目的の1つであった「内閣主導体制の確立」を巡る政策再編を扱っているのが、第1章「統治機構」(伊藤正次)です。
    ここでは、橋本行革以後の統治機構内部における人的ネットワーク、内閣官房・内閣府に設置される組織の編成、与党政府間・連立与党間の政治機構などの変遷がそれぞれ辿られることで、内閣主導体制の実態が明らかにされていきます。
    結論としては、内閣主導体制の実現によって旧来の統治機構を「解編」することはできたものの、民主党政権下での揺り戻しに見られるように、新たな秩序を形成する「再編」には至っていない、といった評価が筆者によって下されています。

    次に、各章の中でも本書のテーマに忠実であり、かつわかりやすく記述されていたのが「地球環境政策」(久保はるか)を扱った第5章です。
    この章では、一連の政界・省庁再編によって、内閣主導の計画策定、環境省・経済産業省間での共管事務の増加等の効果が一定程度もたらされ、政策領域の明確化や経済的手法の導入などの政策変容に繋がったことが説明されます。
    ただ一方で、この変化が「制度化」されたものであるかは不明であり、既存の政策編制を形作る「省庁共同体」の領域拡張の結果である可能性も同時に強調されています。この辺り、諸政策のメタレベルに立つ制度改革を評価することの難しさを痛感させられました。

    他にも、「道州制論」を中央地方を包摂する日本統治システム全体の構造的問題として捉えなおした第3章「総合行政主体」や、医寮費抑制を基調とした政策再編の帰結をクローズド・システム・モデルによって多角的に論じた第12章「医療政策」など、非常に読み応えがあって面白い章ばかりでした。

    行政学系の本に慣れていないと読みにくい内容かもしれませんが、序章、第1章、第2章、第5章、終章だけでも読む価値がある一書だと思います。制度改革に関心のある方、おすすめです。

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