- 本 ・本 (500ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623067039
感想・レビュー・書評
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小室直樹への興味が高まりながら、未だ本人の著作を見ず、こうした周辺の解説本をうろちょろ。本書では、小室直樹の著書紹介と小室ゼミ生によるシンポジウムでの討論内容を収録。この討論が、テレビ番組でも見ているようで面白い。司会は橋爪大三郎、宮台真司。登壇者は、渡部恒三や副島隆彦ほか。小室直樹も魅力的だが、この辺の人たちも個性的で面白い。橋爪さんは知的でバランスが良いが、副島隆彦は攻撃的。宮台真司は、アスペルガーっぽい説話。
本書の中でやけに頭に残り、そして味わい深いと思った内容。副島隆彦と橋爪大三郎の会話だ。
副島)カール・マルクスは全てを疑えと言い残して死んだ。そして、ゲーテはもっと光をと言った。私は、全てを疑えでは済まさない。自分から攻め込んでいって暴き立てる。これ以外の自己論究は何も残らなかった。大きな枠組みの中のファクトを暴くこと以外には、もうこの世に興味も何もなくなってしまった。現実の世界は嘘だらけで、騙しだらけでみんな苦しい思いをして生きている。思想の騙し、学問の騙し、宗教の騙し、その他諸々の騙しがある。日本の学問では小室直樹がやっぱり偉大でした。小室直樹が残したたくさんの本の中に、今読み返してみても、はっと気づくことや処方箋があちこちに書いてある。
橋爪)副島さんとお話しできて、本当に良かった。小室先生のちょっと危ない部分を、副島さんはよく引き継いでいるのですね。もともとの素質が共鳴しているのかも。どうも私は、自分のノーマルな部分に退屈しているので、ちょっと危ない知性に惹かれる傾向があるみたいです。
ー 人間も社会も慣性のようなもの(惰性)をもっていて、急には変われず、既に確立したパターンを特に理由がない限り保っていくと言う特性を持っている。しかしその表層の現象は目まぐるしく変わっている。表層の現象の背後に隠れた変わらない実質は何か。その変わらない物質を構造と呼ぶ。小室直樹が行う。仕事の基軸としては、パーソンズに代表されるような合理主義。構造-機能分析が典型的。人間は徹底的に合理的であろうとする場合に、その動機は合理的なものではありえない。
本書を読むと、あらゆる関係者が皆口々に小室直樹が天才であったと言う。また、小室直樹の本を読めば、気付かなかった論理に出会える事を強調する。益々、小室直樹を読まねば。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会学者である小室直樹さんが2010年に亡くなられた際に、弟子筋の人たちが翌年2011年に追悼シンポジウムを開き、その内容をまとめた本。
小室先生の主な著書の一覧や解説、著作目録、略年譜まで付いてる。小室先生に何か少しでも学びたい、と考える者にとって、この本は必読の書と言える。
シンポジウムでの参加者の登壇(発言)内容や、対談が何本か掲載されているが、本当に色んな人に影響を与えた方なんだな、ということがわかる。
そして、改めて小室先生の博学多才に驚く。
数学、物理学を経て、社会科学のこれだけ広い範囲を学べるのは信じられない。皆さんが「天才」と言うのも当然。しかし、これが本来の「学者(知識人)」の姿だと思う。
あと、蛇足だけど、副島隆彦さんの宮台真司さんに対する発言が面白かった。私は昔から宮台真司さんに影響を受けていて、マル激というビデオニュースも15年以上視聴している。小室先生も宮台さん経由で知った。なので、宮台さんの本とかも何冊も読んでいるが、まぁ、たしかに副島さんの言う通り、宮台さんの本は難解でわかりづらい。3行で要約して、と言いたくなる気持ちもわかる(笑)そして、私は副島さんの言う通りだとも思う。難しく話す必要がないことを、わざわざ難解な言葉で話す意味はない。対象となる読み手を遠ざけるだけだ。知識人と一般市民との間に壁を作る結果にもなる。たしかに宮台さんはそういう性質がある。もう癖になってて変えられないんだろうな・・話言葉では結構わかりやすく話すので、できないわけがないし。すでに宮台さんも60歳を超えて、正面からまともな批判をできる人が少なくなっているようだが、同じ門下で副島さんのような人がいるのは素晴らしいな、とも感じた。
この本に、学者という立場ではなく、また直接小室先生に教えてもらった人以外でも、先生の本を読んでその教えを活かそうとする者はみな弟子である、みたいな言葉が出てくる。そう考えると私も小室先生の弟子なんだ、と嬉しく思う。
小室先生が生涯かけて行おうとした社会科学の理論構築は、学者ではない私には不可能だが、一社会人としてその教えを自分の血肉にして今の社会を生きていきたい、と思う。
これからも、小室先生の本で学ばせてもらいます。 -
内容は、小室直樹記念シンポジウムのまとめといくつかの寄稿論文となっています。
機能-構造主義、エートス、比較宗教学、小室直樹の足跡を辿りながら、天才の残した学問土台学たるメソトロジーの射程と地平を振り返る訳ですが、
機能不全に陥る構造的欠陥を経済学の数理モデルを模範に、機能関数におとすetc...もう凄すぎてさっぱり付いて行けません。
しかし、徹底的合理的思考の背後には、非合理な情念があると言った言葉や一般向けに出された数多くの著作には、声が出てしまうほどに、目からウロコであり、どれだけ助けていただいたか分かりません。
本当に学問を愛し、学問に愛された素晴らしい方に出逢えたことは幸運であり、喜びでした。
ただひとつ残念なことは、小室先生の著作が手に入りにくいということです、復刊を願ってやみません。 -
この本は2011年3月に行われた小室直樹博士の記念シンポジウムの内容をまとめたものである。これまで小室博士の著作をいろいろと読んできたが、小室博士自身のことはあまりよく知らなかったので、本書を読んでみた。
まず「やはり小室博士は天才である」と改めて認識した。博士の博学ぶりはこれまでの著作から理解していたつもりだったが、その学識の広さは尋常ではない。数学、物理学、経済学、心理学、社会学、統計学、人類学、経済史学、法社会学、政治学等の最先端を学び、社会学全体の統一的な理論構築を目指していたという。残念ながら統一理論は未完のまま終わったが、世界的に評価の高い研究成果を多数残されている。このような方がアカデミズムで活躍する場を与えられなかったのは残念というだけでは済まされない。国家的な損失と言えよう。
次に「小室博士の奇人・変人ぶりは噂以上である」ことに驚いた。巻末に小室博士の略年譜が掲載されているが、これは博士の素顔を伝える貴重な資料である。若いときに「武勇伝」を残す人は珍しくないが、30~50代でこれだけの「武勇伝」を残すとさすがに奇人・変人と言われても仕方ないとも思うが、社会性と両立しがたいほどの学究心を持たれていたのがと理解したい。
そして「小室博士は学者であるだけでなく、優れた教育者でもある」ことが理解できた。博士はアカデミズムで職をもたなかったが、小室ゼミナールという私塾をボランティアで開催されていた。博士は多くの研究者の育成に貢献され、本書も博士に薫陶を受けた方々によって執筆されている。小室博士は理想の教育者として吉田松陰を挙げておられるが、博士自身も松陰の教育を実践しようとされていたのだろう。
本書は記念シンポジウムの内容を収録してはいるが、出席者の発言よりも在りし日の小室博士を伝える本として価値がある。そして橋爪大三郎氏による「小室直樹博士の著作」はこれから博士の著作を読む方にとってよいガイドラインになるだろう。村上篤直氏が編纂する「小室直樹文献目録」はweb上に閲覧できるため、興味のある方はこちらも参照されたい。
小室直樹文献目録
http://www.interq.or.jp/sun/atsun/komuro/index.html -
多くの人々に惜しまれつつ、2010年9月に亡くなった社会科学者・小室直樹博士。政治学者、社会学者として、学際的な活躍をされた博士の業績を、小室博士の教えを受けた社会学者らが振りかえる。 第Ⅰ部は、学者小室直樹の実像をまとめながら、著作からその業績を振り返る。第Ⅱ部は、2011年3月6日に東京工業大学で行なわれた、小室直樹博士記念シンポジウムを完全採録。第Ⅲ部は、小室博士の仕事をめぐる対談。宮台真司氏、副島隆彦氏、大澤真幸氏を橋爪大三郎氏がインタヴューする。併せて、小室直樹博士略年譜、小室直樹博士著作目録を付録として収める。
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社会学者の橋爪大三郎が、小室門下生の小室評を編集したもの。
宮台真司、大澤真幸、副島隆彦、盛山和夫は分かるが、同世代の盟友が、渡部恒三であったことは新たな発見だった。 -
小室直樹氏の著作を熟読した後にもう一度振り返りたい。
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小室直樹という稀代の学者がどのような経緯で出現し、日本の社会学にどういった影響を与えたのかが良く分かる一冊であった。
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【目次】
まえがき i
第Ⅰ部 社会科学者・小室直樹博士
第一章 小室直樹博士の学問と業績 橋爪大三郎 003
第二章 小室直樹博士の著作 橋爪大三郎 027
第Ⅱ部 小室直樹博士記念シンポジウム――社会科学の復興をめざして
第三章 小室博士の学問世界――シンポジウム第Ⅰ部・理論編 093
司会・宮台真司
報告者・橋爪大三郎、盛山和夫、志田基与師、今田高俊、山田昌弘、大澤真幸、伊藤真
追加コメント
1 小室さんの理論プロジェクトについて 盛山和夫 174
2 小室直樹と数理社会学 今田高俊 179
3 時代とシンクロしつつそこから溢れ出る学者 大澤真幸 181
第四章 小室博士と現実政治――シンポジウム第Ⅱ部・実践編 189
司会・橋爪大三郎
報告者・宮台真司、副島隆彦、渡部恒三
討論者・関口慶太、村上篤直
第Ⅲ部 対論 小室直樹博士を語る
第五章 小室直樹と吉本隆明 副島隆彦・橋爪大三郎 261
第六章 小室直樹博士と同時代 宮台真司・橋爪大三郎 295
第七章 小室直樹博士と社会学 大澤真幸・橋爪大三郎 333
第八章 対論を終えて 371
1 小室先生に習ったこと 副島隆彦 371
2 小室理論の限界は小室的方法でしか越えられない 宮台真司 375
3 社会科学的な知の複数のレイヤー 大澤真幸 385
あとがき 389
小室直樹博士略年譜 59
小室直樹博士著作目録 07
人名・事項索引 01
著者プロフィール
橋爪大三郎の作品





