小室直樹の世界―社会科学の復興をめざして

  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623067039

感想・レビュー・書評

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  • 社会学者である小室直樹さんが2010年に亡くなられた際に、弟子筋の人たちが翌年2011年に追悼シンポジウムを開き、その内容をまとめた本。

    小室先生の主な著書の一覧や解説、著作目録、略年譜まで付いてる。小室先生に何か少しでも学びたい、と考える者にとって、この本は必読の書と言える。

    シンポジウムでの参加者の登壇(発言)内容や、対談が何本か掲載されているが、本当に色んな人に影響を与えた方なんだな、ということがわかる。

    そして、改めて小室先生の博学多才に驚く。
    数学、物理学を経て、社会科学のこれだけ広い範囲を学べるのは信じられない。皆さんが「天才」と言うのも当然。しかし、これが本来の「学者(知識人)」の姿だと思う。

    あと、蛇足だけど、副島隆彦さんの宮台真司さんに対する発言が面白かった。私は昔から宮台真司さんに影響を受けていて、マル激というビデオニュースも15年以上視聴している。小室先生も宮台さん経由で知った。なので、宮台さんの本とかも何冊も読んでいるが、まぁ、たしかに副島さんの言う通り、宮台さんの本は難解でわかりづらい。3行で要約して、と言いたくなる気持ちもわかる(笑)そして、私は副島さんの言う通りだとも思う。難しく話す必要がないことを、わざわざ難解な言葉で話す意味はない。対象となる読み手を遠ざけるだけだ。知識人と一般市民との間に壁を作る結果にもなる。たしかに宮台さんはそういう性質がある。もう癖になってて変えられないんだろうな・・話言葉では結構わかりやすく話すので、できないわけがないし。すでに宮台さんも60歳を超えて、正面からまともな批判をできる人が少なくなっているようだが、同じ門下で副島さんのような人がいるのは素晴らしいな、とも感じた。

    この本に、学者という立場ではなく、また直接小室先生に教えてもらった人以外でも、先生の本を読んでその教えを活かそうとする者はみな弟子である、みたいな言葉が出てくる。そう考えると私も小室先生の弟子なんだ、と嬉しく思う。

    小室先生が生涯かけて行おうとした社会科学の理論構築は、学者ではない私には不可能だが、一社会人としてその教えを自分の血肉にして今の社会を生きていきたい、と思う。

    これからも、小室先生の本で学ばせてもらいます。

  • 内容は、小室直樹記念シンポジウムのまとめといくつかの寄稿論文となっています。
    機能-構造主義、エートス、比較宗教学、小室直樹の足跡を辿りながら、天才の残した学問土台学たるメソトロジーの射程と地平を振り返る訳ですが、
    機能不全に陥る構造的欠陥を経済学の数理モデルを模範に、機能関数におとすetc...もう凄すぎてさっぱり付いて行けません。
    しかし、徹底的合理的思考の背後には、非合理な情念があると言った言葉や一般向けに出された数多くの著作には、声が出てしまうほどに、目からウロコであり、どれだけ助けていただいたか分かりません。
    本当に学問を愛し、学問に愛された素晴らしい方に出逢えたことは幸運であり、喜びでした。
    ただひとつ残念なことは、小室先生の著作が手に入りにくいということです、復刊を願ってやみません。

  •  この本は2011年3月に行われた小室直樹博士の記念シンポジウムの内容をまとめたものである。これまで小室博士の著作をいろいろと読んできたが、小室博士自身のことはあまりよく知らなかったので、本書を読んでみた。
     まず「やはり小室博士は天才である」と改めて認識した。博士の博学ぶりはこれまでの著作から理解していたつもりだったが、その学識の広さは尋常ではない。数学、物理学、経済学、心理学、社会学、統計学、人類学、経済史学、法社会学、政治学等の最先端を学び、社会学全体の統一的な理論構築を目指していたという。残念ながら統一理論は未完のまま終わったが、世界的に評価の高い研究成果を多数残されている。このような方がアカデミズムで活躍する場を与えられなかったのは残念というだけでは済まされない。国家的な損失と言えよう。
     次に「小室博士の奇人・変人ぶりは噂以上である」ことに驚いた。巻末に小室博士の略年譜が掲載されているが、これは博士の素顔を伝える貴重な資料である。若いときに「武勇伝」を残す人は珍しくないが、30~50代でこれだけの「武勇伝」を残すとさすがに奇人・変人と言われても仕方ないとも思うが、社会性と両立しがたいほどの学究心を持たれていたのがと理解したい。
     そして「小室博士は学者であるだけでなく、優れた教育者でもある」ことが理解できた。博士はアカデミズムで職をもたなかったが、小室ゼミナールという私塾をボランティアで開催されていた。博士は多くの研究者の育成に貢献され、本書も博士に薫陶を受けた方々によって執筆されている。小室博士は理想の教育者として吉田松陰を挙げておられるが、博士自身も松陰の教育を実践しようとされていたのだろう。
     本書は記念シンポジウムの内容を収録してはいるが、出席者の発言よりも在りし日の小室博士を伝える本として価値がある。そして橋爪大三郎氏による「小室直樹博士の著作」はこれから博士の著作を読む方にとってよいガイドラインになるだろう。村上篤直氏が編纂する「小室直樹文献目録」はweb上に閲覧できるため、興味のある方はこちらも参照されたい。

    小室直樹文献目録
    http://www.interq.or.jp/sun/atsun/komuro/index.html

  • 多くの人々に惜しまれつつ、2010年9月に亡くなった社会科学者・小室直樹博士。政治学者、社会学者として、学際的な活躍をされた博士の業績を、小室博士の教えを受けた社会学者らが振りかえる。  第Ⅰ部は、学者小室直樹の実像をまとめながら、著作からその業績を振り返る。第Ⅱ部は、2011年3月6日に東京工業大学で行なわれた、小室直樹博士記念シンポジウムを完全採録。第Ⅲ部は、小室博士の仕事をめぐる対談。宮台真司氏、副島隆彦氏、大澤真幸氏を橋爪大三郎氏がインタヴューする。併せて、小室直樹博士略年譜、小室直樹博士著作目録を付録として収める。

  • ☆最大の功績は小室ゼミによる影響だろうな。
    (主要著作)
    社会動学の一般理論構築の試み 思想、社会科学における行動理論の展開 思想、構造ー機能分析の論理と方法 社会学講座第1巻 東大、『法社会学講座 川島編 第4巻』の第V章「規範社会学」
    危機の構造 中公文庫で橋爪が解説、『ソビエト帝国の崩壊』、新戦争論、日本教の社会学、勤勉の哲学 PHP文庫、あなたも息子に殺される、小室直樹の中国原論、資本主義中国の挑戦、中国共産党帝国の崩壊、小室直樹の中国原論、痛快!憲法学、『日本人のためのイスラム原論』、『日本人のための宗教原論』、天皇恐るべし、田中角栄の呪い、三島由紀夫が復活する、
    社会学における統計的モデルをめぐる諸問題 現代社会学1巻2号
    (その他)数学原論、『論理の方法』、『硫黄島栗林忠道大将の教訓』、資本主義原論、民主主義原論、経済原論

  • 小室直樹氏の著作を熟読した後にもう一度振り返りたい。

  • 小室直樹という稀代の学者がどのような経緯で出現し、日本の社会学にどういった影響を与えたのかが良く分かる一冊であった。

  • 【目次】
    まえがき i

    第Ⅰ部 社会科学者・小室直樹博士
    第一章 小室直樹博士の学問と業績 橋爪大三郎 003
    第二章 小室直樹博士の著作 橋爪大三郎 027

    第Ⅱ部 小室直樹博士記念シンポジウム――社会科学の復興をめざして
    第三章 小室博士の学問世界――シンポジウム第Ⅰ部・理論編 093
         司会・宮台真司 
         報告者・橋爪大三郎、盛山和夫、志田基与師、今田高俊、山田昌弘、大澤真幸、伊藤真
         追加コメント
        1 小室さんの理論プロジェクトについて 盛山和夫 174
        2 小室直樹と数理社会学 今田高俊 179
        3 時代とシンクロしつつそこから溢れ出る学者 大澤真幸 181                        
    第四章 小室博士と現実政治――シンポジウム第Ⅱ部・実践編 189
         司会・橋爪大三郎
         報告者・宮台真司、副島隆彦、渡部恒三
         討論者・関口慶太、村上篤直

    第Ⅲ部 対論 小室直樹博士を語る
    第五章 小室直樹と吉本隆明 副島隆彦・橋爪大三郎 261
    第六章 小室直樹博士と同時代 宮台真司・橋爪大三郎 295
    第七章 小室直樹博士と社会学 大澤真幸・橋爪大三郎 333
    第八章 対論を終えて 371
        1 小室先生に習ったこと 副島隆彦 371
        2 小室理論の限界は小室的方法でしか越えられない 宮台真司 375
        3 社会科学的な知の複数のレイヤー 大澤真幸 385

    あとがき 389
    小室直樹博士略年譜 59
    小室直樹博士著作目録 07
    人名・事項索引 01

  • ――――――――――――――――――――――――――――――
    ひとつの学問領域にとどまって、わずかな限界生産性を追い求めるよりも、領域分野をまたがって、新天地で大きな限界生産性を追及することのほうが、自分にとっても人びとにとっても有益である、とするのが小室博士の思考法・発想法である。(橋爪)9
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    小室博士だったら、この問題を、いまの社会を、どう見るだろうというふうに発想することができる。それは私たちの、大きな財産だろう。(橋爪)99
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    意識の面で全然近代化していないのに、制度だけ近代的なふりをしている。このフィクションというのが、日本のアノミーの源泉だっていうふうにまとめていらっしゃったと思うんですよ。(志田)157
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    日本人が海外留学する場合は丸腰で渡米するのに対し、中国人や韓国人はすでにアメリカに存在する血縁ネットワークのリソースを頼って渡米してくるから、全く勝負にならないのです。

    こうしたホームベースを持つ者は、動機づけにおいても、使えるリソースにおいても、圧倒的に強いですね。163

    かつては資本主義化に適合的に見えたエートスの優位性を、すでに失っていると診断されたのではないかと思うわけです。164

    空気に縛られる日本的エートスは、時間空間の長い共有という近接性を前提とします。従って、グローバル化によって社会的流動性が上がると、近接性が低下するので、空気による縛りが機能しにくくなります。(宮台)194
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    いまの社会のなかで愛国主義者であるためには、近代主義者でなくてはいけないんだなあと改めて思いました。(山田)170
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    サムエルソンは言った。"You will have a hard time for ten years, but after that, the world"。ならば、と小室は、自らのプランを実行することを決意する。436
    ――――――――――――――――――――――――――――――

  • 小室直樹氏のすごさを実感する一冊。
    編者の橋爪大三郎氏の苦労に感謝です。

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著者プロフィール

宮台真司:1959年宮城県生まれ。社会学者、映画評論家。東京都立大学教授。1993年からブルセラ、援助交際、オウム真理教などを論じる。著書に『まちづくりの哲学』(共著、2016年、ミネルヴァ書房)、『制服少女たちの選択』(1994年、講談社)、『終わりなき日常を生きろ』(1996年、筑摩書房)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(2014年、幻冬舎)など。インターネット放送局ビデオニュース・ドットコムでは、神保哲生とともに「マル激トーク・オン・ディマンド」のホストを務めている。

「2024年 『ルポ 日本異界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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