戦争という見世物: 日清戦争祝捷大会潜入記 (叢書・知を究める 2)
- ミネルヴァ書房 (2013年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623067879
感想・レビュー・書評
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日清戦争という、国民皆兵の国家建設を進める日本が最初に経験した対外戦争が、いかに国民の心をひとつにしたか、敵国人を蔑み笑ったか、そしてメディアがいかに煽ったか。さらに、いかにそれをさっぱりと忘れてしまったか。「見世物」の専門家である著者が、タイムスリップして明治の街を歩き、いかに人々が戦争に沸き上がっていたかを描く。
タイムスリップしてインタビューしたりするぐらいなので、書き方は柔らかく、人々の様子もメデタイというか。
国がいかに国民を煽ろうとするか、メディアはその片棒を担ぐのか、そして国民もその気になりやすいか。100年ほどたっただけで、僕らはすっかり変わったような気になっているが、近隣の国はもしかしたらこんな状態にあるのかもしれない。我が国だって、国民は情報を掴んでいる気になっているが、ほとんどは一次情報ではないし、いわゆる「祭り」は作られているかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日清戦争中、上野で挙行された祝捷会場の様子
著者は「見世物研究の第一人者」ということで、このイベントを通じて、まだ貧しく発展途上の東京の姿がディティールも含めて詳しく書かれる。
会場で提供された弁当が、冬とはいえ冷蔵庫がない時代に一昨日焚いた飯とはね…
(さすがに不評だったそうです)
話題のテーマが
・見世物というイベント
・東京の都市文化
・戦争そのもの
と内容が飛びがちで、まとまりに欠ける感じもした。
図書館蔵書 -
日清戦争に勝利し、日本中が沸いた明治二七年一二月九日。上野公園不忍池付近で開催された、「日清戦争戦捷祝賀大会」にタイムスリップ。清国軍艦撃沈の劇、大きな凱旋門……その祝賀大会の様子を史実に沿い、日本の見世物研究の第一人者が生き生きと活写する。
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木下直之『戦争という見世物』ミネルヴァ書房、読了。日清戦争に勝利し、日本中が沸いた明治二七年一二月九日に開催された日清戦争祝捷大会に美術史家の著者が潜入し、その情景を実況したのが本書。SFチックな構えとは裏腹に、明治国家がいかに国民を舞い上がらせたのか浮かび上がらせる。
著者は当時の報告書や写真帖、そして報道から「見世物」を立体的に描き出す。初の対外戦争は連戦連勝だったが、その高揚感が伝わってくる。そしてこの一体となる高揚感こそ近代日本のナショナリズムの原型となる(その暗転が日露戦後だろう)。
川上音二郎の戦争劇から不忍池での「黄海海戦」の再現(池に模造の定遠、致遠を浮かべて焼撃というのにはフイタ)まで--。ことあるごとに「反日」デモを嗤う風潮が強いがそれは天ツバというもの。歴史何を学ぶのか。本書の意義は大きい。