宗教とは何か:根源的生命への帰一 (小林道憲〈生命の哲学〉コレクション)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623077298

作品紹介・あらすじ

宗教は自己を超える大いなるものへの畏怖と帰一の感情である。この原初的な宗教感情を、原始宗教や古代宗教の底流に見、宗教が誕生してくる源泉を探る。より高度な宗教的世界観を創造した仏教やキリスト教など高度宗教は、この宗教感情を、死や苦、罪や悪の自覚を通してより深めた。あらゆる宗教に一貫して流れる宗教的真実の意味を理解し、宗教の本質について考察する。生命論的世界観からの宗教の解釈。

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  • 『宗教とはなにか―古代世界の神話と儀礼から』(1997年、NHKブックス)と『宗教をどう生きるか―仏教とキリスト教の思想から』(1998年、NHKブックス)の2作に加筆訂正をくわえて収録しているほか、2編の論考が収められています。

    『宗教とはなにか』は、世界各地の神話を紹介しつつ、同時に、タイラーの「アニミズム」やマレットの「アニマティズム」、あるいはオットーやエリアーデの考察した聖なるものの顕現など、宗教学の諸成果を参照して、宗教が大いなる宇宙生命への畏怖と帰一の感情だとする著者の主張が展開されます。さらに著者は、大いなる宇宙生命への畏怖に始まった宗教が、仏教やキリスト教といった創唱宗教に至ると、人間の悪と罪に対する深い自覚が生まれてきたと論じています。

    『宗教をどう生きるか』は、「続・宗教とは何か」というタイトルで収められており、仏教とキリスト教の思想についてわかりやすく解説されています。著者は「まえがき」で「自覚型宗教」と「信仰型宗教」の区別をおこなっています。前者は原始仏教や大乗仏教の相当部分をふくむもので、死や苦の問題から出発し、宇宙の根源的場に自己を放下することで、宇宙的な生命の働きが自己自身に内在していることを自覚することによって解脱や悟りが得られるとされています。これに対して後者は、キリスト教や浄土系仏教に代表されるもので、罪の意識から出発し、そこからの救いを神や仏などの絶対者に自己自身をまかせることが説かれています。本書はこうした二つの種類の宗教のありようがとりあげられていますが、両者とも宇宙の根源的生命への帰一を根本としていると述べられており、この点に著者の宗教のとらえかたが明瞭にうかがわれるように思います。

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著者プロフィール

小林道憲(こばやし・みちのり)
1944(昭和19)年 福井県生まれ。
1972(昭和47)年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。
現在、福井大学教育地域科学部教授、
麗澤大学比較文明文化研究センター客員教授。
専攻は哲学・文明論。

主な著書
〈哲学研究〉
『ヘーゲル「精神現象学」の考察』『生命と宇宙』
『複雑系社会の倫理学』『宗教とはなにか』
『宗教をどう生きるか』『複雑系の哲学』
『生命の哲学—〈生きる〉とは何かということ』(人文書館)
〈現代文明論〉
『欲望の体制』『われわれにとって国家とは何か』
『近代主義を超えて』『20世紀を読む』
『二十世紀とは何であったか』
『不安な時代、そして文明の衰退』
『対論・文明のこころを問う』(共著)
〈比較文明論・日本研究〉
『古代探求』『古代日本海文明交流圏』
『文明の交流史観』等がある。

「2008年 『生命(いのち)の哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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