徳川家康:われ一人腹を切て、万民を助くべし (ミネルヴァ日本評伝選)
- ミネルヴァ書房 (2017年1月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623078691
作品紹介・あらすじ
三河の弱小大名に生まれたものの、持前の努力と強運、そして家臣団に支えられてついに天下人となった徳川家康。本書では、その知られざる人物像を析出しつつ、卓越した戦略と政略、そして政治思想を解明する。
感想・レビュー・書評
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徳川家康は賢く先見の目があり運も強い。その一方で、弱さや狡猾さもあって失敗もたくさんする。そんなそれらすべてをひっくるめて魅力のある、そして偉大な人物だと思う。
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信長や秀吉の伝記的研究が更新され続けているのに対し、家康は中村孝也による『徳川家康文書の研究』『徳川家康公伝』という決定版が存在するため、その評伝・個人研究は家康の歴史的重要性に比して多くはない。本書は久々の歴史学研究者による家康単独の評伝としてそれだけで価値があり、通説や俗説を塗り替えようとする意欲もあるが、内容には疑問も少なくない。特に源氏への改姓時期や「豊臣氏」への改姓の存否をめぐる問題、征夷大将軍の「職掌」と主従制の関係に関する考察を通して、豊臣政権期にすでに源姓将軍への志向を認め、しかも豊臣「関白体制」に包摂可能な「事実上の将軍制」が成立していたという新解釈は、史料批判の妥当性も含め、物議を醸すであろう。家康の外交を「非戦・善隣」とみなしそれを家康個人の理念に還元する見方や、慶長8年の郷村掟に見える百姓の居住地移動「自由」条項の素朴すぎる解釈なども、時代状況の中でより精緻な検証が必要だと思われる。