ルポルタージュイスラムに生まれて:知られざる女性たちの私生活

  • ミネルヴァ書房
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感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623090211

作品紹介・あらすじ

世界で最も男女平等の実現が遅れていると言われる中東やアフリカのイスラム圏で、知られざる女性の私生活に密着取材したルポルタージュ。勉学、恋愛、結婚、仕事、家族、子供――。女性たちは、成長とともに直面する課題や問題にどう向き合い、どのように乗り越えようとしているのか。イスラム教の教えが社会生活に深く関わる中東事情を分かりやすく解説し、日本人になじみの薄い世界の実像を紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に読み易いの知的好奇心をそそる面白さと、当然のこととして知っておくべき処々の事実を教えてくれる1冊だった。思いの外時間が掛った読書ではあったが。

    かつて、「宗教人口で言うと1位のキリスト教を脅かす増加の一途をたどるイスラム教」のコラムを読み、驚いた記憶が有る。改めて確認しても前者24億、後者18億とある。

    有史以前から耐える事は一瞬しかなかった戦、有史以降も宗教に因を発した戦も多い。そしていま世界中を悩ます一因になっているイスラエル諸国と中東の火種。興味ある以前に、知っておかねばならぬと手に取った。

    たまたま«ホテルムンバイ»の映画を見ても「アッラーの思し召し」「神の御意に従う」「ジ・ハード」等々宗教に洗脳される意味やそれ以前に山積みの怖さ・・南西一族の全てがぶら下がっている。

    倉持さんは実に骨格を明快に組み立てており、読みつつ、「女性の一生について回る一里塚」が全て宗教で成り立っている事を感じさせられた。

    とはいうものの、島国日本の何にも知らないおばちゃんが読んだだけでは「偏った見方」になっていないとは言えない。現に日本でも風習や慣習を守ることに生きがいを感じ、夫とその一族に庇護されていることで所属の喜びを感じて死んでいく女性がかなり多いことは確かである・・私の世代でも結構いる。

    7Cに生を受けた宗教の21Cの姿が同じである事に異を唱えて行く勇気を持った女性が思いの外多いことに驚くと共に、今後を見つめて行きたい。

    男女平等を原則とした宗教、男性が女性を守ることを一義とする・・しかも「性弱説」を基とする宗教とは?!
    それを逆手に取った中近東の男どもが勝手な解釈を推し進めてきたとしか思えない読後だった。

  • 非常に読みやすかったです。

    イスラム教について私が興味を持ったのは、トルコに旅行した際にトルコ人の身分証には宗教が記されていると聞いたとき。
    我々日本人のように宗教にあまり関心のない人が多い国に住んでいると、正直理解できないことが多いと感じて学びたく思った。

    イスラム教では女性は庇護されるべき存在であり、こうした実態があることは何となく知っていた。ただ、いい面でも悪い面でも想像を超えていた。
    サウジやイランあたりでは、トルコとかと違って女性の服装は完全に黒色ばっかりだと思っていたので、服装を楽しむ女性が増えてきていることにはいい意味で驚かされた。黒色が1番のおしゃれって思う人がいることにはなんとなく理解できたなあ

    一方で、女性が性被害に遭うことが多すぎるように思った。親族からとかトラウマもん、、、
    庇護されるべき存在、ってのは制定当時にはすごいいいことやったんやろうし、今でもいい側面もいっぱいもたらしてると思う。ただ、それを理由に無理やり結婚させたりとかってほんまに時代錯誤やなあと
    あと体の形わかったら誘惑されるっていや男の意志どんなけ弱いねん草

  • 昔からイスラム教圏に何となく関心がある。でもなぜか中東地域はじめイスラム諸国の政治にはあまり関心がなく、興味があるのは文化や生活。美しいユニークな文化である一方、自分と縁遠くて謎めいているところに惹かれているのかも。本書は、イスラムにまつわる様々な物事の中でも、特に謎に包まれがちなイスラムの女性たちの素顔に迫るもので、まさに私の興味に一致する本だった。

    当たり前なのだが、「イスラムの女性」と言っても一括りにできるものではなく、ライフステージや生まれ育った国・地域によっても様々。読売新聞のルポとして綴られた本書の強みは、幅広い地域で数多くの女性に取材を重ね、そのそれぞれから丹念に話を聞き出し、単なるグループとしてではなく個々人の個性鮮やかに彼女たちの生活を描き出したことではないか。
    彼女たちの抱える悩みや葛藤は、根っこのところでは日本人女性が抱えるものとそんなに違わないのかもしれないと感じた。
    伝統を大事にしたい気持ちもあるけど、伝統によって差別されていることには腹が立つ。
    流行のおしゃれもしたいけど、親には心配かけたくない。
    結婚したい、でも仕事もしたい。
    家族を作ることにも憧れるが、もっと広い世界を見たい。

    一方的にミステリアスだと思っていたイスラムの女性たちに少し親近感を感じ、もっと彼女たちや彼女たちの文化について知りたくなった。

  •  よくここまで取材したなあ。
     制約があるなりにオシャレを楽しむ女性から、悲惨な状況に置かれる女性まで。
     全体的に女性にまったく権利がなく、道具として扱われている。身体が出ていると男性を誘惑することになるとか、男性の意思の弱さを女性のせいにしている。
     ただの差別じゃなく、宗教上の教義が絡んでいるから余計に複雑。コーランに「男たちは女たちの上に立つ管理人である」と書かれているのは衝撃的で、悲しくなる。支配しやすいからなのかな。
     結婚まで処女でいないといけなくて、処女じゃなかったら離縁されるのも意味がわからない。

  • 【内容紹介】世界で最も男女平等の実現が遅れていると言われる中東やアフリカのイスラム圏で、知られざる女性の私生活に密着取材したルポルタージュ。勉学、恋愛、結婚、仕事、家族、子供――。女性たちは、成長とともに直面する課題や問題にどう向き合い、どのように乗り越えようとしているのか。イスラム教の教えが社会生活に深く関わる中東事情を分かりやすく解説し、日本人になじみの薄い世界の実像を紹介する。

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000948323

  • イスラムの女性は"一人の人間"として生きてゆくことを望むが、それを阻む現実がある


    前提:
    イスラム教には男女平等を原則としつつ、男性は女性を守るという思想であり、性を巡る倫理の根幹がある

    (あとがきから)
    > イスラム教はよく「性弱説」を前提とした宗教だと言われ、「人間は欲求に勝てない」という弱さを認めるからこそ、男女の空間を分けたり、女性の服装を規定したりする。

    *一言部分の一人と言う部分は、対等であるとか平等などを指す意味として使っています。

    まず第一に思ったことは、前提にあるように男女平等を原則としているのに、皺寄せを女性側に負担させているのではないか、ということだった。

    例えば人間は欲求に勝てないので、女性が男性を誘惑させるものとして髪、体のシルエットがでない衣装を着させたり、女性の方が男性より性欲が強いからと女性器が性欲を司っていると考え割礼を行う、ということがある。

    日本で仏教の教えが身近にあった私からすれば、片側に負担を強いるのではなく、まず弱い意識を改善させ、男性(女性も)の性欲を律することを優先させるべきなのではないかと思う。

    この本を読んでも、読む前から思っていた中東の男性の男性の、自分の性についての考えが甘いのでは?との考えは変わらなかった。

    本には、女性は処女であることが求められ、初めての経験で出血しなかったことが原因で社会から切り捨てられることもある。とあるが、それでは、初めてでも出血しなかったらその人が人間としてちゃんとした存在ではないと言っているものではないか?本にも出血することは少なく、今は出血しない女性も多いとある。無知による皺寄せは女性が負ってしまうのである。

    また、勝手に解釈することもあるようで、イスラム教は婚外交渉を認めていないが、それならば結婚したい相手に対して性的暴行をしてしまえば、女性は自分と結婚するしかなくなる、と言うような考えは同じ男性としてはとても信じられなかったし、認めたくなかった。それでも、このような事例であっても女性側が男性側を誘惑したとして、男性側の罪は軽く、女性側の罪は重く最悪死罪になるということが多いというので絶句した。

    最近では、MeToo運動や、ポリコレ関連の話題が多くなっているが、

    私がこのような運動で懸念していることは、その主張について正しく冷静に判断できているのか、嘘が入って偏見が混じっていないかということである。

    例えば、他者を貶めるために嘘を言うことを言語道断であるし、ポリコレについては、例えば最近では配慮しすぎてジャンヌダルクが肌の色が濃い人が演じたり、マーベルの新作がユニセックスなデザインを意識しすぎてヒーローがマーベルらしさがなくなったことなどがある。

    また、アカデミー賞の俳優部門に有色人種が一人もノミネートされなかったためボイコットが起きたことなど、そこに差別が全くなかったとは言い切れないが、それは演技の質で決められるべきであって決して人種の割合で決められるべきではない。

    このような運動が、正しい方向で成功していくを祈るばかりである。

  • 【イスラム圏の女性たちは「素顔」が見えにくい存在だからこそ、「抑圧された人たち」というイメージが定着したのではないかと思うようになった。直接取材して感じたことは、ただかわいそうな存在ではないということだった】(文中より引用)

    中東世界に生きる女性イスラム教徒のリアルを綴ったルポルタージュ。前提知識を必要とすることなく、宗教・文化・ジェンダーの交わるところを考えることができる労作です。女性たちに「語らしめる」ことで、適切な距離感を取りつつも核心に迫る証言を収めることに成功しているのではないかと思います。著者は、エジプト・カイロ支局員としても活躍した倉茂由美子など5名の読売新聞中東特派員。

    こういう世界はなかなか見えてこないですよね☆5つ

  •  イスラム教では女性の外出や結婚、進学、仕事、子育てなど、教義による制約が根強いことを初めて知った。イスラム教の異教徒であり世俗的な側から見ると、大変に理不尽なことであると思ってしまうが、教義やポリシーが崩れて世俗化が進みすぎてもまたそれはそれで何らかの問題を孕むのだろう。
     イスラム圏の国々も法改正により男女平等を進めているというが、教義に忠実な考え方をする人も多く、改正や法の適応はすんなりと進んでいるわけではないそうだ。
     本書ではイスラム教の女性、とくに貧困層にある女性の生の声を知ることができた。もう少しイスラム教について理解を深めたいと思う。

  • 東2法経図・6F開架:367.22A/Y81r//K

  • 読売新聞202127掲載
    エコノミスト2021518掲載

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著者プロフィール

読売新聞社が世界各地に置く取材拠点のうち,カイロやエルサレムなど中東諸国に駐在する特派員。東はイランから,西はアフリカ・モーリタニアまで約20か国・地域をカバーする。20世紀後半の中東戦争やレバノン内戦では現地ルポルタージュを報道し,2003年のイラク戦争では従軍取材を行った。国際ジャーナリストの浅井信雄や元中東調査会参与の藤原和彦らを輩出した。
*2020年12月現在の情報です

「2020年 『ルポルタージュ イスラムに生まれて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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