- 本 ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623097616
作品紹介・あらすじ
日本思想は何と戦ったのか。日本をつくった「物語」とは。
時代を駆け抜けた人物たちが国造りや文明衝突、あるいは人生の葛藤を通じて「戦ってきたこと」に光を当てる。我々が自身の「物語」を作り、それを生ききるために。
感想・レビュー・書評
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グローバリゼーションが、傲慢不遜な欧米の指導層(と、とてつもない富裕層との合同体)によって恐るべき速度と暴力性をもって推し進められている現在、われわれ日本人が、いま、なにを、どのようにして守らなければならないかを考える上で、重要なヒントを与えてくれる好著。
もともと日本には、立場と役割が人に居場所を与え、他者との関わりの中に自己表現と安らぎを得るという神道に流れていた思想があり、儒教はそれを理論化した。経済的に自立し、精神的に自律した「個」の幸福が、そのまま社会の安定と発展につながる、それが江戸時代に展開された思想、教育の基本線である、と著者は自らの論旨を要約している。
個人的には、朱子学のもつ観念性を批判しそれを取り払おうとした伊藤仁斎や荻生徂徠に親近感が持てた。
ただ、そもそも漢学全体と熾烈な思想的格闘を生涯し続けた本居宣長への言及があまりにも乏しいのは残念であった。しかしこれはないものねだりというものか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それぞれの時代における日本人の思想が時代背景と共に分かりやすくまとめられおり、現代までの時代の流れも簡潔で大変素晴らしい一冊。何度か読み返して自身の知識にしたい。
神道や儒教を通じて、人倫と倫理の追求を重んじてきた日本。グローバル化が進む中で、多様性/平等/個人主義といった価値観が刷り込まれてきているが、江戸で確立された価値観を中心に、何か日本人として大事なものを自分は忘れてしまっているのでは、と立ち止まるきっかけになった。そして神道や儒教をもう少し深掘り、均一化する世界の価値観から一歩離れ、2025年は日本人としてのアイデンティティを自分の中で確立する1年にしたい。改めて共同体意識と忠義、それから孝行は大事にしていきたい。
色々書きたいことはあるが、特に印象的だったのはキリスト教を中心にした西洋との違いについてのくだり。博愛が結局は神に向けられたものだと言う側面を見ると、西洋と日本の個人主義vs集団主義の違いには納得がいくし、宗教嫌いな国民性も歴史的を見るとよく理解ができる。ただ儒教は宗教と言うより思想/人生哲学なので、キリスト教との単純比較はできないようにも思える。例えば西洋哲学はどう西洋の思想に影響を与えたのか、儒教的思想とどう違ったのか、については自分で調べてみたい。
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【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/724220 -
2024/9/30産経紹介