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本 ・本 (254ページ) / ISBN・EAN: 9784624011536
作品紹介・あらすじ
ポパーの思想にたいして以前から存在する誤解、曲解、歪曲にポパー哲学研究会主要メンバーによる反批判の書。ポパー哲学の日本における受容をつうじて日本の科学哲学、社会科学とどのような対応関係があるかも明らかにし、思想史の読み替え、書き替えが意図されている。ポパー思想顕彰の運動、ポパー的反証主義の実践運動の発端の書。
目次
はじめに 小河原誠
ポパー受容史に見られる歪みについて 小笠原誠
反証可能性の理論──その意義 蔭山泰之
デュエム=クワイン・テーゼと反証主義 立花希一
日本におけるポパー政治哲学受容の一側面 その生産的発展のために 萩原能久
日本におけるポパー政治哲学受容の一形態 市井三郎の創造的受容 小林傳司
人名・事項索引 巻末
感想・レビュー・書評
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カール・ポパーの哲学がどのように受容・理解されてきたのかを、さまざまな事例を紹介しながら解き明かしていくことで、ポパーの唱えた反証可能性の理論を理解していくという本。
ポパーは、反証することが可能な言明に対して、絶えず反証とそれに対する理論の見直しや理論の適用範囲の特定をしていく営みこそが、「科学」と呼べるものだという。
逆に言うと、純粋存在言明のようなそのままでは反証できないもの、帰納法のような反証という方法論を組み込むことができないものを、ポパーは科学とは認めていなかった。
本書の中でも数多くの理解(その多くが誤解の例)が挙げられているが、それによって、ポパーの考え方が見えてくる。
例えば、
・反証された理論であっても、反証されたことにより範囲を限定することによって科学理論として活用が可能。つまり、反証することで科学と非科学を峻別しようとしたのではなく、反証可能な言明(=科学的言明)と、反証不可能な言明(=非科学的言明)を区別しようとした。
・科学理論を完全に「検証」することは不可能。「反証」を繰り返すことによりピースミール(漸進的)に改善させていくことしかできない。反証を通じて改善させていくため、科学的言明に「確実性」を求めることはできない。
・確率的言明についても、仮説検定の手法を用いることにより反証可能な言明とすることが可能。
といった点が説明されている。
ポパーの科学哲学を順序だって解説していくというスタイルではないため、俯瞰的に見渡したのちに各論に入るというより、最後まで通読することによって全体像が見えてくるといった体裁の本であるが、1つ1つの論点は丁寧に説明されているので分かり易かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示
著者プロフィール
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