私の人生の年代記―ストラヴィンスキー自伝 (転換期を読む 16)

制作 : 笠羽 映子 
  • 未来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784624934361

感想・レビュー・書評

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  • 私が最も愛聴する作曲家の一人、ストラヴィンスキーの著書が2冊、いつの間にか刊行されていたので早速買った。
    本書(1936)、『音楽の詩学』(1942)共に、私が最も惹かれる「アゴン」以降の後期に至る前の書物であり、また、両方ともゴーストライター、というか執筆の助っ人が起用されたらしい。
    というのは、ストラヴィンスキーはどうやら文章を書くのが実に苦手だったようで、『音楽の詩学』は大学での講義なのにその草稿さえ一人では書けなかった模様である。
    この「詩学」の方は、読んでも残念ながら作曲家の思想をくみ取るのが難しかった。ストラヴィンスキー特有のあの、土着的なようでいてとげとげしく鋭利で、厳しいラジカルさを持った音楽性は、それ自体は時代を超えており、今聴いて古くさいと思わない。これは様式とは異なる、感性の問題だ。
    しかしストラヴィンスキーは本書で叙情性は楽曲の(理知的な)構造からしか生まれてこない、と語っている。「詩学」の方では、ロマンティックな「対照」の原理よりも自分は「類似」の原理、均一性・統一性を重んじるのだと宣言している。
    なるほどストラヴィンスキーの音楽の「鋭さ」は、甘ったれた主体を締め付けるような厳しさとしての「知/思索」から来ているのかもしれない。反=主体というこの構造が、私にはフランツ・カフカの「主体の死としての生」と重なって見える。
    けれどもストラヴィンスキーはやはり言語思考が苦手すぎて、彼のスタンスを十分に説明できなかったのではないかと思われる。
    本書「年代記」の方は、修行時代から主にディアギレフとの共同活動の時期を描いている。ストラヴィンスキーを研究したい向きにはかなり素晴らしい資料であろう。
    だが私はまだ、ストラヴィンスキーの魅力の本体をうまく掴めないでいるような気がする。

    それはそうと、メシアンの本とクセナキスの本も、是非翻訳本を復活させて欲しいなあ。

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