曲面上の関数論 リーマン‐ロッホの定理へのいざない

  • 森北出版 (1997年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784627081000

感想・レビュー・書評

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  • おもしろそうな本だが、ネットでほとんど書評が見つからないのが若干怖いと思いつつも、お値段もお手ごろなのでまあいいかと思い買って読んでみた。ネットで出てくる情報では、間違いがある、とか、誤植が多い、とかネガティブな情報が多いのだが、この値段で層係数コホモロジーについて比較的易しい口調で書いてあるので貴重な良い本ではないかと思う。私はこの分野の勉強は始めてであるが、読んでいるうちに層係数コホモロジーの感覚が少し掴めてきた気がするので、この分野の入門には良いのではないかと思う。

    ちなみにネットの情報では、”層がハウスドルフ空間であるという致命的な間違いがある”との情報があるが、私の第一版第二刷では、一般には層はハウスドルフにならない、と書いてある。第一刷ではもっとひどかったのかもしれない。

    著者は樋口禎一さんをはじめとする東京教育大学出身で、教育学部系などで教鞭をとっている方たち。数学者というよりは数学教育者の立場に近い方たちだろうか?どんな方たちなのかネットで情報がほとんど出てこないのでよくわからないが、高名な数学者ではなさそうである。

    私は勉強になり読んで良かったと思うが、苦言もある。著者は前書きで本書のコンセプトを、”我々は微積分に続く数学を、リーマン・ロッホの定理を中心に解説しているので、中学・高校の数学の先生は、微積分の次にこのような数学の世界が広がっていることを生徒に伝えて欲しい”と述べてますが、本書では無理だと思います...本書は証明抜きの定理もあり、駆け足でリーマン・ロッホの定理まで証明を繋いでいるという印象です。このようなコンセプトの本であれば著者たちはもっとこの内容を消化して池上さんのようにわかりやすく説明する必要があるはずだが、消化しきれているのだろうか、と思ってしまう。この点は著者たちも反省があるようで、あとがきに、”リーマン-ロッホの定理を算数のレベルにまで引きずりおろすことができれば大成功であるが、力不足でそこまではできなかったのが残念である”と述べている。本当にそのとおりで、全く算数のレベルにまで降ろせてません。

    難しい数学をわかりやすく解説するというのはかなり力量のいることである。難しい数学の概念を普通に理解しているだけでは普通の解説しかできないだろう。それよりも自分のレベルがはるか上まで上昇したときにわかりやすい解説がかけるのだと思う。本書のような本と、大数学者、加藤和也さんの本などを比べるとその違いがよくわかる。加藤和也さんの本を読んでいると本当にわかりやすい例えで語っており、深いレベルで本質を理解している人はわかりやすい解説がかけるのだな、と思う。

  • 西山亨先生によると誤植がかなりあるそうだが、それでも一読の価値ありとのこと。

    朝倉書店 『函数論 リーマン面と等角写像』 楠 幸男へ進む前の素地作りに適しているようです。

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著者プロフィール

横浜国立大名誉教授 理博

「2022年 『曲面上の関数論 POD版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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