QBism 量子×ベイズ――量子情報時代の新解釈

  • 森北出版 (2018年3月2日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784627156319

作品紹介・あらすじ

「もやもや」「奇妙」「気味が悪い」……。
誕生からもうすぐ1世紀、その正しさと有用性が証明され続けてきたにもかかわらず、いまだに「直観的理解が難しい」と言われる量子力学。これまで様々な「解釈」が提案されてきたなか、いま脚光を浴びている新解釈がある。
21世紀の量子情報技術を背景に誕生した、「QBism(キュービズム)」だ。

QBism(Quantum Bayesianism=量子ベイズ主義、「QBイズム」、「Qビズム」とも)は、量子力学に現れる確率を「ベイズ主義的」に解釈する。すると「波動関数」や「観測者」は新たな意味を帯び、長年のパラドックスにも新しい光があたる。

・量子力学をベイズ主義的に解釈するとはどういうことか?
・それによって量子の奇妙さはどう解消されるのか?
・QBismは科学的世界観にどんな変更をもたらすのか?

この解釈に出会うまで、自身もまた「量子の奇妙なところ」に悩んできた理論物理学者が、「量子」「ベイズ」そして「QBism」の世界を案内する。

「ハンス・クリスチャン・フォン・バイヤー氏は、本書ですばらしい仕事を成し遂げた。私は幸運にも、人生で2度、QBismについて学ぶことができた。1度目は険しい道のりだった。私は仲間とともに、形成中の理論を細部にわたって議論し、検証につぐ検証を重ね、打ち壊しては作り直した。そこにたどり着くまでには、自らの世界をひっくり返さなければならなかった。しかし2度目の、フォン・バイヤー教授の優れた解説で改めてそれを学ぶという経験は、純粋に楽しいものだった。彼が説明に用いる多くの表現は、示唆に満ちた珠玉のもので、私自身は決して編み出すことはできなかっただろう。いまや私は、この主題をどう教えればよいのかようやく分かった気がしているし、これ以上の理解の仕方はないと信じている。」(クリストファー・A・フックス、物理学者、マサチューセッツ大学ボストン校教授、QBism誕生の立役者)

感想・レビュー・書評

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  • 読んだ結果、分からない事が莫大に増えた。けれど、めちゃくちゃに面白い本である事も間違いない。

  • 頻度主義的確率からベイズ確率へというアイデアは非常に興味深かった。まだ理解しきれていない部分も多いので、何度も読み直していこう。文献のいくつかにも目を通してみたい。

  • 量子力学の専門家が、新たな考え方「QBism」について書いた本。かなり簡単に説明していると思うが、素人の私には十分理解できなかった。量子力学は難解だと認識しているが、やはり難解であることを理解した。
    「(波動関数に従い進む)電子がスクリーンに当たるとき、奇跡が起きる。波動関数が突如、説明のつかない形で画面の一点に収縮するのだ。当たる直前までは波動関数の値は空間に広がっていた。衝突すると、波動関数の値は電子が当たったことを記す小さな光点以外では、無視できるほど小さくなる」p39
    「電子が届いた印となる光点は、そのパターンの範囲内でランダムな位置にできる。ランダムとは、理由がない-予測できない-ということで、法則がない。このささやかなランダムという言葉が通常の古典力学と量子力学の違いの要を記述している」p39
    「(「ギャンブラーの誤謬」)ある硬貨が続けて100回表を見せた後は、101回表が続くのはとんでもなくありえないから、裏が出る可能性は50%をはるかに超えた値になるにちがいないと信じてしまう間違いのこと」p81
    「私が数字0.999...という数は、「...」が同じ数字の繰り返しを表すとして、1という数に限りなく近いというと、学生は同意する。しかし私がさらに「それは1よりごくわずかでも小さいと思うか。つまり、0.999...<1と書くことは数学的に正しいか」と尋ねると、その答えはおおむね「正しい」となる。そこでそうではないのだと私は反論する。「ごくわずか」とは、数学的に受け入れられる言葉ではない。先ほどの問題に対する正解は「正しくない」で、0.999...=1となる(納得するには、1÷3を計算すれば、1/3=0.333...で、両辺を3倍してみればよい)」p143
    「量子力学は、現代物理学の支柱であり、現代科学技術の欠かせない基盤でもある。あらゆる素粒子現象、原子の安定的構造、化学現象や磁石の仕組みといった身近な性質から、半導体、レーザー、超流動や超伝導といった不思議な物性までを見事に説明する。近年では、量子暗号や量子コンピュータといった量子情報科学の発展が目覚ましく、量子力学は、近未来の情報通信技術の基盤ともなると期待されている。今や人類は、世界の不思議な現象をうまく説明できる「便利で万能な道具」を手に入れたと言っても過言ではない。それにもかかわらず、量子力学を勉強すればするほど、そして、量子力学の専門家であればあるほど「量子力学を理解した気になれない」と白状したことになる」p194
    「語りえぬものについては、人は沈黙しなければならない(ヴィトゲンシュタイン)」p199
    「「QBイズム」とは「量子(クオンタム)・ベイズ確率主義(ベイジアニズム)」の略で、量子力学の確立解釈をベイズ確率にするという方針を示します」p221
    「(モンティ・ホール問題)一種のくじで、途中で選択変更の機会を与えられたとき、選択を変えた方が「当たり」の確率は上がると考えることが正解の問題で、直観的には変えても変えなくても同じなのですが、変えた方が確率は上がるので、変えたほうが良いということになります。ただし「確率は上がる」というのは数学的な頻度説に基づく計算で、このゲームを何度も行う、たとえば主催者側からすると確かにそうなるだろうと思われる事態です。この1回に賭けなければならない場合は、いくら数学的には選択を変えるほうが正解だと言われても、選択を変えたら確率1で当たるというのならともかく、やはり外れる可能性もあるのなら、すんなり変える方がいいとは思えません。ベイズ確率はそういう結果が出る前の場面で、それでもその都度の1回の選択にとって参考になるよう考えられた確率だと思います」p221
    「本書が述べられる、いわば物理学と心理学という、従来全く別物とされたものを組み合わせた世界像を立てようという、その機が熟してきたのかもしれない」p222

  • P20

  • 量子力学の理論というのは、文系人間にとってはとってもSF的に見えて中二病心をくすぐるものですが、非常に真面目に量子確率の新解釈を示してくれているであろうこの本は、ますますその感を深くするものでした。
    量子状態の「確率」というのは、観測者が利用できる全情報に基づいて、合理的にそれが起きると予想する「信念の度合い」に過ぎず、したがって観測者ごとに異なったとしてもそれが本来の姿である。ただし、共通する十分な情報を持った、同じ場所にいる観測者同士なら、その「予想」は通常一致し、その一致するものを科学的な「理論」とか「法則」と呼んでいるに過ぎないというのが、僕の理解したこの本の趣旨といったところでしょうか。グレッグ・イーガンのSFや、ゲーム「カオス・ヘッド」の「共同幻想」を思い起こされましたが、実は、これらのフィクションは、理論的にも結構いい線行っていたのかもしれませんね。
    ところどころ難しい部分もありますが、全体として言っていることはよくわかりましたし、一種目からうろこ的なところもあって、非常に面白く読めました。巻末の「解説」では、これに対する批判も掲載されており、合わせて読むとさらに納得度が高かったです。

  • QBism; Quantum Bayesianism; 量子ベイズ主義
    The Future of Quantum Physics

  • 請求記号 421.3/B 14

  • 量子力学を流行りのベイズ推定とくっつけるといい感じだよ。って本かと思ったら意外と、あんまりベイズ関係なく、主観という考え方が必要なんだよって本でした。やっと、局所性と実在ってのは両立しないんだよって意味はわかった気がするんだけど、それで、いま現実にエンタングルメント使って量子レーダーとか作ってるらしいじゃないですか。そのときに、主観として考えればよいのだってのがよくわからないんだよね。確率が高まるだけだから光速を超えて情報が伝わっているわけではないのだよ。ということでいいのかしら。ルーレットの話は結構好きかも。まあ、幽霊の非存在証明とか、明日太陽が昇るってどうしてわかるんだ?みたいなことなので、まあ確かに主観的に信じてるってことでしかないんだよな。大事なことだから二回言いますっていう格言。最も大事なことは最も大事だ。なぜなら最も大事だから。みたいな。まあ日本の天皇制みたいなもんですな。そういう意味ではキリスト教における三位一体ってのは、たぶん、権威の外在化なんだね。そして、論拠を外部化するからロジックが強くなるんだね。というような、思索のきっかけになったのだから良い本です。

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著者プロフィール

1956年生まれ。名古屋工業大学助教授などを経て、現在、名古屋学芸大学非常勤講師、翻訳家。主な訳書に、ギャリソン『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』(名古屋大学出版会、2015年)、リンツラー『進化する人体』(柏書房、2019年)、エヴェレット『言語の起源』(白揚社、2020年)他多数。

「2021年 『イノベーション概念の現代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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