- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784627880818
作品紹介・あらすじ
なぜ人間の子どもは、(今の)AIより学ぶのがはるかに上手いのか?
『数覚とは何か』、『意識と脳』のスタニスラス・ドゥアンヌ教授、学習と教育を語る!
ディープラーニングを実装した最新のAIに比べ、人間の子どもは格段に効果的に、かつ深く学習する。なぜ人間の脳は(現行の)コンピュータより学ぶのが得意なのだろう? 身の回りの人の顔をおぼえたり、母語の発音をおぼえたり、数字の記号をおぼえたりするとき、脳のなかでは何が起こっているのか?
近年、神経科学は、徐々に脳の学習機序を明らかにし始めている。幼児からの経時的な脳測定、特殊な環境のもとで育った人の追跡調査、脳損傷を負った人々の調査などから、人工ニューラルネットと脳の違い、学習がとくに進む「感受期」の脳のシナプスの張り方、進化から受け継いだ脳回路を私たちが「リサイクル」して使っている様子など、多くのことが見えてきた。
脳のもつ驚くべき柔軟性と、進化的に課された制約――その両方を踏まえることで、「教育」にはどんな示唆が得られるだろうか。果たして、私たちは神経科学に適う方法で、子どもたちを教えているのだろうか?
数学・読字・意識など、脳の各種能力について数々の発見・新理論の構築をしてきた神経科学者が、いよいよそのすべてを包含するテーマ「学習」に挑む。そして、真の意味で神経科学に根差した教育の未来を提示する。
感想・レビュー・書評
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MRIの進歩により、たとえば刺激を与えられた子供の脳の状態を画像化できるようになった。認知心理学、神経科学、人口知能の発展もあって脳の成長過程が明らかになってきた。脳を成長させるのに必要な、有効な働きかけもわかってきた。それをまとめた一冊。
「注意」「能動的関心」「誤りフィードバック」「定着」が学習のカギであり、それぞれ断片的には聞いたことのある話かもしれないが、統合的に語られているところに意義があるし、それをまとめられる著者の力量を感じる。
特に「定着」については、ほとんど睡眠についての言及になっており、興味深かった。昼間に多くの刺激を受けた脳には多くの睡眠が必要で、睡眠中に再生して定着させるというのは、子供に長時間の睡眠が必要なことを説明できるし、スポーツなどの身体的な学習にも睡眠が重要というのは「そうだったのか」感が強い。
「能動的関与」の重要性の説明として、「デジタルネイティブ」を神話だとするのは納得感がある(語義の考え方次第ではある。単にデジタルデバイスを使いこなすという意味でなら「ネイティブ」の優位さはあると思うけど、本書ではちょっと違う意味で語っているようだ)。
あとまあ、比較対象として計算機科学に言及しているのだが、ニューラルネットワークとかって、ヒトの脳の機能の中でごく入口の部分にしか対応しておらず、必要とするエネルギー量もヒトの脳に比べて膨大(で無駄が多い)という話は興味深い。 -
子どもを持つとしたら出産前に再読したい本。