大人のための国語ゼミ

著者 :
  • 山川出版社
3.71
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本棚登録 : 1052
感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634151215

感想・レビュー・書評

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  • とても良い本だった。
    『論理トレーニング』も名著だと思うけれど、これはそれを上回る。
    『論理トレーニング』は講義のテキスト。
    だから、説明も少なめだったのだろう。
    (それに、受講者が東大生だから説明もそれほど必要がなかったに違いない。)
    これに対して本書は、読者との回路がしっかり作られている。
    野矢先生って、(すごく失礼だけど)説明のうまい先生だったのね、と初めてわかった。

    たとえば、事実と推測、意見の違い。
    これ、区別が簡単そうに思えるが、いろいろな例を自分で考えていくと、結構難しいことがわかる。
    そのとき、野矢さんは「事実にも多面性がある」という。
    一つの事実にも、複数の見かたがあり得るということだ。
    そこで、中立的にならなければいけないかというと、そうではない、という。
    自分の事実描写にも危険性が含まれていることに自覚的になればよい、と。
    言論の意義を大事にしつつも、実にプラクティカルな態度だ。

    「理由」「根拠」「原因」の区分には、若干もやっとした感じが残る。

    理由・・・「なぜ?」への答え
    原因・・・ある物事が何によって引き起こされたかを説明する理由
    根拠・・・ある主張の説得力を増すために示される理由

    関係としては「理由」に「原因」「根拠」も包摂されるということらしい。
    では、「原因」「根拠」以外のものも「理由」には含まれているのだろうか?
    それから、「原因」と「根拠」を分けることの、実際的な意味(例えば文章を書くときにどう役立つか)が、もう一つ伝わってこなかった。
    ここが大事なところだと思うだけに、もっと詳しく知りたかった、という気持ちだ。

  • 大人のための国語ゼミ。
    まさにタイトル通りでした。

    大学受験の時に国語の問題をといてた気分を思い出しました。
    この本での国語とは日本語をいかに正確に使い、自分の考えなどをきちんと伝えるか、ということをテーマにしています。

    筆者が例文と問題を示し、読者はそれを読み、解き、答え合わせをする。まさに参考書の問題を解いているよう。

    なので、普通にさらさらっと読めません。
    勉強って脳がすごく疲れるなーと当たり前のことを思い出しました。
    (子供に「勉強しなさい」と言っている時、言われている子供としては大変なんだなーとしみじみ感じました。言われる側の気分を忘れてますね。おじさんは。)

    回答の説明を読んでも、何故かな?と疑問に残るところもあり、もう一度例文、回答と繰り返し読むうちに、なんとなく理解できてきます。
    ただし、モヤモヤとした疑問も残るので、本来はセンセイに対して、質問したいところなのですが。

    ●事実・憶測・意見の区別
    ●さまざまな接続表現
     文章をつなぐ接続表現がないと文章は読みにくくなり、分かりづらい
     第一グループ 付加、選択、換言、例示
     第二グループ 対比、転換、補足
     第三グループ 条件、譲歩条件、理由、帰結
    ●文章を要約してみて、文章の幹と枝葉を見極める
    ●理由・根拠・原因の違い

    普段なんとなくしゃべったり、文章書いていますが、上記の観点で見た場合、間違った文章書いているんだなと反省。
    ですが、すぐに直るとも思えなく、徐々に改善できていたらいいなと。

  • 正しい文章を読む機会が減っている。ネットに書き込まれているコメントは、感情的なものも多い。
    情報を正しく理解するには、論理力・国語力が必要である。
    私の仕事は調査関係の仕事で、社内でレポートを出す。これまでつみかさねてきたやり方をもう一度見直し、骨太の文章・レポートを書くために、この本は非常に有効なものであった。

  • 内容としては、「相手のことを考える」「主張と根拠を明確にする」など、言われれば当たり前ことを、いかに重要であるかを問題を使いながら優しく解説してくれます。イラストもあり難しい言葉を使っていないので、とても読みやすいです。

    これを読んだ効果として、文章や発言対しての感度が上がり、「どのように表現すれば相手が理解し納得できるのか」を、普段から考えるようになりました。そして、今まで自分が如何に曖昧にして文章を書いていたのか、発言をしていたのかが痛感させられました。またもう1つの効果として、論文や学会発表の作成にもとても有効だと思いました。論文や発表は、簡単にいうと、主張や根拠を分かりやすくまとめるということであり、この本ではその方法がわかりやすく学べます。

    最後に1つ気をつけなければならないのは、筆者も述べていますが、コミュニケーションに関しては考慮されていないので、常にこの本のように論理思考だと嫌がられるかもしれません。

  • 30歳を超えていますが、自身には未だにロジカルさが足りないと感じています。

    本書では「きちんと伝えられる文章を書き、話す力、そしてそれを的確に理解する力」を鍛えるべく構成されている。

    具体的な問題文とその回答・解説を繰り返しみていくことで、どうすれば伝わる、理解できる話ができるかが分かります。

    私も含め、このような話し方を出来ていない人が多いと思います。学校では教わらないことなので、大変参考になりました。



  • 全ての人にとって必要だが、大人であるがゆえに見過ごされやすい基礎的な国語力を学べる良書。

  • 大人向けの国語トレーニング本。山川から出ているというのが何ともそれっぽいです(笑
    例文が出てきて、問→解答、という参考書に近い体裁で進んでいきます。マンガを使ったキャッチーな挿絵も入っていてスイスイ読み進められるのですが、同じパターンが続くので中盤からは飽きが来て流し読みっぽくなってしまいました。読むなら一気読みしてしまった方が良いかも。

    とは言え、大人が社会でコミュニケーションを取るにあたって押さえておくべきツボは網羅していると思うので、読んでおいて損は無いのでは。個人的には、大学生の時か、社会人になりたての頃に読んでいたら、もっと円滑なコミュニケーションが取れたんじゃないかと思いました。

    ちなみに、このレビューを書きながらも、本著を読了した方が見ると「あれ、この論理展開おかしくない?」と添削されるんじゃないかと思って、なんか書きづらいなぁ…という気持ちになりました(笑

  • とても勉強にはなる。しかし「論理トレーニング」と比べてそれほど差があるわけではない。

    ま、今度教育課程の改定があるが、国語は基本的にこういう方向の教科であってほしいなあ。

  • 「質問する」「反論する」のところが
    特に参考になった。
    普段、何も考えずにいると、
    いざというときにコトバが出てこなくなる。
    日本語だからわかるに決まっている、
    日本語だから話せるに決まっているというのは勘違い。

    日本語だからこそ意識しなくてはいけない。

  • 義務教育頃、ダントツで国語が苦手だったことを思い出した。
    その理由が本書から明らかになった。。文書の読み方を教わることがなかったからだ。

    野矢さんの言葉がスラスラ入ってくる秘訣根幹に分かり合うための言葉の力の努力の仕方を知り、少しずつだが本書の内容を踏まえて国語力を磨いていきたい。

    少しでも分かり会えたことを喜ばなくては。精神を大切にしてきたい。

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著者プロフィール

1954年(昭和29年)東京都に生まれる。85年東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院教授を経て、現在、立正大学文学部教授。専攻は哲学。著書に、『論理学』(東京大学出版会)、『心と他者』(勁草書房/中公文庫)、『哲学の謎』『無限論の教室』(講談社現代新書)、『新版論理トレーニング』『論理トレーニング101題』『他者の声 実在の声』(産業図書)、『哲学・航海日誌』(春秋社/中公文庫、全二巻)、『はじめて考えるときのように』(PHP文庫)、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』(哲学書房/ちくま学芸文庫)、『同一性・変化・時間』(哲学書房)、『ここにないもの――新哲学対話』(大和書房/中公文庫)、『入門!論理学』(中公新書)、『子どもの難問――哲学者の先生、教えてください!』(中央公論新社、編著)、『大森荘蔵――哲学の見本』(講談社学術文庫)、『語りえぬものを語る』『哲学な日々』『心という難問――空間・身体・意味』(講談社)などがある。訳書にウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(岩波文庫)、A・アンブローズ『ウィトゲンシュタインの講義』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『増補版 大人のための国語ゼミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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