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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784634152083
作品紹介・あらすじ
日本史上、地味な時代の代名詞だった室町時代がいま関心を呼んでいます。
ただ、その室町時代のなかでも、一般的に室町幕府は義満期までの南北朝の争乱、応仁の乱以降の戦国時代の印象が強く、
その間の室町時代中期について印象が弱いといえます。
しかし室町幕府は、その時代こそが安定期(最盛期)というべき時期であり、
当該期を理解することが、室町時代を理解するために必須だといえます。
本書では、その安定期に君臨した4人の将軍(3代義満・4代義持・6代義教・8代義政)の時代に注目します。
彼らは現在の歴史学界で、「摂政以上院未満」という、武家だけでなく天皇の擁護者として公家も統べる、
将軍を超越した時代の指導者「室町殿」と位置付けられています。
室町殿という存在から、室町幕府の性格や諸機関との関係を検討し、
鎌倉幕府とも江戸幕府とも異なる点を含めた「室町幕府とは何か」について、
新進気鋭の研究者による15本の論考によって、最新研究を紹介しながら明らかにしていきます。
感想・レビュー・書評
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今谷明氏の『室町の王権』で、足利義満の王権簒奪計画の説を読んだ時は驚いたものだが、その頃から室町時代の歴史に関心を持ったような記憶がある。現在では、その説自体は否定されているようだが、前代の鎌倉幕府、後代の江戸幕府とは異なり、京都に幕府を開いた足利政権と、天皇及び朝廷、寺社勢力との関係は、とても興味深いテーマだ。
本書は、義満、義持、義教、そして義政と、室町時代中期に、武家だけでなく公家をも統べる、将軍位を超越した指導者となった「室町殿」の時代に焦点を当て、最新の研究成果を一般読者向けにコンパクトにまとめて紹介したものである。
ある程度知識のあるもの、初めて知ったようなテーマのものなど様々だが、15本の論考はいずれも面白い。中でも、
・第四章「中世国家と幕府財政 同一の帳簿を用いる 「公武共同」の財政構造」
・第五章「幕府と在京大名 幕府の全国支配と「在京大名」の重要な役割とは?」
・第十章「幕府と五山 "巨大企業体"のような組織だった禅僧集団」
・第十三章「幕府と土一揆 「土一揆」は、中世社会における「訴訟」行為だった」
といった論考にひときわ興味を惹かれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
20250520 読了
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権力体としての室町殿が機能した義満から義政までの室町幕府に関する最新研究を踏まえた各種論考が収められている。内容は幅広く、この時代を理解するための入口として面白かった。
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義満から義政までを室町殿として、武家・公家・寺社に君臨する統治者として、その時代を描く。統治機構から大名の役割、寺社の統制、文化社会まで広い視野で書かれていて、非常に面白い。
江戸期の将軍よりも、統治機構が未整備な分、個人の占めるところが大きい。中世の社会は現代から離れている分、予想外なことが多く楽しい。
今後は中世の再来になるという説があるが、技術の発達は誰でもいい、誰がやっても同じに行き着く。それは中世とは逆方向だろう。
著者プロフィール
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