水のない川 暗渠でたどる東京案内

  • 山川出版社 (2022年9月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784634152182

作品紹介・あらすじ

暗渠(川跡)を通じて、往時の東京の町の姿(江戸時代からの変化、戦前・戦後の変化、高度経済成長期での変化など)を見直す。著者作成の暗渠地図、町の変化の様子がわかる古地図、そして暗渠周辺の様子がわかる写真などの豊富なビジュアルと、そのエリアに伝わる伝承やそのエリアで生まれたカルチャーなどを紹介することで、その町の変化と性格がわかる 1 冊。

感想・レビュー・書評

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  • 2025年1月18日読了。かつての川の名残を今に残す暗渠を観察・調査し、河川と東京の街の変遷をたどる本。河川があるところに集落が生まれ、農業用水となり田畑が生まれ、やがて河川は工業用水・生活排水として利用され水質汚染により暗渠化し、上下水道の発達により河川自体が不要になり消失していく、という変化が興味深い。水を利用できる量が生産量・生死に直結したため、水路をめぐって血で血を洗う争いが繰り返されてきたということ、都市の発達により水路をめぐる問題自体が消失していったのは「よいこと」でもあるのだろう…。日本でも東京以外の街や、海外の都市で似たような暗渠をたどる旅を行えることは想像しづらい。東京がいかにユニークな街なのか、ということだろう。

  • POKEMON GOならぬANKYO GO!あまりの面白さに驚いています。陣内秀信「水都 東京」からの鈴木浩三「地形で見る江戸・東京発展史」、からの「東京の美しいドボク鑑賞術」、からの本書。江戸、そして東京という都市の歴史を「水の流れ」という視点で捉える読書が、細く長く偶然に繋がって、たまたま手にした本です。その源流は中沢新一「アースダイバー」かもしれませんし、門井慶喜の「家康、江戸を建てる」「江戸一新」なんどの小説にも寄り道しているかもしれません。しかし、縄文の記憶とか、江戸幕府の統治とかの大きな物語としてではなく、土地で生活する人々の暮らしの痕跡としての暗渠という存在が小さな記憶の点であることを知りました。点は繋がって線になり、線が交差して面になって、江戸・東京に行き渡り、そして蓋をされ、埋め立てられ消えていく、その現在進行形。今、東京のいう生き物の毛細血管は鉄道の路線図であり、道路地図なのでしょうが、江戸の毛細血管は水路網であったのです。その欠陥が繋ぐ細胞が水田という生産の場であり、そのには「水利組合」という生存競争があったのです。水路で語る東京から鉄道で語る東京への転換は、生産都市から消費都市への転換の歴史でもあったような気がします。やっぱりこれは小さな記憶、というだけではなくて大きな物語か…。都心から郊外への変化のズレもドキュメントとして生々しく、蓋をあけたら飛び出す歴史、がANKYO GOの面白さです。これからの散歩は、変に曲がった道、行き止まり、広い舗装路の下にある水系の物語を感じることも出来るようになりたい…かも。

  •  いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。
     こういう感じの“街歩き”本は、今から15年以上前に読んだ中沢新一さんの「アースダイバー 」、最近では、高橋源一郎さんの「失われたTOKIOを求めて」等を読んだことがありますが、本書は「暗渠」をテーマに東京を巡ります。
     「水路」に着目し、その変遷を辿りつつ訪ねるその街・土地の変化の様はとても重層的で興味深いものがありますね。「水」は、まさにそこに暮らす人々の生活に密着しています。

  • 東京には人知れず流れている川がある。




    川や水路にふたをしている地下の水路が本来の意味だった「暗渠(あんきょ)」だったが、もともと川だったりした場合に、その土地の空間とあわせて暗渠と呼ぶことも多いと説明している。





    「ブラタモリ」ですっかりおなじみになった暗渠。




    隠しても地形までは隠しきれず、「痕跡」が残っている場合が多い。




    不自然に曲がった道など「土地の記憶」を今でも見ることができる。




    戸越銀座といえば、メディアでも取り上げられることの多い商店街だ。




    しかし、大正末期までは川が流れていて、水田が東西に連なって広がっていた意外な一面があった。




    江戸時代後期にはタケノコの名産地として知られ、集落や谷の斜面は竹林に覆われていたそうだ。





    状況が変わったのは大正後期だった。




    水田が整理され、複数に分かれていた川も1本にまとめられた。




    関東大震災で被災した人たちが移住してきたが、かつての水田だった場所ゆえに雨が降ると水浸しになった。




    そこで、銀座で不要になったレンガを使って道路整備を行った。




    レンガを道に敷き詰めた。そのさいに、道沿いの川を暗渠化した。





    渋谷に暗渠があるのは「ブラタモリ」で知ったが、いろいろな所があるなあ。

  • OPACへのリンク:https://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2002313205【推薦コメント:現在は水が流れていない川の後を暗渠というが、その魅力について多くの人に知ってほしい。】

  • 暗渠を巡る作品。あなたの地元も登場するかも?

    本書にも出てくる小平市の隣に居住。ジョギングしながら暗渠や高低差を体感するのが趣味なので、小平市の大沼田用水の章が何より楽しめた。

    上水が動脈、排水が静脈という例えが絶品に思う。今は役目を終え暗渠となっていても、昔の人々の叡智を辿るのは何とも楽しい。

    あなたも是非暗渠散歩に出かけてみよう!

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