主権国家体制の成立 (世界史リブレット 29)

  • 山川出版社 (1997年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (88ページ) / ISBN・EAN: 9784634342903

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  • さっくり読める。具体的にはイタリア戦争と、特に30年戦争が叙述の中心となり、ヨーロッパで主権国家体制がどのように成立したかが説明される。個人的に勉強になったのはヴァレンシュタインが傭兵隊長として力を持ちすぎてしまい、最終的に消されたことが、いわゆる傭兵体制の終焉から常備軍のせつえいへ向けられたこと。また、30年戦争の過程で、神聖ローマ帝国が主権国家化を志向し、それへの各国の反発が次のフェーズに移行したこと。グスタフ・アドルフの戦いが、ヨーロッパにおける長篠合戦のようなものになったこと。などである。

  • 冒頭で著者が述べるように、本書は大航海時代のはじまる1492年からウェストファリア条約が締結される1648年まで、西欧世界がいかにして「主権国家」なる概念を生み出したかを概観する内容となっている。
    世界史リブレットシリーズは、その少ない頁数で1テーマが簡潔にまとまっている点に他にない優位性がある。しかしながら、このシリーズのたった一冊で西欧諸国のおよそ200年の展開をみるのは相当に困難である。なかなか無謀な試みではあるが、近代の夜明けたる200年をなんとなくでも掴む導入書としては、その役割を十分に果たしているのではないか。

    著者は、その昔は慣行であった貴族同士の決闘が、いつしか「国家」によって罰せられる犯罪となったことを例にあげ、イタリア戦争、宗教戦争、そして三十年戦争とつづくこの200年の無秩序が、「国家」という新たな秩序の創出とその押し付けによって引き起こされたという見方をとる。多種多様な文化・政治圏がみせた、単一を迫る「国家」に対しての拒否反応こそが、実体のないその存在を証明し得るのだということだろうか。
    大義のためにすべてを機能とする「国家」が幾多の戦争とともに生まれたとして、今また紛争やテロのために「国家」の再編を迫られている。「国家」の創造のまえに、まずカオスがあったのであれば、現代のカオスの先になにがあるのか。見極めるために、この騒乱の200年を今一度思い出す必要があるだろう。
    同書のテーマはけっして過去だけのものではなく、非常に現代的な問題群を有しているように思う。

  • 神聖ローマ帝国のカール五世による「一つなるキリスト教共同体」回復の夢は果たされず、旧ローマ帝国領は、宗教改革によって個別バラバラの「ヨーロッパ」という概念へと変質していく。

  • 三十年戦争を中心に。

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