世紀末とベル・エポックの文化 (世界史リブレット)

著者 :
  • 山川出版社
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本棚登録 : 41
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (98ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634344600

作品紹介・あらすじ

世紀末とベル・エポック、いずれも独特な響きをもった表現。十九世紀から二十世紀へと移りゆく世紀の転換期に、ヨーロッパの社会も文化も、めくるめく変動を経験した。その変動は、同時代を生きた人たちにとてつもない変化を実感させただけでなく、二十世紀から二十一世紀へと変わりゆく時代を生きているわれわれにまで届くような、根本的な変化を用意していたのだった。

感想・レビュー・書評

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  • 産業革命以来、工業化によって豊かになり世界の覇権を握るようになったヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国の、それがゆえの自己中心性に捉われた精神性の時代でもあります。電気が普及し始め、蒸気機関にかわって都市部に電車や地下鉄が生まれたのも、ガス灯から電燈に切り替わったのもこのころです。また内燃機関(エンジン)が発明されて、自動車が生まれたのもこの時代。電話が発明されて、欧米で通信網が整備されだしもしました。このようなところを見ていくと、現在の発展につづくその大きな起点となっているのが、この19世紀末なのだとわかってきます。

    こうして、スピード化と効率化の急速な進歩とそれらによる流通の拡大によって、マスメディアの力が増していきます。その当時の大衆の間に蔓延していた排外主義に取り入るかたちで新聞は支持を集め、迎合する新聞記事によって大衆は排外主義をさらに加速させていく面があったようです。ナショナリズムの拡大や世界大戦への傾斜はこうして作られたところは大きいのでしょう。

    また科学の分野では、パスツールらによって細菌が発見され、人に見えない世界というものが通常の世界に影響を与えることがわかるようになります。続いて、これも目には見えない人の心の世界をフロイトが切り拓き、見えない世界というものがより人々に意識されるようになりました。そこで、とすれば科学でもつかめない「見えない世界の力」、つまりそれこそ神秘の力が他にも存在していいのではないかとでもいうような心理が、黒魔術や占星術や超能力にいたるまでのオカルト思想・神秘思想までもを盛んにした側面があるということでした。これは科学が発達して存在感を増したことへの反発力でもあるみたいです(たくさんの矛盾する諸要素が流れ込むような状態が、オカルトへの傾斜を作ったとも)。

    文化面では、アールヌーヴォー、印象派、象徴主義、などなど、おもしろい発展がみられ、それが現代へと続いて行く。

    先に触れた、「見えない世界」の概念から考えてみると、この世紀末とベル・エポックの時代を知ることは、現代の流れを決めた今では見えない世界を知るようなことでもあります。現代を顕微鏡で眺めてみると、19世紀末とベル・エポックの時代が見えた、というような。

    ほんとうに内容の濃い時代だなと思います。個人的にはストラヴィンスキーに興味があるんですよねえ。テレビでちらっと見たことのある『春の祭典』がツボです。

  • ガイドラインとしては、良いと思う。
    個人的には、この時代はちょこちょこ掘り下げてるので、物足りなかった。

  • この手の薄い本のシリーズものに期待するのもいけないけど…同じ表現を違う言葉で多様してる印象が…書いた本人は充実感あるのかもしれないけど、読み手は読み辛い本だと思う。そしてこの本の薄さ以上に中身の濃さが…
    なんというか教科書的。だけど主題は魅力的。

  • 産業革命を経て19世紀独特の科学技術や進化論が生まれていく過程、それによって変化していく市民生活、さらには芸術運動まで。時代の流れや雰囲気を存分に感じることができて予想以上に楽しめた!世紀末から新たな時代への展望を感じられるよい結び。(このシリーズの特徴上、あくまで概説書の域ではあるけれど。)

  • 薄いからすぐ読める。少し物足りない気もするけど、憧れのベル・エポックの時代が簡潔に纏められている本がなかなかないので結構貴重です。

    ベル・エポックの時代と文化に浸りたい人はご一読下さい。
    というか、短いので興味ない人も読んでみるとベル・エポックの時代に憧れてしまうかも。

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著者プロフィール

福井憲彦

学習院大学名誉教授。1946年(昭和21年)、東京都に生まれる。東京大学文学部西洋史学科卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学助手、東京経済大学助教授、学習院大学教授・学長などを歴任。日仏会館理事長。専門はフランスを中心とした西洋近現代史。著書に『カラー版 地中海都市周遊』(共著)、『世界の歴史21 アメリカとフランスの革命』(共著)、『ヨーロッパ近代の社会史』『歴史学入門』『近代ヨーロッパの覇権』『パリ 建築と都市』(共著)など。

「2021年 『物語 パリの歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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