インド社会とカースト (世界史リブレット 86)

著者 :
  • 山川出版社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634348608

作品紹介・あらすじ

カーストは、インドの不可分の属性としてとらえられている。それは、差別的な制度であるという漠然としたイメージのもとで語られるのだが、いざ詳しく調べようとして専門書を紐解くと、そこでは、時としてまったく相容れない大量の論議がたたかわされていることに気づかされる。こうした状況は、決して偶然に生じたものではない。むしろ、その錯綜を解きほぐす作業のなかにこそ、インド史上の問題を解明する手がかりが潜んでいるのである。

感想・レビュー・書評

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  • (後で書きます。参考文献リストあり)

  • ヴァルナ、ジャーティーとカーストは別のものという。カーストの語はポルトガル人の来航に由来。それ以前に当てはめることはできないという。以来、外部勢力のインドでの支配権浸透につれ、ヨーロッパ人の統治の便宜のためのカースト概念にインドの現実が近づいていく実態があったようだ。しっかり理解するまでに読み返す必要がありそう。

  • インド社会の根幹とされるカースト制と呼ばれるものが、実際には16世紀以降にやってきたヨーロッパ人がインド社会を理解しようとして作り出したものであることを説明した本。我々が学校で教えられたカーストがいかに後付けで整理・説明されたシステムであるかが理解できたように思う。地域・意味的に複雑かつ広範な内容が含まれているので、この紙幅で大掴みにでも理解した気分になるのは難しい問題であることがよく分かった。

  • 先日の『ムガル帝国から英領インドへ』を読んでカーストについての知識が不足していた反省から本書を手に取りました。

    カーストにおける今日の概念は、ヴァルナとジャーティによって成り立っており、ヴァルナはヴェーダ文献かに見られるバラモン(ブラーフマナ)、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラからなり、一方ジャーティーは「実際の社会生活において内婚集団として機能しており、その限りにおいて浄性を共有しうる範囲を確定し、水のやり取りと食事をともにすること(共食)とともに、通婚を許容し、また、主として男系をたどる職業の継承体」(3ページ)と理解されていますが、こうしたヴァルナとジャーティーとを包摂した「カースト」の概念は19世紀後半に植民地政策の結果としてインド人の間に共有されるようになったとしています。ようするに、それまでこの両者は「まったく別物」(8ページ)であったとされます(そもそも「カースト」という言葉自体がポルトガル語の「カスタ」が由来)。
    そもそもあったヴァルナにおける階層性、とくに隷属下層民として農耕・牧畜・職能集団を包摂していたシュードラと、さらにそこから排除され、ヴァルナの固定化・維持のため浄・不浄観が強調されることにより形成された「不可触民」たちは固定的な被差別集団に転じていくことになります。
    一方、ジャーティーが「生まれもった種」という意味から、徐々に意味内容が拡大され「浄・不浄、共食、通婚、職業係争の単位となり、さらにそこに多様な慣行の保持主体」としての意味が包摂されるようになるのは19世紀中葉より20世紀初頭にかけてのことであり、その序列化はそもそもどの世界にもある普遍的なものだが、インドでは植民地化する以前は王権が、植民地化以後はイギリス・インド政府が、ヴァルナ帰属とそのなかで維持されている慣行が規範的なものとして参照され、ジャーティーの序列化を進め、広く共有されたとのことです。
    こうして成立したヴァルナとジャーティーが結びつけられた「カースト」は、植民地政府役人におけるインド社会の理解のため、また行政の都合上(例えば軍隊の編成など)政府への申請書や公文書に記載されるようになり、そこに反映される特権なども手伝ってインド人自身のカースト帰属意識が広まったとしています。

    と、ここまで書くのに一時間以上かかりました。カーストに関する理解は本当に難しく、本書を何度も読み返して私自身は上記のような理解にいたりましたが、何となく矛盾していたり説明が抜けているところもありそうです。難しいことを簡単に説明することは本当に「難しい」ことです。

    備忘録
    ガンディーが不可触民を呼ぶ際に使った「ハリジャン」(神にも等しい人という意味)という言葉は、1990年より政府文書における使用が禁止され、今では初代法務大臣となった不可触民階級出身のアンベードカルらが使用したダリド(被抑圧者の意味)が使用されている。ちなみにガンディーは植民地時代、不可触民に分離選挙区を与えるとするイギリス首相の政策に抗議して獄中でハンストをおこなっている。

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